242 王都
ビルトの部下達は王都を囲むように陣を作っていた。
王都の中の兵士の数は1000人未満だと予測して周囲から圧力をかけていたが、確かに白銀騎士団だけでは500人程度しかいなかったはずなのだが、
今はラウージャ率いる部隊が追加で二万人いる。
ラウージャは兵士の数を知られないように工夫していたので、敵に兵士の数を知られることはなかった。
ビルト側兵士団の指揮官に騎士団隊長のグレハンを起用し、既に勝ったつもりなのか、全ての兵士達に戦うつもりはなく、王国側が白旗を振ってくれるのを待っていた。
そんな時、情報を集めていた密偵から思いもよらない話を聞かされる。
なんと領主ビルトが捕まったという。
報告を受け、司令官のテントで幹部達の会議が始まっていた。
モンゴルのゲルのような構造で12畳程の大きさで中央に大きな柱が立っており、天井の中心には空気を取り入れる穴が開いているため、窓がなくても中は明るく涼しく過ごす事が出来る。
そこには長いテーブルに6人の幹部達が話し合いを行っていた。
「どうなっているんだ!」
「それが我らの領主様が王国側に捕まっているとのことです」
「それは事実なのか?」
「何故だ、領主様はイルプレーヌで隠密部隊が守っていたのでは無いのか」
「それがどうやらイルプレーヌが奇襲を受けたらしく、その際に領主様が捕まったらしい」
「そんなはずない。奇襲する部隊などすれ違わなかったし、隠密部隊が負けるとは到底思えない。
そうだ、きっと偽物に違いない」
一人の密偵が司令官の側に近寄る。
「グレハン指揮官、ビルト領主様が城門前で晒されています」
「何だと、ビルト様が…、」
「これは、偽物か本物か見極めろということか」
「しかし、偽物を置いて近づいてきた我らを返り討ちにするかも知れないぞ」
「でも、本物なら…、」
「誰かが行くしかないか」
「それなら、私が行こう」
「司令官!」
「一番付き合いが長いのは私だ。
本物かどうか見極めるには、うってつけのはずだ。
もし偽物で罠だとしても私の命、安い物だ。
私が討たれたのをきっかけに、全軍の鼓舞が上がり王都を攻めてくれれば嬉しい限りだ」
「それなら私も行こう。参謀として一緒に最後の賭けにでる。
一人では確認とれないかも知らないからな」
「ありがとう、参謀。それじゃ私と参謀で本物か確認しに行く。
もし私達に何か有ればその時は皆、頼んだぞ」
そう言うと司令官と参謀は馬に股がり、城門前に掛けていく。
他の兵士達は、先程までのお気楽な気持ちとはうって変わって、緊張感に包まれていた。





