223 悩み2
「よっ、遅かったな」
「なんで隼人がこの部屋にいるんだ。
それに海斗、博、潤、紗耶香まで」
「なんでって、俺達、親友だろう」
「僕は、翔のこと友達と思っていたけど」
「いや、何をしに来たのか聞いているだけど」
「翔、理由がないと来たら駄目なのか」
「そういう訳ではないけど」
「沙羅から連絡があって、翔がなかなか帰って来ないし、最近元気がないみたいと聞いたから来てみたんだけど、その顔はいろいろ悩んでいる顔だな」
「な、なんで、そんなないさ」
「嘘が下手だな、ここにいるのは皆、仲間なんだから、皆に相談すればスッキリするぞ」
僕は暫く考えた。
人に相談することなんて今までなかったからというより、いつもなあなあで終わらせて自分の都合がいいように終わらせていた。
しかし、今回はそうも言っていられない。
僕は思いきって皆に相談することにした。
強くなったのはいいけど、民衆に恐れられた事、仲間達も僕を恐れるのではないか、何の為に強くなったのか、敵意を向けていたとしても相手を殺害していいものだろうか、仲間で食卓を囲み食事を取りながら相談してみた。
「翔、お前いつもながら変な所で悩むな」
「翔くんはそれが良いところなのよ」
「沙羅、それは翔が好きだからで、俺や他の人だと違ってくるだろう」
「そうね、隼人くんが言ったらキモいよねっていうか、悩み無さそうだけど」
「悩みぐらいあるわ」
「まあまあ、その辺にして今は翔くんの悩みを解決しなくては」
「翔様は、何の為に強くなったと思いますか」
「ラウサージュ、それは仲間を助ける為、敵より強くなる必要があったから」
「それなら、誰か別の人に頼んでもよかったのでは」
ミディアに問いかけられ、確かに人に頼んでも良かったのでは、何故、僕は自分が強くなって助けようと思ったのだろう。
最初に才能がないと言われたから見返してやろうと思ったから、いやでもそれとは関係なく僕は強くなろうと進んでいた。
何故だろう…。
頭の中でいろいろな場面が浮かんでくる。
一つ一つ確かめながら、過去に遡っていくと、そうだ、元の世界の時、僕は友達がいなくて、よく一人でゲームをやっていた。
心の中では目立ちたいと思いながら、ゲームの中の主人公に自分を重ね、英雄になっていた。
同級生との誘いも断って、自分の世界に閉じ籠って、それでいいと思っていた。
本当は分かっていたのかも知れない。
殻に閉じ籠っていては駄目だと言うことを、何故、同級生が誘った時、行かなかったのか。
一緒に行っていたら、僕の人生も変わったかも知れない。
でももう過去には戻れない。
前に進むしかない。
僕は本当は目立ちたいんだ。
そして、このゲームのような世界に来て、本当はワクワクしていたのかも知れない。
今までゲームの中の主人公に自分を重ねていたが、今はこの世界に来て、元の世界では出来なかった英雄を目指していたのかも知れない、そう…、
「僕は、英雄になりたかったんだ」
「翔、俺だってこの世界に来たときから英雄になりたかったんだ。負けないぞ」
「隼人…、」
「まあ、翔くんはいつもゲームばかりして、ちっとも回りを見てなかったからね。
この世界に来て英雄に憧れるのは分かるけど、少しは仲間を頼りなさい」
「沙羅…、」
「それに、相手を倒すに躊躇したら逆に殺られてしまうわよ」
「紗耶香…、」
「もし、仲間が襲われていたら、僕だって助ける為に相手を倒すよ」
「海斗…、」
「翔様は優しい方です。
本当なら元イザカロ国の王一族は死罪になるはずでしたが、父に街一つ任せるなんて普通考えません」
「ミディア…、」
「翔様は、私に光をくれました。
檻に閉じ込められて、生き甲斐もなく過ごしていたのに、新しい世界へと連れ出してくれました。
そんな方を皆様が恐がると思いますか」
「エマ…、」
「そうそう、それにそう言う考えならば、上官とか上のお偉い方、もっと言えば王様の責任が一番重いでしょう。
兵士達が争うには、部隊長同士の指示が必要になりますし、更に大きな纏まりでいうなら軍隊同士なら軍部の指示があるでしょうし、国同士なら国王の指示がなければなりませんが、兵士の数も責任もかなり重くなってきます。
だから…、」
「ありがとう、ラウサージュ」
「そうね、それだけ上にいくと責任も重くなるということね。
そして翔くんの名前が噂になれば、国を守る英雄となって民衆からも支持されて恐れることもなくなるはずよ。
だから、翔くんは今のままで良いのよ」
「セレナさん、いつの間に」
「ノックしたら、ルナさんが開けてくれたわよ」
「ありがとう、皆、少しは楽になった気がするよ」
「翔、一人で悩まず仲間に相談せろよな」
「ああ、助かった。
それでセレナさんは何をしに」
「えっと、ラウージャ殿下が通信が繋がらないから、翔くんがいたら伝えてくれと」
「あ、川岸で考える為メニュー画面切ったままだった」
「はぁ~、それでラウージャ殿下の部隊2万が王都に戻りたいから伝えてくれとと言われたわ」
「ありがとうございます。早速行ってきます」
僕は仲間に感謝していた。
一人では解決出来ない悩みも仲間に相談すれば、意見を言ってくれる。
僕はやっと仲間という意味が分かったのかも知れない。
僕は皆の為に、皆は僕の為に考え行動していると今更ながら理解できた。





