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18 水の精霊 アルケー

城門を出て、まずは森の奥にある湖に向かっていた。

太陽が沈む方角に進んでいたから、西に向かって森の中を突き進んでいるはず、今回はミレナさんが同行しているので、沢山の獲物を狩るだろうと予測して、前回みたいに獲物を運ぶのに困らないように、前もって荷馬車を借りてきた。

だがその所為で、なるべく平坦で通りやすそうな場所を選んで進まないといけなかった。

荷馬車を借りてきた手前、沢山獲物を狩らないといけないのだが、ミレナさんは楽しそうに動き回るエアルと遊んでいた。


「見て見て、精霊ってさわれるんだよ」


ミレナさんの言葉に隼人が一言、


「見えないって!」


今のところ、見えるのは僕とミレナさんだけで他の者にはまだ見えなかった。


「ねぇねぇ、本当に湖に行くの?」


エアルが質問すると、ミレナさんが、


「獲物を狩りながら湖に行くけど、どうして?」


「あまり行きたくないって言うが、近づきたくないっていうか...、そ、そう、今、湖は危険なのよ!」


「何が危険なの?」


「そ、それは...、兎に角、危険なのよ!近づかない方が身の為なのよ」


「あれ~何だか湖に近づいたらいけない事でも有るのかな~。

この辺りに魔物なんて居ないはずだし、何かあってもこのミレナちゃんがいるから大丈夫、それにクエストもあるから湖には絶対行かないと。

それにこれはマスターの命令なのよ。

ね~、マスター」


僕に振られてしまった。


「そ、そうですね」


それからは何も言わず、しぶしぶ付いてくるエアル。

湖に着くまで、いろいろな獲物に遭遇したが、今回の狩りはミレナさん1人で狩ってるので、僕達は何もしなくても経験値が入ってくる。

全部、元世界にいた似たような動物だけど、鹿が三頭、ブタが二頭、闘牛二頭、小動物が二十数匹、ほんの小一時間程であっという間に獲物が狩れた。


ミレナさんは獲物を見つけるのも早いが、見つけると一瞬で狩ってしまう。

これはレベルの差だろうか?

ミレナさんのレベルを見ると141だった。

ステータスやスキルなどは分からないが凄いはずだ。


そして森の中を突き進むこと約2時間、やっと森の奥にある湖まで来ていた。

湖の大きさは、東京ドーム1個分くらいだろうか?

湖面は太陽の光に反射して輝き、湖の中を覗いて見ると透明度が高い所為か、かなり深いようだけど湖の底までちゃんとみえている。

大小様々な沢山の魚が優雅に泳いでいた。

森の雰囲気とは一変して湖付近だけ、なぜか清々《すがすが》しいというか空気が変わったように感じた。


ここでミレナさんが皆に指示を出した。


「さぁ、この辺りで良くイタズラされると言うことだから、何か手掛かりがないか調べて頂戴」


「何かないかって、何を調べれば良いのですか?」


「私達、そんな事を言われても、ど素人だから何を調べれば良いのか分かりません」


「う~ん、そうね。

まずは痕跡を調べるの、例えば地面に付いている足跡とか、この辺りで良くイタズラされるなら、この辺りをねぐらにしている可能性があるから、住みかになりそうな所を探すとか、イタズラする為の罠が仕掛けていないかとかを探すのよ。

分かった?」


「はい、分かりましたミレナさん」


皆で手分けして辺りを見回し、至る所を探し回るがこれといって何もない。

1時間ほど時間をかけて湖の周りをくまなく探すが犯人の痕跡すら見つけきれずにいた。

僕達は探し回り疲れてしまったので、少し休もうと皆で何気なにげに座り込み休憩する事になった。

僕は湖の方を何気にぼーっと見ていると何か中央に何か浮いているのに気がついた。


「あれ、何だろう?」


「ん、どこどこ?」


「ほら、湖の真ん中辺り」


「何も見えないけど?」


隼人が、答える。


「私にも、見えるけど」


ミレナさんが答えた。

そして紗耶香が、


「まさか、幽霊?」


すると祐太が慌てて木の裏へと隠れる。


「どうした、祐太」


「幽霊とか、僕、苦手なんだよ」


まさに、頭隠して尻隠さずの状態だった。


「こんな真昼に幽霊なんて違うだろ」


「だって、翔とミレナさんだけ見れるんでしょ」


「二人だけ見れるってことは、二人だけ呪われているんじゃないの」


「違うだろ、二人だけ見れるものといえば...」


「幽霊?」


「ちが~う!、精霊だろう」


ボケと突っ込みも、ほどほどにしてほしい。

沙羅が何かに気付いた。


「あ、確かに中央付近の水に波紋が出来てる」


「だんだん、波紋が近づいてくる」


僕から見ると何か人のようなものが、水面を歩くように近づいてくるのが見えていた。

段々と近づいてくる人のようなものは、少しずつその姿がはっきりとわかってくる。

幼女の姿で、髪は長く青い、白いワンピースを着ていて素足で水の上に立っていた。

僕の目の前まで来ると話を始めた。


「あら、エアリエル、今日は早いのね。

何して遊ぶ?あ、この人達にイタズラしたのね。

あたいも仲間に入れて一緒にイタズラして遊ぼう」


やっぱり原因は、エアルか!


「違うよ、私この人に付いてきただけだから」


エアルは僕の後ろに隠れ、顔だけ出して湖上の人らしき者をみつめていた。


「ふーん」


と言いながら、幼女は僕の顔をのぞき込む。

顔に近づいて来たので、思わず僕は顔をってしまったけど。


「あなた、あたいが見えている!?」


不味まずかったか。

仕方がない、とりあえず返事をするしかないか。


「ああ、見えているよ」


「やっぱり、エアリエル、自分ばかりずるくない?」


エアルが答える


「ダメよ、私のマスターだから...、絶対にダメダメ」


何の話になっているのだろう。

そこでミレナさんがうっとりさせながら、


「わぁ、風の精霊の次は水の精霊ウンディーネまで見れるなんて幸せ~」


水の精霊、この子が...。

ミレナさんも見た事ないようだけど、エアルの時のように風の力を感じるように、今は水の力を感じているのだろうか。


「エアリエル、誰なのですかこの人?」


「マスターの仲間のミレナさんよ」


「ふーん、あなたにも星力があるみたいけど、この人ほどじゃないわね。

あなた、名前は?」


「僕、翔と言います」


「翔くんね。

私は水の精霊ウンディーネのアルケーよ、よろしくね」


「ところで、星力とはなんですか?」


するとミレナさんが、


「星力と言うのは、読んでそのままだけど星の力のことね。

精霊力と大体同じで、星から借りられる力のことを言うわ。

精霊達も力をふるう時、星から力を借りていると言われているから精霊力の根本は星の力になる。

星がないと大地も空も水も、全て存在しない無になるから、私達の間ではそう言う風に教わったわ。

この力をどれだけ多く使えるかで、精霊が使える力が変わってくるの」


「そう言う事。あたいだけでもあたいよりも下っ端の水精霊を集めて力を振るう事は出来るわ。

でもあたいもエアリエルもまだまだ下っ端、だからあたい達の使える精霊達も少ないの、だから星力の大きい人のところに居れば、その分、星力を借りられて更に大きな力を使えるし精霊の力も増すの、あたいが居れば水の精霊魔法使えてお徳よ」


「アルケー、でも翔くんは予約済みだからね!」


「あら~、連れないわね~、友達でしょう。

あたいとエアリエルの仲じゃない。

それに一緒にいても星力が減るものでもないし、翔様だって水の力が使えるから便利になるんじゃないの?」


「でも~...」


エアルが何やら考えている。


「今までのあたい達の友情はどこにいったの?

一緒にいろいろやったじゃない、マスターにバラしてもいいの?」


「うっ!、わ、分かったわよ。

もう~仕様がないわね。

私が見つけたマスターなのに...。

それと私はエアルとマスターから呼ばれているから、これからはエアルと呼んで」


「と、言うことで、よろしくねマスター」


あれ、いつの間にファミリーに入ることになっているのだろうか?


「丁度いいじゃない、精霊魔法の水魔法も使えるようになるし、ねえ翔くん。

あ、でも、この湖は水精霊のアルケーが居なくても大丈夫?」


「大丈夫だよ、あたいが居なくてもまだ水の精霊は沢山いるから」

アルケーが答えた。


「それじゃ、翔くん、ファミリーに登録しなさい。

精霊なんて滅多めったに仲間に出来ないから、精霊の力、手に入れときなさい。

それに、イタズラの原因はこの二人みたいだから、居なくなれば他の人に迷惑がかからないでしょうから」


「はい、分かりました、ミレナさん」


と言って、僕はアルケーをファミリー承認する。


「よろしくね、マスターにエアル」


「よろしく、アルケー」


「これからもよろしくね」


「翔くん、精霊をファミリーに出来たけど、あまり精霊の嫌がることをすると嫌われて、逃げられるから気をつけてね。

それじゃ、イタズラの原因も解決したから、クエストも達成そろそろ帰りますか」


「ビッグボアーは、どうするのですか?」


「クエストも達成したし、獲物も沢山取れた。

ビックボアーなんて、そう急ぐことじゃないでしょう」


「でもビッグボアーが目的だから...」


「大丈夫、大丈夫、逃げやしないから、それにビッグボアーは滅多に現れないし何処にいるか分からないでしょう。

気長に獲物を狩りながら、ビッグボアーを探しましょ。

だから、今日はゆっくり休んで明日に備えなさい。

動く時は動く、休む時は休む、そうしないと疲れたまま戦って、命を落とすかも知れないわよ」


「分かりました」


僕は帰り支度をしながら、エアルとアルケーの方を見ると楽しく何やらおしゃべりしている。

やっぱり1人より、2人の方が仲間が居ればさびしくないよね。

僕も早く離ればなれになったクラスメイトを見つけないと、1人で寂しい思いをしているかもしれない。

なのに僕達はこんなにのんびりしていて良いのだろうか?

あせっても仕方ないさ、ミレナさんも言っていたじゃないか、そう自分に言い聞かせて自分を納得させていた。

ふと自分のレベルを見ると、レベル12冒険者になっていた。




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