27 瞑想
誰かが僕を揺さぶっていた。
エアルかアルケーか?
うっすらと目を開けるが周りはまだ暗い。
まだ夜中じゃないか、朝まで寝かしてくれよ、そう思いまた目を閉じる。
「起きるでござる、翔殿」
ムラサメさんの声だった。
もしかしてさっきから揺さぶっていたのはムラサメさんだったのか。
「どうしたんですか?」
「まもなく夜明けでござる」
「夜明けがどうしたんですか、まさかこんな朝早くから出発ですか?」
「違うでござる。今から朝の日課として一緒に瞑想するでござる。」
「瞑想ですか?」
「そうでござる。魔力を高めるためには精霊の力はもちろん、大気や大地、あらゆる自然から力を借りなければならないでござる。
それを鍛える為に瞑想して、その力を肌で感じなければならないでござる。」
朝は苦手だからもう少し寝かせてとは言えず、半分寝たままの状態で言われるがままに、近くにあった大きな岩に座り込みムラサメさんと一緒に瞑想を始める。
だけど僕の頭の半分は寝たままなので、ウトウトしながら必死で深い眠りに就くのを堪えていた。
「自分の楽な姿勢で、頭を空っぽにして周りの自然の気を感じるでござる」
前にテレビで見たのを思いだし、足を組み左右の手をそれぞれの足の上に載せ、確かこんな姿勢だったような記憶があった。
無にならなければならないはずなのに、いろんなことが頭をよぎり頭を空に出来なかった。
自然の気ってどんな感じだろう?
一生懸命、気を探そうとするが、キチンと瞑想出来ていない所為なのか、全く分からなかった。
そうしている間にだんだんと辺りが明るくなり、鳥の鳴き声や動物の鳴き声等が聞こえ始め騒がしくなってくる。
太陽が山の間から顔を出したところで瞑想は終わった。
「さぁ、支度してダンジョンへ行くでござる」
朝食を取り、テントなどを片付けて、また地下ダンジョンへと潜っていく。
一階層はもうマッピング済みなので迷わず、スライムを倒しながら二階層入り口まで来ていた。
「地下5階層まではスライムばかりでござる。
下に行けば行くほど強力で毒や麻痺をさせるスライムがいるから気をつけるでござる」
早速、二階層に降りてみる。
二階層も迷路になっているが、一階層よりは複雑ではないような気がした。
剣の使い方が良くなったのか、スライムの倒しかたが良くなったのかは分からないが、スライムを毒や麻痺など関係なく一撃で仕留めていく。
そしてあっという間に5階層まで来ていた。
「ウム、おかしいでござる」
「どうしたのですか?」
「前に来た時よりも、敵の出現率が少ないような気がするでござる」
前に来たことないから分からないけど、確かに敵の出現率が悪いような気がする。
一匹倒した時の経験値は多くなっているが、出会う確率は低いような気がする。
「あと、階層ボスが階ごとにいるはずなのに一階層以降出ていないでござる」
「それは、確かに変ですね」
「ダンジョン自体に何か活動エネルギーみたいなものが少ないような気がする。
原因を突き止める為にも最下層へ急ぐかべきか...。」
ムラサメさんは少し考え込んでいた。
「とりあえず今日は、ここで夜営するでござる。
ボスの部屋はボスしか現れないから、ボスが居ないなら安全でござる」
「ボスが出現したらどうするんですか?」
「ここまで来た感覚で言えば、まずボスを出現させるエネルギーが足りないでござる。
だけど念の為に夜営する場所の周りにはキチンと防護魔法をかけるから安心して大丈夫でござるよ!
何だか1日が過ぎるが早い。
もう夕方になっているのか?
まだそんなに時間が経っていないように感じたが、ムラサメさんが言うから間違いないだろう。
ダンジョン内は日の光が届かないので、僕には今の時間を知る手段がない。
どうやってムラサメさんは時間を把握しているのだろうか、気になって聞いてみたら、
「それは長年の経験と知識でおおよその時間が分かるでござる」
と言われたが、僕にはまだ経験も知識も少ない、この世界で生きていくにはまだまだ足りないことばかりだった。
そんな事を考えながら夜営の準備を始めた。