235 神楽対隠密部隊隊員
神楽は、隠密部隊の隊員にクナイを投げ引き付けながら移動していた。
街中の外れにある森まで誘導してきた。
広さは普通の学校のグランドの大きさくらい、高さ10メートルほどの木が何本も繁っていた。
「ここまで来れば良いでしょう。
さぁ、ここで決着をつけますわよ。
貴方、お名前は?」
「隊員に名前はない。」
「あら、そうなの。
なら、貴方、祖国を裏切っている事に何の抵抗も持たないの?」
「隊長の指示に従うだけだ」
「自分の意志は持たないの?」
「私達は、ただの駒だ。
感情の欠片もない」
「そうなの、それは残念ね。
では、勝負よ」
神楽は背中に背負っていた長剣を抜き構えた。
長剣は朝日に反射して、眩しいほどに輝いていた。
見る者が見れば、その長剣は見る者を虜にしてしまう、そんな要素を持っている剣であった。
戦いに使う事になった長剣の名は『正宗』名作中の名作の剣であった。
神楽は今まで使う場面がなかなか無かった事もあり、神楽は敵と戦うということより、正宗を振るってみたいという感情の方が大きかった。
いつもあまり感情を出さない神楽だが、今の神楽は笑っていた。
相手からすれば、戦いの最中に笑うなんて不気味としか言えない。
神楽は、隊員目掛けて剣を振ってみる。
あまりにも鋭過ぎた為、隊員は驚いていたが神楽自身も驚いていた。
正宗は普通の剣より分厚く、刃の部分も広い、見た目は重くみえるが、剣を振ってみると意外と軽く、自分が思っていた以上に鋭く振れたので神楽は驚いていた。
何より鋭さに加え、威力も増しており、隠密部隊の隊員は一つの長剣では止めきれずに脇差しを取り出し二本を交差する形で止めていた。
神楽は二撃目を放とうとしたが、隊員は素早く距離をとり、近くの木の枝に乗っていた。
すかさず神楽は追い討ちをかける。
正宗を腰の辺りにいつでも振れるように構えたまま、隊員に迫る。
隊員はクナイを投げつつ、次の木の枝に移ろうとしていたが、神楽はクナイを全て避け、隊員目掛けて正宗を横一線に振るった。
隊員は何とか長剣で防いでいたが、正宗の威力に負けて隊員は防いだ長剣ごと飛ばされていた。
「残念ながら、貴方では私に勝てないわよ。
隊長だと皆でかからないと勝てないかもそれないけど、今は翔殿が押さえてくれているし、私も早く翔殿の手伝いしたいから、負けを認めてくれないかな」
「まだ、勝負はついていない」
「あれ、さっきの衝撃で動けなくなっているのは誰かな」
「…、」
「それなら、とっとと止めを刺しちゃおうかな」
そう言うと神楽は隊員に向かって行き何度も剣を振う。
動けない隊員は剣で何とか防いでいるが、正宗の衝撃に耐えながら右へ左に衝撃で揺れていた。
何度目だろうか。
ついに隊員は長剣を飛ばされてしまった。
それでも脇差しを構え、衝撃を耐えていたが、更に脇差しが折れると同時に、隊員の気力も無くなったのだろうか。
隊員は倒れ込むようにその場に倒れてしまった。
剣の衝撃に耐えられなかったのだろう。
体には無数の青紫の打撲の痕が残っていた。
隊員は心身共に傷だらけになって倒れてしまったようだ。
神楽は隊員を縛り、抱えて移動する。
早く翔殿の支援に行かないと、隊長を押さえる事は無理だと神楽は思っていた。
元の場所へと急ぎたかったが、少し離れすぎたのをその時後悔した。





