194 竜人族の宴会
今晩は竜達の宴に参加していた。
ここにいる竜人族は少なく王竜を筆頭に20人の竜人族が暮らしていた。
ほとんどの知能の高い竜は、群れを作らず一匹で縄張りを作って暮らしているそうだ。
群れを作っている方が珍しいそうだ。
竜人族の料理は、豚や牛の丸焼きがほとんどで、料理らしい料理は作らないそうで、後は美味しいお酒があれば充分らしいが、試練のお礼も兼ねて僕は料理を作る事にした。
精霊達に手伝ってもらって、手慣れた手つきで料理を作っていく。
次々に出される料理に竜人族達は、舌鼓をうちながら、大いに盛り上がっていた。
「この料理はなんだ」
「人族の料理は、美味しいな」
「初めて食べたが、普段からこう言った物を食べているのか」
「こっそり人族の街に行くのも楽しいかも知れないな」
竜人族は、ほとんど移動せずに獲物を狩るときだけ外へと出かけるそうだ。
だから外部との干渉はないし、滅多に見ることはない。
確かに竜人族だと知れたら、聞いただけで逃げ出すのが当たり前だろう。
「翔殿も、こちらでお酒を飲みなさい」
「あ、はい、ありがとうございます」
料理も一通り終わったので、宴の方に参加していた。
「このお酒飲みやすいですね」
「そうだろう、竜人族に伝わる方法で作られたお酒だから旨くて当たり前だ」
そこへ王竜がやって来た。
「すまない、翔殿の隣を譲ってもらっていいか」
「これは王竜様、どうぞどうぞ」
「それでは翔殿、まずは一献」
「ありがとうございます、王竜様」
王竜はお酒を僕の盃に注ぎ、代わりに僕は王竜の盃にお酒を注ぎ返す。
「それでは翔殿、試練の達成おめでとう」
「ありがとうございます」
乾杯しながら、僕と王竜は盃に注がれたお酒を一気に飲み干した。
「翔殿、人族の料理を振る舞ってくれてありがとうございます」
「いえいえ、お口に合うか分かりませんでしたが」
「いつもは、丸ごと丸呑みにするか、今日みたいに丸焼きするしか無かったが、人族の料理というものは、とても美味ですね。
今までこんな美味しい物食べた事有りませんでした。
というか外の世界の事を知ろうとしなかっただけかも知れません。世界には、こんな美味しい料理が溢れているのに、アナンタが憧れるのが分かります」
「アナンタがどうして」
「はい、アナンタは幼い頃から他の竜人族とは違って、竜人族の掟より外の世界に憧れていました。
他の種族の生活や料理に関心を持って、いつも遠くから他の種族の暮らしを見ていて、いずれ何処かに行くか、または連れて行かれないかとても心配で、監視をつけてこの山から出さないようにしておいたのですが、いつの間にか逃げ出していて、必死で探しました。
すると翔殿が連れて居ることが分かり連れ戻そうと街へ行きましたが、アナンタの意志を尊重して翔殿に預けましたが、アナンタにとっては預けて正解だったかもしれませんね」
「お母さん、私の翔様に何の話してるのですか~」
「あら、いつの間に来たのかしらアナンタ」
「アナンタ、ちょっと酔っぱらい過ぎではないか」
「だって聞いて下さい、翔様、あの男どもが付きまとってくるの」
アナンタの来た方向を見ると、三人の竜人族がこちらを見て何やらボソボソと話をしていた。
「すいませんね、私達の仲間が…、あの者達も必死なのです。
ここに住む竜人族は数が少なく、女性は更に少ないので、添い遂げる相手を探して必死なのです。
アナンタは、私が言うのも何ですが私に似て美人だからモテるのでしょう。
外の世界に探しに行けば良いものを」
「アナンタは竜人族だから、竜人族と結婚しないのか」
「翔様!私を見捨てる気ですか、私は何処までも付いていきますから」
アナンタは僕の腕をわしづかみして離さなかった。
アナンタの成長した体がとても色っぽく、大きく膨らんだ胸が僕の腕に当たっていた。
僕はアナンタの胸に意識しないように、他の事で誤魔化そうとしたが、酔っ払っているアナンタは、更に色っぽく感じてしまった。
そこへ先程の三人の竜人族がやって来て、
「人族に竜人族の女は渡さない」
と言いながら、僕に突っかかってくる。
そこへ王竜が、
「私でも殺されかけたのに、貴方が束になっても勝てないわよ」
そう言うと三人は、また何やら相談し始め、すこすごと僕達から離れていった。
「情けない、例え負けるとしても奪い取るくらいの勇気がないとですね、翔殿」
「え、そ、そうですね」
「ダメですよ、お母さんにも翔様は渡しませんから」
「あら、連れないわね、そうねこのまま奪ってしまいましょうか」
「ダメダメダメ、私の翔様だから」
「いいじゃないの、減るものでもないし、今夜一緒に飲み明かしましょう。
さあ、翔殿、アナンタ、飲みなさい」
「お母さんには、負けないんだから」
三人でお酒の飲みあいをしていたら、いつの間にかその場で眠りに就いていた。
明日には、仲間に久しぶり会える事を期待しながら深い眠りについた。





