229 侵入
僕は、イルプレーヌに繋がる扉をゆっくり開け、マップを確認する。
城壁に見張りが数十名、街の中にも数十名が見張り、もしくは団体で動いているので巡回しているのだろうか。
街全体で兵士は100名ちょっとくらいか、白銀騎士団は200名、勝てる見込みは充分ある。
「セレナさん、近くに兵士は居ません」
「ありがとう、翔くん。
静かに領主邸まで移動するわよ」
回りは既に日が昇り始め、全てを日の光が優しく照らしていた。
いくら静かに移動していても、甲冑や武器の擦れる音は消すことは出来ない。
動く度に『ガチャガチャ』音をたてながら走っていく。
まるで呼び鈴のように敵を呼びよさせているようだった。
僕はマップに気を配りながら進んでいたが敵が集まってくるのが分かった。
一番近いのは、進行方右側から敵がやってくる。
何処から来る。
街中を走っているので、回りは建物で囲まれていた。
高い建物でも二階建て、所々建物の間に狭い路地が続いているが、路地か、それとも上から、まさか地下とか、取り敢えず伝えないと、
「右手から敵、接近中」
「ありがとう、翔くん。
皆、注意して」
マップを確認していたが、そろそろ見えてもいい頃だけど…、
「団長、屋根の上に敵」
「ムラサメ」
セレナさんが叫んだ瞬間、ムラサメさんは消えていた。
そして屋根上から
「ギャー」
という声がしたと思って見た時には、敵は屋根から落下している所で、いつの間にかムラサメさんが屋根の上にいた。
僕はムラサメの移動する所が全然見えていなかった。
戦闘体制に入らないと、動きがよく見えないようだ。
街の中は、敵がいつ襲って来るか分からないので、戦闘体制に入っていないな。
「敵に進行がバレたはずだから、回りには皆、注意して」
セレナさんの指示が飛んでいたが、僕もマップで確認していたら、兵士が領主邸とその進行方向に集まりだしているのが分かった。
『これはバレているな、ここからが本番だな』
そう思いながらセレナさんの隣を走っていた。
 





