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26 一階層

迷路でマップ機能はとても便利だった。

一度通った所はマッピングされているので、わざわざ覚えたり書く必要はない。

少しずつ広がっていくマップを確認しながら先に進んでいくだけだったが、マップで確認出来る範囲は狭く10メートルぐらいだろう。

通った道は迷う事はなくても、見える範囲は10メートル。

警戒しながら進まないとモンスターの奇襲を受ける可能性がある。


次を左に曲がって進むと...、あれ?行き止まりだ。

また道を間違えたので戻ろうとすると、突然、スライムが上から落ちてきた。

これはスライムの罠かとも思ったが、スライムにそこまでの知能はないから、ただの偶然かも知れない。

天井からドロッとした物体が垂れてきて、地面に到着すると丸く集まりスライムの形を形成していく。


『ポットン、ポットン、ポットン』


「翔くん、今度はスライム三匹でござる」


スライムが何やらうねうねしてるかと思っていたら、三匹同時に攻撃してきた。


「マスター、私達も手伝います」


エアルが一匹を風の壁で進路をふさぎ、アルケーも水の壁を作り出し、一匹の進路を塞ぐ。

よし、その間に残った一匹を僕は仕留めに入る。

先ほどのように、スライムの中心を目掛めがけて剣を突き刺す。

しかし、今度はスライムが溶けたように、横にずれてかわしスライム本体に僕の剣は届かなかった。

その時、僕の左腕とスライムの外周が僅かだが微かに触れていた。


「痛っ」


触れた部分の服が溶け、溶けた服の下から肌があらわになり、その部分の皮膚が赤くただれているのが分かる。


「スライムは相手を溶かして食べるから、気をつけるでござる。

あとで回復魔法かけてやるでござるから頑張るでござる」


あとでって、今、痛いんですけど...、今かけてくれないかと思いながら痛みを我慢がまんして、次ははずさないようギリギリまで近寄って、力一杯突き刺す。


「ソリャ!」


今度は、スライムの本体に命中、霧散むさんした。


「よし、次」


と思ったら、すでに戦闘は終わっていた。

一匹はエアルが風で切りきざんで、もう一匹はアルケーが水の圧力で押し潰して倒していた。


「エアルとアルケーが倒したら、戦闘経験にならないでござる」


「いいじゃない、誰が倒してもご主人様と私達の経験値はまるんだから」


「そうそう、マスターとは一心同体なんだから」


「ん~、そうでござるな。

それなら、精霊を使った連携戦闘をやってもらうでござるか。

マナ、いわゆる魔力の残りを確認しながら、連携して戦うでござる」


「そう言う事で頼むよ、エアル、アルケー」


「勿論ですよ、ご主人様」


マップを確認しながら、迷路を行ったり来たり、どんどんマッピングされていく。

何度目かの戦闘で赤いスライムが現れた。


「レッドスライムでござる。

こいつが出てきたということは、一階層後半に入ったということでござる。

ブルーより少しレベル高いから気をつけるでござるよ。」


敵は一匹、レベルが少し高いと言っても体を一突きで終わりだと思っていた。

僕は力一杯レッドスライムに剣を突き刺すが、レッドスライムは霧散むさんしない。

手応えはスライムの本体まで届いているようだが、今の僕の力ではレッドスライムを一撃で終わらす事は出来なかった。

一撃で終わると思っていたのに倒しきれない、一瞬焦りはしたものの冷静に対応し、僕には精霊達がいる。


「アルケー、追加攻撃をお願い」


「はいな~」


アルケーは一筋の高圧力の水を、ビームみたいに出し敵の身体に穴を開けた。

するとビームによってあいた穴から凍りはじめ、霧散むさんする前にスライム自体がこおってしまった。

レッドスライムに刺したままの剣まで凍ってしまったので、剣を引き抜くのがとても大変だった。

剣を引き抜くと、スライムは粉々《こなごな》に砕けてしまった。

凍るとは、どういう原理だろうか?

水が凍るなら蒸発することもあるな、いろいろな考えが浮かんだが、今はそんな余裕は無いのでその内試してみよう。


更に迷路の先に進む。

迷路って苦手なんだよね、マップのお陰で同じ行き止まりにぶつかる事は無かったけど行ったり来たりと...、マップを見ると一階層がほとんど完成しつつあった。

レッドスライムが出てから、ここまで来るのに何十匹のスライムを倒して来ただろうか。

そして、この次の角曲がればマップが完成するはず。

角曲がると、そこは今までと違って大きな空間になっていた。

その奥に見えるのは下に向かう階段。


「やった、一階層達成」


と言って広い空間に入ると、上からデカイ紫色のスライムが落ちてきた。

高さは、三メートルはあるだろうか。


「わぁ、なんだこいつ」


「一階層のボスでござる。

こいつを倒したら、一度地上に戻るでござる。」


「こんなデカイやつ、倒せるんですか?」


「頭を使えば簡単でござる。

こいつを倒せないようじゃ、番長には勝てないでござる」


そうだ、このくらい倒さないと番長にはほど遠いだろう、まだまだ戦闘経験が足りない、そして番長を倒さないとそらには届かない。

いつの間にか、空のことばかり考えてしまっていた。


るぞ、エアル、アルケー」


「はーい」


「はいな」


どう戦えばいいんだろう。

目の前まで来ると、入り口で見た時よりも、かなりでかく見える。

同じスライムだから中には体があるはず、とりあえず突いてみるか。


「オリャー!!」


かけ声とともに力一杯突いたが、中心の身体まで届かない。

スライムの表面が波打つだけだった。

敵だと認識したのか巨大スライムがおそいかかってくる。

スライムの外周が、波のように上から降りかかってくる。


「まかせて」


アルケーが、水の壁を作って阻止そししてくれた。


「エアル、風で切り裂けるか?」


「やってみる」


風が渦を巻き、スライムを切り裂いていく。

しかし、表面しか切り裂いていないようで、切り溝が出来たと思ったら直ぐにくっついてしまった。


「ダメ」


「アルケー、穴開けられる?」


「やってみる~」


何のない空中で周りから水丸く集まりだし、渦巻いたと思った瞬間、ビームのような水が高圧で発射はっしゃされる。

穴は空き回りを凍らせているが中まで届かない。


「ダメです、レベルが足りないようで威力が足りません」


打つ手無しか?少し考える。

どうやったら、スライムの本体まで攻撃が届くのか。


「諦めるでござるか?

そらちゃんも、番長に勝てないからと言って諦めるでござるか?」


「それとこれは違うでしょう」


「同じでござるよ。強敵を前に逃げ出したら、番長の前に出た瞬間、勝てないと頭をよぎって逃げる事を考えてしまうでござるよ。

そうなると本来の力が発揮出来ずに勝てるものも勝てなくなるでござるよ」


「僕は逃げません!、空を救い出すまでは絶対諦めません!」


「そう思うなら諦めずにいろいろ試して攻撃するでござるよ。

試す事で攻撃の幅が広がるでござるよ」


いろいろ試す...。

僕はふと思い付いた事を実戦する事にした。


「エアル、アルケー」


エアルとアルケーに呼びかけ、こそこそと耳打ちをして指示をだす。


「わかった、やってみる」


エアルとアルケーが準備し僕は剣を構える


「よし、いくぞ!」


「はーい」


「はいな」


先ほどと同じように、アルケーが水のレーザーをはなち、スライムに当たる。

同じように見えるが先ほどと違うのは、外周の液体を吹き飛ばしながら進んでいる。

よく見ると、水のレーザーの回りを風が一緒にねじりながら進んでいく。

銃も捻れを入れて発射すると威力が上がるから、その応用を使ってみたがどうやら上手くいきそうだ。


「水と風の合わせわざなのだ~」


威力いりょくが、倍以上ばいいじょうになったレーザーは、外周液体を吹き飛ばしながら大きな穴を開けていく。

そして外周の液体を吹き飛ばし、スライムの本体があらわになった。

外周を吹き飛ばして分かったが、本体までかなり深い。

実際、このスライムの本体は小さいのではと思ってしまう。

穴の底に見えている本体部分に僕はとどめに水と風を纏った剣を突き刺す。

剣を刺した瞬間スライムは止まり、そのあと小刻こきざみに震え出す。


「離れるでござる!」


スライムから離れた瞬間、スライムが大爆発、霧散した。


「あ、ドロップアイテム!」


「キラキラです」


「宝石、スライム石でござる。

高値で取引されるでござるよ。

まあ、及第点きゅうだいてんでござるな、

取り敢えず、一度地上に戻るでござる」


僕達は来た道を地上にむかって戻って行く。

今度は、マップが完成しているので迷わず出口にたどり着いた。

戻る途中もスライムは、何匹も襲ってきたが...。

ダンジョンから外へ出ると既に夕暮れになっていた。

急いで夜営の準備、仮テントを立て夕食を作って食べた。


「明日も、早いから早く寝るでござる。」


「夜番は、しなくていいんですか?」


「結界を張ってるから大丈夫でござる。

あ、しまった!一番近くに野獣が...」


「え、何処に!」


辺りを見回すが野獣などいなかった。

暫く経ってムラサメさんの言っている意味がようやく分かった。


「僕、襲わないですよ!」


冗談じょうだんでござる。

もし襲って来ても返り討ちでござる。」


確かに、襲いたくなるような美人だけど、襲ったら殺されそうだから、手を出すのはやめておこう。

だから僕はムラサメに当たらないように少し離れて寝るが、いつの間にか僕はエアルとアルケーに挟まれて寝ていた。

エアルとアルケーが、子供ではなく大人だったら...と甘い夢をみながら深い眠りに着いた。


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