174 案内役ラドン
「今回、竜の試練というのは、竜が成人になる為の試練で、人が試練を受けるなどという例外はないのだが、母が特例で試練を受けさせるというので案内役を承った。
翔様は、精霊の力を使わず、ご自身の力のみで試練を越えていただきたい」
「僕が断ったら」
「この辺りで、一気にレベル上げるには試練を受けた方が効率が良いと思いますが、断るというなら地道に経験値を稼ぐしかありませんな」
「精霊が使えなかったら、翔くんには無理じゃないの」
沙羅の言うとおり、今の僕は精霊達に任せっきりで、自分の実力では無いことは重々承知の上だが、精霊達無しに戦えるだろうか。
「大丈夫ですとは、言い切れないですが一階層ごとにクリアしていけば、試練を達成出来るようになってます。
但し、これは竜の場合で人がこの試練を受けた事はなく、何とも言えませんが私も付いて行きますので、万が一と言うことはないと思います」
「それでは翔様が危険なことにかわりないのでは」
「そうよそうよ、ミディアの言うとおり、そんな所にお一人では行かせられませんわ」
「翔、俺も付いて行くぞ」
「ダメです、翔様の試練ですので、翔様と私、そしてアナンタ、お前も試練受けるのだ」
「どうして私もなの」
「お前も試練を受ける年齢になったからだ。
これは母の指示でもあるからな」
「私はこのままで良いのだけど」
「つべこべ言わず、ありませんなお前も来ること」
「は~、わかりました~」
「ラドンさん、少し考えさせてもらっていいですか、いきなりそんな事言われても心の準備が出来ていないので」
「あまり時間がないので、一時間内でお願いしたい」
「一時間ですか、分かりました」
どうしようかと僕は悩んでいた。
確かにちょこちょこと魔物倒しても、たいした経験値にもならず、隠密部隊のリーダーに勝てるくらいレベル180まで何日かかるか分からなかった。
それよりは試練を受けて一気に上げた方が無難に思えてくる。
朝食の支度をしながら考えていてら、危うく料理を焦がすところだった。
朝食を食べながら、皆の意見を聞くことにした。
「私は絶対反対」
「どうして空」
「だってそんな危ない所に、精霊居なかったら、翔くんはただの人じゃないの、無理でしょ」
「はい、私も無理と思うのでやめて欲しいです。
だって私の給金が…」
「はいはい、ルナはいつもお金の事ばかりだな」
「あ、竜の試練では経験値と共にお金も結構ドロップしますよ」
「本当ですかラドンさん、翔様頑張りましょう」
結局、ルナはお金の事しか考えないようだった。
「拙者も行った方がいいと思うなり」
「神楽さんはどうしてですか」
「昨日のフレイムゴーレムでも経験値は沢山もらっているけど、次のレベルに上がるほど経験値をもらっていない。
それならば経験値の高い所で稼いだ方がいいなり」
「私も姉様と同意見です」
「茜さんも賛成っと」
「翔、お前はどうしたいんだ」
「ラウド、僕は皆で決め…、いや、僕の事だから僕が決めないと…。
僕は、皆に悪いけど、試練受けてみようと思う。
少しずつレベル上げても埒が明ないから、一気にレベル上げたいと思う。
皆を守れる強さ、それにファミリーの皆にも経験値入るはずだし受けようと思う」
「なら迷う必要はないなり。
後悔しないようにやりたいことやるだけなり」
「そうですね、ラドンさん案内お願いします」
「分かった、でも朝食食べてからでいいか」
「…、はい、どうぞ」
いつの間にか食卓の横に並んでいたラドンが返事をした。
僕とアナンタとラドンは出かける準備をし竜の試練に向けて出発した 。





