213 王都
僕は王都の中に入っていた。
街中は普段と変わらず、人々の往来は多く賑わっていた。
戦争の起こる雰囲気など一切感じさせず、兵士達も定期的に街中を循環し、それほど警戒した様子もなく、ただ街中の警備にあたっているようだった。
『街中なら、もう安全かな』そう思いファミリを出す為に、裏通りの人気のない所に行こうとすると、僕を呼び止める声が聞こえた。
「翔くんではないでござるか」
そこに居たのは、ムラサメさんだった。
「どうしてここに」
「それはこっちが聞きたいでござるよ。
それに一人でござるか」
「僕は、ラウージャに会いに来ました。
仲間も一緒と言えば一緒ですね」
「何か意味ありげな答えでござるな。
拙者達、白銀騎士団も徴集かけられてセレナは今、王宮で会議中でござるよ。
そう言えば、翔くんも騎士団の一員だったでござるな」
「そうでしたね。
何でか、一人で動く事が多いから騎士団という存在を忘れてしまいますね」
「翔くんは、拙者達を忘れてしまうでござるか」
「そんな事あるはず無いじゃないですか、いろいろな事が有りすぎて、それどころではなかったんですよ」
「苦労したんでござるな。
それで仲間は買い物でござるか」
「あ、そうでした。
お見せしますので、ちょっと付いて来てください」
「何処に行くでござるか」
「取り敢えず、人気のない所へ」
僕達は大通りから外れ、裏通りを通り人気のない街外れまで来ていた。
「この辺りで良いでしょう」
「何するつもりでござるか。
こんな所で拙者、翔くんに襲われたら…、」
「僕はそんな事しません」
「冗談でござるよ」
僕は近くの何もない壁にディメンションルームの扉を作った。
「翔くん、これは一体全体どうなってるでござるか」
「ムラサメさん、中に入って見れば分かりますよ」
扉を開け僕達は中に入った。
勿論、僕達の入った後から誰か侵入出来ないようにディメンションルームの扉は閉じておいた。
「翔くん、この空間は何でござるか」
「これは僕が作り出した異空間です」
「これが異空間でござるか。
まるで普通の宿屋みたいにドアが沢山あるし、光もないのに回りが白く光っていて不思議でござるな」
言われれば確かにそうだ。
電気も無いのに、通路は白一色で白く光っている。
壁全体が発光しているようで、明るくてライトの必要はなかった。
自分のイメージがそのまま反映されている所為かも知れない。
だって暗いと何か出そうで怖いから明るい方がいいに決まっている。
僕は、皆の居る部屋のドアの前に立ち、指輪を近づけてロックを解除する。
『ガチャン』
「ただいま」
「お帰りなさい」
皆、それぞれ暇潰しをしていた。
本を読んでいたり、何かゲームをしたりと。
「凄いでござるな。
これはもう一つの屋敷デござるな」
「あ、ムラサメさん」
沙羅は気付いて近づき挨拶を交わしていた。
他の人にはあまり馴染みがないかな。
「こちら、白銀騎士団のムラサメさんです」
「ムラサメでござる」
みんなと簡単に挨拶を交わした。
「翔くん、今何処に居るの」
「あ、そうだった。
今、王都に着いたから、皆を呼びに来たんだ」
「もう、王都のに着いたの速いわね」
「それじゃ、皆で王都の散策に行きますか」
「あれ、神楽と茜は何処行った?」
「また、獲物を狩りに出掛けましたよ」
「そうなのか、まあ、そのうち戻って来るだろうから、僕は王宮に呼ばれているから、その間に皆で王都の散策していて、買い物のお金と待ち合わせはどうしようか」
「それなら拙者達、白銀騎士団が街外れに陣取っているから、そこに来ると良いでござるよ。
皆で歓迎するでござるよ」
「翔様、私も付いて行って良いでしょうか」
「ラウサージュは、自分も家だからな。
ここでは危険も無いだろうから、ラウドではなくラウサージュとして行くなら良いよ」
「ありがとうございます。」
僕とラウサージュは、王宮へとへと向かい、他のファミリは、ムラサメさんと一緒に王都を夕方までぶらぶら歩き回るそうだ。
夕方までには、神楽と茜も戻って来るだろうし、千年の森に向かうはずなのになかなか進まず行ったり来たりしている気がする。
今、会議が行われているが、出来れば戦争などせず解決出来れば一番良いのだろうけど、そんな思いとは裏腹に世論の流れは悪い方向へと進んでいた。





