284 朝食
次の日、朝早くからラウージャに呼び出された。
こんな朝っぱらから何だろうと思いながら、僕は領主邸に行くとミネルバ姫が朝食を僕も一緒に取りたいと言ったらしく、その為に呼ばれたらしい、
そんな事で呼ばないでほしい。
僕が案内された部屋に入ると、そこには円卓を囲むようにミネルバ姫、ガクシン、ラウージャ、ラウードが既に座っており食事を始めていた。
「翔、遅かったな。僕とミネルバ姫の間の隣の席に座ってくれ」
僕は言われるがまま、ミネルバ姫の隣に座った。
座ると同時にメイドさんがやって来て、ナプキンを首に掛けてくれた。
そして僕の分の食事が運ばれてくる。
パンにコーンスープ、野菜の盛り合わせ、何の肉か分からないがベーコンが運ばれてきた。
「って言うが、何でネイバンさんが料理運んでいるのですか」
「ほほほ、私は姫の子守り執事ですから、お手伝いをさせていただいてます」
「そんな事しなくても良いのでは」
「いえいえ、いつもやっている事なので、やらないと落ち着かないのですよ」
「ミネルバ姫、良いのですか」
「翔殿、何がじゃ」
「執事がこき使われているんですよ」
「自分がやりたいなら、やらしておけば良いのじゃ。
それより早く食べないと、冷えたら美味しくないぞ」
皆、無言で黙々と食べていた。
いつもなら仲間達と賑やかにというが喧しいほど五月蝿い。
こんなに静かに食事をするなんて、いつ以来だろうか。
「ミネルバ姫、ちょっと聞いて良いですか」
「何じゃ、翔殿」
「ミネルバ姫は、普段何をやってるのですか」
「ん、わらわの私生活と言うことか」
「そうですね」
「まぁ、プライベートは秘密じゃ」
「そうですよね」
「嘘じゃ、わらわはガクシンに剣術を習ったり、体力を付ける為に城の周りを走ったり、あとは爺がトレーナーとなって肉体を鍛えることじゃな」
「姫と言っても、筋肉マンなのですね」
「そうじゃ、その位しないと強くなれないし、このスタイルを維持出来ないからの」
「外出とかはされないのですか」
「城の外にはほとんど出れないのじゃ、街の中とか特に行けない。
ネイロ帝国は複数の国を吸収しながら大きくなった為、敵が多いのじゃ。
いつ刺客が襲って来るかも知れないので城の外へは自由に行く事が出来ないのじゃ」
「へぇ~、姫だから自由気ままに出来るかと思っていたけど、意外と不便なんですね」
その時ラウージャとラウードの視線が目の隅に見えた。
「どうしたのですか、ラウードさん」
「いや、食事は静かにするものだと思っていたんだが…」
「あ、すいません。気がつかないで」
「ワハハハ、わらわは話をしながら食事をした方が楽しいがな。
ガクシンもそう思うじゃろ」
「まあ、食事が楽しくなるか、でも俺は強い相手と戦っている方が楽しいがな。
なあ、翔殿」
「いや、僕は戦いは楽しくありません。
もうこりごりですよ」
「そう言うなよ。
何なら、この食事のあとでもどうだ」
「遠慮しときます」
僕は食事が終わったら、速攻で逃げようと心に決めた。





