表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/1026

21 サンピースの街

僕達はミレナさんと一瞬に拠点フルールイルから歩いて約六時間ほどの所にあるサンピースという街に向かって街道を歩いてた。

馬車で行けば早く着く事が出来るだろうにと心の中で思っていたが、馬車に乗る為のお金もないし、ミレナさんが傭兵になったら街から街に移動するのは当たり前、ほとんど野宿しながら徒歩で移動するらしい。その為、これも訓練の内と言うからトボトボと僕達は歩いていた。

最近は毎日狩りで森の中をぐるぐると歩き回っていたお陰で、長時間歩くのに苦にもならなかったが、街道をただひたすら歩き続けるというのが、何もする事がなくとても暇だった。

最初は周りの景色を楽しみ、仲間達とお喋りしながらのんびりと歩いていたが、ずっと歩いていると景色も見飽きて、話す事もなくなってしまった。

それでも女性達三人、ミレナさん、沙羅、紗耶香は良く話題が尽きないなと感心するほど、ずっと話し込んでいた。

たまに僕達を物凄い速さで追い抜いて行く馬車もあった。

それを見る度に乗せてくれればいいのにと思ってしまう。

男達の話が尽きて沈黙した状態で歩いていた時、皆に歩きながらミレナさんが話を始めた。


「街に入る前に注意する事を言っとくね。

街中ではしないと思うけれど殺し合いはしない事、直ぐに警備兵に捕まり連行されて牢獄行き、そして奴隷に落とされるから。

それとぬすみや詐欺さぎも同様に奴隷になるから、やらないと思うけど気を付けてね。

エアルとアルケーは人族の子供のように振る舞ってね、そして精霊魔法は絶対使わない事。

街の民のほとんどが精霊とは見えない物だと信じられている。

精霊魔法を使うと街中がパニックになるから」


その他、いろいろな注意事項を受けた。

様々な種族が生活しているので、文化やしきたりがそれぞれ異なるらしいから、絡まれないようにとか、いろいろ言われたが一度に言われても多過ぎて僕の頭では半分も覚えていないだろう。

まあ、他の人との接触を避けていれば大丈夫だろうという甘い考えが僕にはあった。

ようやく街の付近までやって来ると、街道は段々行き交う人々のすれ違いが多くなり、街が見える所迄来ると街を出入りする人がフルールイルの倍以上に多い事に驚く。

街の大きさ、住んでいる人口の違いもあるだろうけど、村と街ではこれ程違うとは思ってもいなかった。

サンピースの街もやはり外敵からの侵入を防ぐ為、城壁で囲まれており入り口は3箇所、その内の1ヶ所、僕達が入ろうとしている城門の所では、既に街の中に入る為の長い列が出来ていた。

フルールイルでは、並ぶ事なくすんなり入れたのに、サンピースの街では警備が厳しいのか、皆、立ち止まって城門にいる警備兵の所で何かやっているように見えた。


「城門の関所で受付をするわ。

あの水晶石に指輪をかざすだけだから、それでその人の個人情報、犯罪歴、街の出入りが確認できるわ」


「そこで捕まることはないですよね」


「まず犯罪をおかしていなければ大丈夫なはずだけど...、君達、何か不味い事やってないでしょうね?」


「やってないです!多分」


「隼人くんは有りすぎるのじゃないの?」


「紗耶香!俺を悪者みたいに言うんじゃない。

俺よりも存在感のない奴の方が怪しい、影で何やっている分からないだろう?

なぁ海斗」


「あ、海斗も居たんだ。ゴメン気付かなった」


「酷いな、確かに存在感は無いかも知れないけど、別に悪い事はしてないよ」


「そうよ、存在感がないからと言って、隼人くん、海斗に謝りなさい!」


「ヘイヘイ、ゴメンよ海斗」


城門前の列に並び、精霊達は指輪を持っていないというか付けたら精霊というのがバレバレになってしまうので、人通りの少ない所で周りに見えないようにコッソリと見えなくして、城門を通る間は姿を消してもらっていた。

そして話をしている間に僕達の順番が回ってきた。


「次、指輪をかざせ」


僕は置いてある水晶石に指輪をかざしてみる。

まさか、ここで捕まったりしないだろうね。

心の中はドキドキしていた。

何せ初めての経験なので、これがどういった仕組みになっているのか想像もつかない。

ちょっとした事でも捕まりそうで、はっきり言って内心はビビりまくっていた。


「よし、通っていいぞ」


過ぎてみれば何だかとても呆気あっけなかった。

さっきまでの緊張感は何だったのだろうか。


「みんな~、いるかなぁ。

それでは、順番にお店回っていきましょうか。

ちゃんと付いてきてね」


そう言うとミレナさんは先頭きって歩き始めていた。

街中はフルールイルとは全く違い人がとても多くにぎやかだった。

すれ違う人を見ると前もって言われたが、色んな種族が住んでいるようだ。

犬族、猫族、鼠族、蜥蜴族、兎族、エルフ、ドワーフ、小人族、多種多様な種族がいる事が確認出来る。

僕はなるべく関わらないように下を向いたまま、ミレナさんの後を追っていた。


「まず、荷物になってる毛皮など売りに行くから、買い取り屋に行くよー」


荷物といってもほとんど皆のリングボックスに振り分けて入っているのだが、更に追加でリングボックスに入れようとしても入れられないくらいパンパンに入っていた。

容量は関係なく、数量が100個までしか入れられない。

武器や防具、食料なども入れとかないといけないので、残りの入れられる数は少ない。

ミレナさんの指輪を見ると僕達の指輪が明らかに安物の鉄のリングみたいなのに対して、色がプラチナのように輝き、豪華な装飾が施されていた。

指輪にもランク付けがあるのだろうか?

それによって容量とか機能とか違って来るのだろうか?

あとで話す機会があれば聞いてみたいと考えていた。

買い取り屋は、街の中心部辺りにあり、店は一際ひときわ大きな店構えでとてもボロい家というか古風な家、出入り口のドアの上に大きな看板が出ていた『よろず屋』と。

ドアは引き戸になっており、ドアを開け中に入ると色々な物が売られていた。

ほとんどが日用品で洋服や、食器、靴、包丁や、くわなど普段使う分はここでそろいそうだった。

中には珍しい物もあり、何に使うのか良く分からない物まである。

ミレナさんが値段交渉している間に、店内の物を皆で物色していたが、今の手持ちでは無駄な物は買えない。

最低限、必要な物に絞らなければならない。

僕達は店の商品を相談しながら買わなくてはいけない物を探していた。そのうち買い取り価格が高かったのか、ミレナさんは嬉しそうにしながら戻ってきた。


「お待たせ、必要な物が有ればここで買って置いてね。

買い物が終われば次、回るよ」


僕達は買い取り屋で最低限必要な日用品を買い揃え、持ってきた荷物が軽くなった足で、僕達は回復屋、道具屋、武器屋、防具屋、スキル屋、魔法屋、鍛冶屋、合成屋、ギルド会館と案内されて回った。

武器や防具をそろええたいが、手持ちの金額では到底とうてい買える値段ではなかった。


「高いね、お金、全然足りないし」


面白おもしろいスキルとかも、あったけどね」


「お金稼ぎたいなら、ギルドでクエスト受けたほうが早いよ。

でもまだ、レベルが足りないかなぁ」とミレナさんが言う。


「だいたいの場所、わかったかなぁ?

最後に情報集めに酒場に行くよ」


真昼から酒場?こんな時間に人はあまり居ないだろうと思いながら、そう言えばミレナさんは、お酒好きと聞いたことがある。

ただ、お酒を飲みたいだけではないだろうかと思ってしまう。

酒場に向かい、扉を開けて中に入ると昼間なのに意外と多くの人で凄く混んでいた。

ほとんどが冒険者みたいだったが、昼間からお酒飲まずにきちんと仕事しろよ、と思わず言いたくなる。

空いている席がないかと見回してみると、奥の方に空いている場所がある。


「あそこが空いてるみたいだ」と隼人が言う。


みんなで空いている方に移動していると、店員さんが


「あ、そちらは!」


と言われたが手遅れだった。

そこにいたのは髪はリーゼント、強面こわもてで、ガタイがいいラグビー部員みたいな身体つきで軽量プロテクトに毛皮をあしらった防具を身にまとっている人物がいた。

見覚えがある、確か高校の番長恪だった人だ。


「やべっ、あれは番長だ。」


「どうする?」


「気付かれる前に逃げるか?」


などと小声で話していたら、ふと足元に誰かいることに気が付いた。

ここからではテーブルが邪魔で良く見えない。

見える位置まで移動すると、それが首に鉄の首輪を付けられ鎖に繋がれた3人の女性だった。

まるで犬みたいに繋がれ、服は汚れぼろぼろの姿、最初は汚れて何かよく分からなかったが、どうやら人らしく見える。

更によく見ると1人は赤い髪の女性らしき人、あと1人は見たことある人...弥生先生!僕らの担任だった先生だ。

最後の1人は...そら!?

空を見た瞬間、僕は何故か体の中から怒りが込み上げて来た。

学校を占めていた番長の怖さより怒りの方が僕の大半を占め、自分でも気が付かないうちに番長目掛けて走り出していた。

空は、僕の家の隣に住む幼なじみの同級生の女の子、顔は可愛い方だと僕は思う、髪は短く、いつも活発的な女の子といった印象がある。

家は隣だし同級生だけど、そんなに話をした覚えもないし、特別に好きという事もなかったが、何故か身体が反射的に動いてしまった。

知り合いが奴隷のようにされているのにイラついたのか?

それとも空を心の中では想うところがあったのか分からなかったが、そういう状態にしている番長を許せなかった。


「翔!」

「翔くん!」


僕が突然飛び出し番長を殴りにいった為、止めようとする皆の叫び声が聞こえていた。

だけど僕にはもう番長しか見えていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ