207 沙羅激怒
「あんた達、誰に断って私達の愛の巣に入っているのよ」
沙羅は海賊達の前で、仁王立ちになり激怒して叫んでいた。
「でも、沙羅」
「大地、誰が呼び捨てにして良いと言った」
「はい、すいません」
「部屋の中の私達の部屋、勝手に入らなかったでしょうね」
沙羅の隣で空が静だが言葉にトゲがあるような言い方をしていた。
「そ、それは勿論…」
「本当に、健二くん」
「え、そ、それは…、ちょっと気になって覗いたかもしれない」
「あ・ん・た・た・ち~」
沙羅の怒りは最高潮に達し、そのまま一時間は説教していた。
今のファミリ達のレベルは、海賊達より高くなっているので、逆らえば全員病院送りに出来るほどの実力は持っていた。
僕は沙羅の剣幕に、あまりにも恐すぎて仲介に入れずにいた。
だいたいの原因は僕が勝手にディメンションルームに入れたのが悪いのだが、はっきり言って魔物よりも今の沙羅の方が恐ろしい。
海賊達に心の中で『ごめん、命が助かったから許してくれ』と思いながら、とばっちりを受けないように、彼女達の後ろで気配を消していたが、
「翔くんには、後でゆっくり話しましょう」
と沙羅に言われてしまい、
「はい」
とかしか言えず、そもそもディメンションルームは僕が作ったのに反論は出来ず、後で女性陣にこってりとしぼられた。
僕は精霊達にイルプレーヌの港の偵察をお願いしていた。
海賊達が居なくなり、海の安全が確保されたと感じれば、罠でなく本当の貴重品を船に載せ領主の船はやって来ると睨んでいた。
そして三バカと僕達は、大きなテントでこれからの事で話し合っていた。
「お前達、海賊達は暫くここで大人しくしていてくれ」
「翔、俺達は次の領主の船が来たら襲いかかるぞ」
「お前達、僕が居なかったら死んでいたんだぞ」
「大丈夫、今度はちゃんと作戦を考えるから」
「作戦失敗しているじゃないか、いい加減現実を見ろよ」
「これでも、俺達は歴史の勉強は誰にも負けないと思っている。
いろんな戦も、戦略や戦術を詳しく調べて、そこからいろんな事を学んだ」
「お前達、それでも相手の方が戦がうまければ、今回のように罠にかけるなんて朝飯前だと思う」
「だけど、次は…」
「次はって、今回で終わって居たんだぞ。
助けてやったんだから、今度は僕の指示にしたがってもらう」
「そんな」
「まず、ここで大人しくしてもらう」
「どのくらいなんだ、翔」
「そうだな、1ヶ月くらいか」
「1ヶ月も、引きこもり…、」
「大地、食料はあるか」
「一週間分は、確保しているけど」
「足りないな、それじゃ、神楽、茜、アナンタ、ルークで獲物を狩って来て欲しい。
あとは、海賊達の手伝いをしてくれ」
「翔様は、どうされるのですか」
「僕は、一度イルプレーヌの街に行ってディメンションルームの入り口を確保したいと思ってるんだけど」
「翔くん、それは危険なのでは」
「一人なら、何とか逃げられるだろうし、万が一の時はディメンションルームに逃げ込むさ」
ファミリの仲間達は、危険だから付いていくと言っていたが一人じゃないと、逆に逃げられなくなる事を理解してもらって僕は一人、イルプレーヌの街に戻ることにした。





