230 対隠密部隊
「どういう事だ、小十郎」
「は、お休みの所、申し訳ありません。
侵入者です」
「それは分かった。
この街の防御は万全と言わなかったか」
「は、街の防御は完璧のはずでした。
街の外にも罠を仕掛けてましたから、侵入するのは不可能です」
「なら、どうやって侵入してきたのだ」
「それは分かりません」
「この街には、ほとんど兵士が居ないのだぞ。
敵の数は?」
「約200名と聞いております」
「小十郎、侵入者を殲滅することは出来るか」
「は、ご命令とあれば」
「よし、見事殲滅してみせよ。
もう、失態は許されないぞ」
「は」
そう言うと隠密部隊長の小十郎は、姿を消し侵入者の殲滅に向かった。
「やはりわしも王都進行について行くべきだったか。
いや、まだ小十郎がいる。
大丈夫だろう」
そういい聞かせなが、領主ビルトはベッドから起き出し、着替えを行っていた。
その頃、僕達は兵士達10人ずつくらいの小隊と戦闘を繰り返していた。
「なるべく、殺さないように、元は同じ国の兵士だから、戦意を無くさせるだけでいいわ」
たった10名の兵士など200名の兵士に襲われたら、数で押しきられてしまう。
一瞬で敵は倒されていくが、流石、ベテラン、敵に深手を折った者はおらず、酷い者でも骨折や、斬れらたりしたくらいで命に関わるほどのものではなかった。
僕は念のためにエルダに指示して、動けないように敵の兵士の両足を岩で固定して足枷を付けさせた。
これでまた襲って来る事はないだろう。この攻撃を三回繰り返した後、僕達は中央広場まで来ていた。
とても広い広場で噴水や、何か催し物をするために屋根のついたステージ台等があった。
普段なら街の人達で賑わうのだろうけど、朝も早いし異様な雰囲気で街の人達は息を潜めているのだろうか。
そして、広場の出口付近に黒い塊、隠密部隊が待ち構えていた。
全員で15人、数は少ないが皆レベルが高い。
皆でかかれば、隠密部隊を倒す事は出来るかも知れないけど、仲間の何人かは倒されてしまうかも知れない。
もしくは、団長のセレナさんを狙って一斉に攻撃してくるかも知れない。
それだけは避けないといけない。
考えた挙げ句、一度クラスメイトの方を一度見ると、隼人が
「分かってるよ、俺達も残るよ」
と言ってくれた。
僕の考えが分かったのだろうか。
「セレナさん、ここは僕達でくい止めますから、先に行ってください」
「でも、翔くん達だけでは…、敵は物凄く強いわよ」
「それは分かってますが、任務の第1目標は領主でしょ。
早く捕らえないと」
セレナさんは、黙ったまま暫く考えているようだった。
そして、
「ゴメン、領主を捕まえたら直ぐ戻るからお願い」
セレナさんにとっては苦渋の決断なのだろうか。
下を向いたまま、唇を噛み締めている。
「それなら、拙者も残るでござるよ」
「ムラサメ」
「セレナ、隠密部隊なら拙者が必要だろうし、一番の難関は隠密部隊、こいつらさえ押さえられれば、後は護衛の兵士しか居ないはずだから拙者も残るでござるよ」
「ムラサメ、翔くん達をお願い」
「任せるでござるよ」
「白銀騎士団、前進」
セレナさんは振り返らず、先頭を走り皆が付いていく。
「行かせる訳ないだろう」
そう言って隠密部隊の一人がセレナさんに襲いかかろうとした時、隠密部隊とセレナさんとの間に、突如、地面から大きな岩の壁が出現した。
高さは10メートル、幅20メートル、厚さ1メートルの分厚い壁だった。
勿論、僕がエルダの力を借りて作った物だが、レベルが上がり進路を塞ぐ為だけに作ったつもりがかなり大きな物になってしまった。
まあ、これで追いかけるのは無理だろうけどね。
「追いかけさせたりはさせないよ」
「なら、お前達を倒してから行くだけだ」
隠密部隊は攻撃体制に入り、緊張感が高まっていく。
これから僕達と隠密部隊との戦闘が始まろうとしていた。





