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241 領主邸

戦いを終え、僕達は領主邸の前までやって来た。

そこへ丁度、セレナさん達が領主邸から領主のビルトを捕らえ出て来た所だった。


「あら、翔くん、そっちは終わった?」


「はい、この通り。隠密部隊を捕まえました」


「バカな、我の隠密部隊が…、」


領主の最後の頼みの綱だった隠密部隊が捕まり、領主は一気に意気消沈していた。


「領主、もう仕訳ありません」


隠密部隊の隊長小十郎は、領主の前で手を地面に付き平謝りしていたが、領主のビルトは独り言のように『ブツブツ』と呟き、

放心状態となり回りの状況など全然見えていないようだった。


「翔くん、殿下に負担がかかるから」


「あ、そうですね」


僕は、ディメンションルームの扉を開く。


「なんだ、その魔法は?」


小十郎は、驚いていた。


「え、こんな魔法って他の人には使えないの」


「翔くん、その魔法は限られた人しか使えないの。

私だって初めて見たくらいだから」


「そうなんですか、セレナさん」


「ええ、それも中が複雑に出来るなんて、翔くんくらいじゃないのかな」


僕は、竜人族が使っていたから、魔法として認識されているかと思ったが、使える人がいないなんて、あまり見せない方が良いのかと感じてしまう。


「翔くん、王都に戻るわよ」


「セレナさん、先に行って下さい」


「どうしたの、翔くん?」


「ちょっと領主邸に用事が…、」


「あ、そうなの。じゃあ私達、先に行くけどまだ領主の息のかかった兵士がいるから気をつけてね」


「分かりました」


セレナさん達が王都に戻るのを見送り、僕達は領主邸の中に入った。


「隼人達も先に王都に戻って良かったのに」


「なに言っているんだ。俺達はチーム翔だろ、翔の行く所、何処にでも付いていくぞ」


「何時から、チーム翔になったんだ」


「あら、なら私達もチーム翔の一員よね」


いつの間にかディメンションルームから出て来たファミリ達。


「お、美少女軍団の登場か、いいな翔は」


「隼人も作れば良いじゃん」


「なら、沙羅、俺の軍団に入らないか」


「嫌よ、私は翔くんといるんだから」


「つれないな」


沙羅は、僕に隠れてあっかんべーをしていた。

なかなか可愛らしい所もあるなと感じてしまう。

先ほどまで戦いの中にいたのに、一気に和んだ雰囲気になる。


「それで翔くん、領主邸に何の用があるの」


「それが、マップで確認していたんだけど、領主邸から動かなくなって、もしかして捕まったのかなあと思って、だから小十郎さんに案内してもらおうと…、」


「確かに、領主邸の地下には牢屋があるが、まだ生きているとは限らないが」


「大丈夫なはずです。まだ反応が有りますから」


「それならいいのだが」


「小十郎さん、案内してもらえますか」


「それは構わないよ」


小十郎さんを先頭に領主邸を歩いて行く。

玄関を入ると広い吹き抜けのロビーに出る。

彫刻や巨大な絵画が飾られ、素人目にも分かるほど贅沢の限りを尽くしていた。

ロビーには大きく広い二階へと伸びる階段と右側と左側に続く広くて長い廊下があった。


小十郎は左の廊下に入り、廊下の右側には幾つもの部屋が在るのだろうか

扉が並んでおり左側は大きな窓が付いており、日差しが廊下に差し込み回りを明るく照らしていた。


小十郎さんは二番目の扉を躊躇無く開け中に入っていく。

中に入ると中央に下へ続く階段があり、回りのは通常なら兵士が配置されているのだろうか。

机と椅子が散乱していた。


僕達は、緩やかな階段を降り地下へと向かった。

地下に入ると、雰囲気が一変する。

一階の暖かい雰囲気とは違い地下は魔法灯の明かりだけで日の光は一切入らず、地下だからなのか肌寒く、いかにも何か出そうな雰囲気だ。


流石に女性達は、この雰囲気が嫌でそうそうに一階へと戻って行った。

護衛も兼ねて隼人達にも一階で待ってもらうことになった。


先に進むのは僕と小十郎だけで行く事になった。

入って直ぐの所には拷問部屋があり、中を覗くといろいろな道具があり至るところに血の跡が付いていた。

一体何人の人が犠牲になったのだろうか。

拷問部屋を過ぎて、辺りを警戒しながら進んで行くと奥の方からうめき声がしてくる。


「う~、う~」


多分、一人なら真っ先に逃げ出したい所だけど、小十郎さんもいるし一階には仲間もいる。

逃げ出したら何言われるか分からないので、自分の感情を押し殺し、心の中で


『南無阿弥陀仏』


を連呼していた。

牢屋は全部で4つ、左右に二個ずつあった。

牢屋を一つずつ確認しながら鍵を開けていく。

何人もの人が閉じ込められて、動かなくなった者、手足が動かせない者、喋ることもできない者など沢山いた。

一番奥、最後の牢屋を開ける。

牢屋の中に入り辺りを見回す、約30人ほどが狭い牢屋の中に閉じ込められていたが、『いた』僕は目当ての人物を見つけることが出来た。


幸いにも怪我はしていなかったが、かなり衰弱していた。

僕は声をかけてみる。


「チュー助、大丈夫か」


チュー助はうっすらと目を開け相手の人物を確認しているようだった。


「だ、旦那、す、すいませんチュー。

捕まってしまってチュー」


「なに言っている。

無茶な注文した僕も悪いさ、もう大丈夫だから」


僕は部屋中に『癒し』をかけ全ての人を回復させた。

残念ながら亡くなっている人は回復する事が出来なかった。


『後でちゃんと弔いますので』


そう心に誓い、助かった人達と一階へと上がっていく。


「よし、チュー助」


「何か、用でチューか」


「助かった人達の明細を作っておいてくれ」


「分かったチュー」


「小十郎さんは、隠密部隊を使ってこの街を掌握しておいてくれ」


「反逆者だった私に任せて良いのか」


「ああ、小十郎さんは信頼出来ると思ったから頼む」


「…、分かった」


「翔くんらしいわね、直ぐ敵を信用する」


「駄目なのか、ラウサージュ」


「ううん、それが良いところよね」


「そのお陰で私も助かったのだし」


「ミディア」


「はいはい、モテモテは良いですね」


「隼人がすねているぞ」


「すねてねーよ、潤」


「まだ戦争は終わってない。

王都に急ぐよ」


「は~い、ご主人様」


「待ってダーリン」


「置いていかないで~」


僕達は小十郎さんと、チュー助に任せて王都に戻ることにした。


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