275 チョウサイの街 2
僕はのんびりと周りを見ながら領主邸を目指していた。
このチョウサイの街も区画がきちんと別れており、南側の壊れた城門付近は商店街、東側の城門付近は住宅街、西側の城門付近は貧困街、北側の城門付近は工場地帯となっており、中心部に役所関係が集まっており、そこに領主邸や貴族達の住宅、学校、ギルドなどが集まっていた。
商店街を通る時、美味しそうな食べ物に目星を付けながら進んで行くと、よくナーガ兵士達とすれ違った。
警戒の為の巡回なのか分からなかったが、20名程の兵士が列になって進んでいる。
住民は兵士達の事を気にする事なく、普段通りの生活を送っているようだ。
兵士達への指示が徹底されているのだろう。
民衆に対して略奪や暴力をしてしまったら、これからナーガ国と民衆達との間で亀裂が生まれるのは間違いないだろう。
商店街を過ぎて、中央区に入る所で検問が行なわれていた。
検問所には兵士が10人、そしてその周りに多くのナーガ兵士達が駐留していた。
検問所に入る人は、ほとんど居らず検問所に並んでいたのは、ほんの何人かだった。
「何のようで中央区に入るんだ」
兵士の1人が声をかけてきた。
厳しくなく、やさしい声で訪ねてきた。
僕からすると、とても好印象だった。
「ラウージャに会いに来ました」
兵士は少し怪訝そうに僕を見つめていた。そして、
「王子の事か?」
「はい、そうです」
「何処かで見たような顔だけど、許可の無いものを通す訳にはいかない」
「でも、僕はラウージャの友達だし、ナーガ国の立派な兵士ですよ」
「しかし、私達、ナーガ兵士と格好が違うようだが」
「それは僕が遊撃隊だから」
「遊撃隊?そんな部隊はないぞ」
「え、そんな、ラウージャの指示で動いているのに…」
「そこまで言うなら少し待て、王子に確認するから」
「どのくらい待てば良いのですか」
「書類を作成して提出するから、2時間くらいか」
「そんなに待てません」
そんな押し問答を検問所で行なっていたら、騒ぎが大きくなり野次馬が周りを取り囲んでいた。
「翔くん」
何処からか聞き覚えのある声がする。
「翔くん」
辺りを探すが周りはナーガ兵士達の壁が出来ていた。
「翔くん」
声がだんだん大きくなり、声のする方を見ると、兵士の間から誰かが此方に向かって来ているようだ。
割って入って来ているようで、兵士達が後ろの方から左右に分かれながら動いている。
「ちょっと通して」
そして目の前に表れたのは、
「セレナさん…」





