195 帰宅
僕は岩石地帯を、風のように駆け抜けていた。
まるで自分の体ではないような感じで、とても軽い。
レベルが200に上がり、身体能力が高くなり今までにない速さで進んでいた。
「待って下さい、翔様~」
「置いてかないで、ご主人様」
「ダ~リ~ン~」
アナンタは翼を広げ、羽ばたきながら飛んで来ているが、速さは遅く一番最後をゆっくり飛んでいる。
精霊達も、空を飛んで追いかけて来るが、僕の方が僅かに速いようだ。
精霊達のレベルは180、アナンタはレベル186まで上がっていた。
アナンタは、僕と一緒に試練を受けたから上がるのは当然と思ったが、精霊達もちゃんと上がっていた。
もしかすると、僕のファミリに入っている人は全員レベルが上がっているのではと期待しながら、早く皆に会いたい気持ちが先走り、走る速さを加速させていた。
「ご主人様、追い付かないです」
「待ってなのです、翔様」
「先にキャンピング馬車に行くから、あとから来いよ」
そう言うと、僕は全力で走り出した。
自分でも驚くくらい速くなっている。
大きな岩石を飛び越え、出会った魔物達を瞬時に切り裂き、直線的に走っていた。
マップ機能も復活していた。
やはり途中から精神の世界に入っていたのでマップ等役に立つ分けなかった。
だって自分は動かないから、場所が変わる訳でもないし、それに精神の世界でこのリング機能は使えないよう制御してあるみたいで、
本当の自分の底力のみで試練を受けさせる為だったらしい。
あっという間にキャンピング馬車が止まっている村に到着した。
行くときは何時間もかかったのに、来るときはほんの十分ほどで着いてしまった。
早く会いたいという気持ちが僕を急かしていた。
僕のマップ機能で皆、キャンピング馬車に居ることが分かっていた。
僕を見た瞬間、なんていうだろうか、そんな期待を胸に、キャンピング馬車の扉を開け、中に入って行く。
「ただいま」
あれ、誰もいない、いつも皆リビングで寛いでいるはずなのに、姿が見当たらなかった。
まだ寝ているのだろうか、僕は二階に上がり覗いて見ると、皆、寝込んで苦しんでいた。
「皆、どうしたんだ」
「あ、翔、くん」
「お帰り…」
「何があったんだ、しっかりしろ」
「私が話しますわ、幾分か皆よりはましなので、翔様」
「神楽、何があったんだ」
「実はこの三日の間に、レベルが急激に上がり体が付いていけず、筋肉疲労を起こして動けなくなってしまったのです。
私は元々レベルが高かったので、そこまでひどくないのですが、私と茜以外の皆が動けなくなり寝込んでしまっているのです」
「僕が一気にレベル上げた所為か、何か治す手段はないのか」
「人によって違いますが、一週間ほど安静にしていれば治るはずですから」
「そうか、皆、すまない。
僕の所為で…」
「気にしないで、翔くん。
お陰でレベル一気に上がったわよ。
これで足手まといにならないはずだから…」
「そうですよ、いろんなスキル覚えて、翔様のお役にたてるよう頑張りますわ」
「ありがとう、皆、何かしてほしい事、何かあるか」
「それでは、翔様、ひとつだけお願いしても良いですか」
「僕に出来る事なら」
「それじゃ、皆、動けず食事をあまり食べてませんので、食事の準備をお願いします」
「あ、ごめんね。
直ぐ食事の用意するから、あまり食べてないなら、お粥とかがいいかな」
「私はリゾットが食べたい」
「沙羅がそう言うならリゾットにするか」
「皆もそれでいいかな」
「どんな食べ物か分かりませんが、翔様が作ってくれる物なら何でも良いです」
「分かった待っていて」
僕は急いで料理の準備に取りかかり始めた頃、やっと精霊達がやって来た。
「ちょうど良かった、料理作るから手伝ってくれ」
「料理ですか、は~い手伝います」
「何作りますか」
「出来てからのお楽しみだね」
大量の食事を準備していた。
大食いの精霊達、アナンタがいるからな、早く作らないと皆、飢え死にしてしまいそうだな。
料理が出来上がった頃、見ていたかのようにアナンタが到着した。
「お腹すいた~」
「アナンタ、着いて第一声がそれか」
「だって体力使ってお腹空いたもん」
「料理は出来ているが、先に皆に料理を運んでくれないか」
「は~い、分かりました」
動けない者は、そのまま二階で食べて、僕とアナンタ、精霊達は外で食事を取ることにした。
一週間は動けないだろうから、その後でやること考えとかないといけないな。
大分時間かかっているから、いろいろと仕事が山積みとなってきた。
魔物の討伐、海賊の件、領主の件とたまっていた。
まあ、急いでも仕様がないから一週間は休むつもりでいるとしますか。
とりあえず魔物討伐クエストの報酬貰わないとな、そう思い村長宅へ向かった。





