249 対クレハン4
「何故だ!どうして防御スキルが破られるんだ。
今まで破られた事がなかったのに…、」
「自分のスキルを過信しすぎるからでしょう」
「いや、きっとたまたまだ。
私がスキルをかけていなかっただけだろう」
「そう、それじゃもう一度いきますよ」
今回はステップなど踏まずに直接クレハンに向かって走っていた。
クレハンは大きな盾に隠れながら、スキルを発動し防御を固めている。
僕は剣が届く位置まで来ると、剣をおもいっきり振りかぶった。
先程の攻撃でも、怪我していないようなので、今回は全力で野球のスイングのようにクレハンの大きな盾目掛けて振りかぶった。
『ガキャン』
何か凄く鈍い音がしたけど、クレハンは縦に回転しながら、何処か怪我をしたのか血を撒き散らしながら飛んでいく。
100メートルは飛んだだろうか。
後ろで隼人が、
「ホームラン」
と叫んでいた。
結構、血を撒き散らして板紙大丈夫だろうか。
クレハンに近いて見ようとしたら、クレハンはゆっくりと起き上がった。
しかし左手には盾を持っておらず、よく見ると左手をだらりとさせて血が滴り墜ちていた。
どうやら僕の攻撃を防ぐ事は出来たが、その衝撃に耐えきれず、左手が犠牲となったようだった。
「クレハン、そろそろ降参してくれるとありがたいのですが」
「まだだ、私にはまだ剣が残っている」
「盾が無いのに戦えるのですか」
「剣一本有れば祖国の為、命くらいくれてやるわ」
「あの~、今、祖国を裏切ってますよね」
「…!、それは領主の命令だから、領主の命令は国の命令だから」
「それならば、何故ラウージャの命令聞かないのですか?
ラウージャは王家の人だから、一番偉いのではないですか」
「分かっているさ、分かっているけど…、」
「分かっているなら降参してください。
左手の負傷で、出血多量で死んでしまいますよ」
「もうこのまま死なせてくれ、私の防御スキルが破られた瞬間、もう終わっていたんだ」
「クレハン、貴方は死んで責任を取らないつもりですか、そうなると次の誰かが犠牲になりますよ、クレハンの所為で」
「それは…、」
「だから降参して、責任をまっとうしてください。
僕はそんなに偉くないので言える立場デはないですが、反乱に参加した者を擁護するように言いますから、だから…、」
「分かった。お前を信頼する。
言った言葉は必ず責任持てよ。
私は降参するよ」
「クレハン」
「まだ戦えはするけど、お前の熱意に打たれて…、その、なんだ、あとは頼んだぞ」
「ありがとうございます、クレハン」
クレハンの降参により、呆気ない終わりとなってしまったが、まだ終わりではない。
まだネイロ帝国との戦争中なのだから。
ラウージャが僕達の所にやって来た。
「クレハン、決闘で負けた時の事、覚えているか?」
「はい、ラウージャ殿下、私達イルプレーヌ兵団は殿下に付く事をお約束しましょう」
「クレハン、ありがとう。
早速…、」
「殿下、すいません」
「どうした」
「左手から血が流れだし、目眩が…、回復してよろしいでしょうか」
「ああ、すまない。気がつかずに」
「いえ」
クレハンは医療部隊を呼び、傷ついた体を回復させていた。
「クレハン、回復したらお前達部隊は私の配下になって、私達とともにバンブーテイルに移動しネイロ帝国に反撃するから」
「先程まで反乱軍だった者を信用なさるのですか」
「誰かさんみたいになってしまうが、今は部下猫の手も借りたいくらいなのだ。
反乱軍になった事を後悔するより、罪を償うつもりでネイロ帝国との戦いに奮起してくれ」
「畏まりました」
「傷がいえたら、陣をかたずけて王都に来るように、先に戻っているからな」
そう言うととっととラウージャは歩き出していた。
「ラウージャ」
「なんだ、翔」
「さっきの誰かさんって僕の事?」
「さあな、それにしても翔が強くなっていて助かったよ」
「いや、無理やり連れてきた癖に」
「そうだったかな、急がないと反撃のタイミングがずれてしまうかもしれないから、急ぐぞ」
「あ、誤魔化したな」
ラウージャを先頭に僕達は王都へと戻っていった。





