191 竜の試練3
アナンタは何度も王竜に向かって攻撃していた。
時間を稼いでくれているか、アナンタは尻尾で叩かれたり、王竜の牙で噛まれたり、爪で切り裂かれたり、竜同士の戦いなので、いくらアナンタが頑丈だといっても王竜の攻撃は塞げないようで、傷だらけ血だらけになりながらも、立ち向かっていた。
早くしないとアナンタが…、焦る気持ちが空回りしてなかなか集中出来ないでいた。
もう少し…、なるべく多く星の力を集めたい。
だが時間がない、魔法が発動出来る時点で直ぐにでも発動しないとアナンタが危ない。
アナンタはヨロヨロしながら、王竜への攻撃を行なっていた。
『もう止めてくれ、アナンタ。
もう良いから、逃げてくれ』
そう言いたかったが言えなかった。
必死で戦っているアナンタを止めることは出来なかった。
ただ自分の為なのかも知れない、アナンタが攻撃している間は、動けない僕に王竜の攻撃が来ないからかも知れない。
そしてやっと魔法が発動出来そうになった。
これで倒せなかったら、もう僕にはお手上げだな、頼むから倒れてくれ王竜。
「アナンタ、王竜から離れるんだ」
「はい~、ご主人様」
アナンタが離れたのを確認して魔法を発動させる。
『アルテメット・アステル』
王竜に向かって天井から光の柱が、何本も突き刺さり、地面からは土の柱が何本も突き刺さる。
王竜は苦しんでいるようで、咆哮を吠えた。
「ガォーーン」
辺り一面に響き渡り、大気も地面も回り一帯が振動していた。
先程の攻撃に、竜の咆哮で迷宮が崩れるのではないかと心配するくらい、揺れていた。
王竜の付近では、大気と大地がぶつかり合い、かなりの重圧がかかっているようで、王竜の傷が広がり大量の血が吹き出していた。
大気は白く輝く渦となり、大地は黒く漆黒の渦となり、巨大な地場が生まれていた。
やがて王竜を巻き込み、大気と大地は混ざりあい大きな爆発を起こした。
辺りは爆音と爆風で飛ばされた岩や砂などが多々飛んできていた。
そしていつの間にかアナンタも隣に来ていた。
辺りは砂埃で、何も見えなかった。
「やりましたね、ご主人様」
「本当に倒せたのか」
「あの攻撃に耐えたら、不死者としか言えません」
「不死者とか居るのか」
「はい、でも竜人族で不死者になるのは稀でその場合も姿は骨だけになっているはずですから、直ぐ分かるはずです」
「そうなのか、今回は疲れたな」
少しずつ手足の感覚が戻るのを確認しながら、辺りを確認していた。
先程の爆発で、迷宮が崩れないか、確認していたが、砂埃で全く見えなかった。
そして時間が経つにつれ、砂埃が薄れていき辺りが確認できるようになってきた。
何かが動いたような気がした。
「まさか…」
最悪の展開となった。
薄れゆく砂埃の中から、王竜が姿を現した。
王竜の体は傷だらけ血だらけでボロボロの体だったが、しっかりとした足取りでこちらに歩いて来ていた。
「よくぞ、ここまでの力を手にいれたものだな、だが、あと一歩及ばなかったな、次はこちらの番だな」
「あ、あ…」
僕は何も言葉に出来なかった。
もうここで終わる覚悟をしていた。
『ごめん、皆、もう会えそうにないや。
皆は何とか生き延びて、元の世界に帰ってくれ。
もう一度、皆に会いたかったな…』
僕は心の中でそう思っていた。
王竜の口がゆっくり大きくあいて、口の中で炎が渦巻いているのが見えた。
その炎が一気に吐き出された。
その瞬間、目の前に誰かが立ち塞がった。
アナンタだった。
「ご主人様は殺させません」
「アナンタ」
炎はアナンタと僕を巻き込み、灼熱の地獄となっていた。
「ごめん、アナンタ…」
僕は灼熱の炎に巻き込まれ、その場に倒れてからの記憶がなかった。
 





