16 ミレナ
今日の成果をセレナさんに報告して自宅に戻り、夕食を取りながら今日の話で盛り上がっていた。
山羊は家の前の杭に紐で繋ぎ、黙々と家の前の雑草を食べてくれていた。
これから山羊のミルクを飲む為にも家族として大事に育てていかなくてはならない。
山羊小屋も必要だし、ニワトリも殺さず生け捕りにすれば、毎日、卵を食べられたかも知れないのに勿体ない事をしたと後悔していた。
次に見つけた時は生け捕りにしようと考えていた。
そして今晩の料理は勿論、今日捕ってきたニワトリもどき、料理は皆、あまり知らなかったので串で刺して焼くだけの焼き鳥になった。
「この世界でも、似たような動物いるんだね」
「異世界だから、ネッシーとか居そうだ」
「このニワトリの肉は、大きいし筋肉がついていたから硬いかと思ったけど普通のニワトリと同じ歯応えだね」
「あとは、味付けか」
「調味料が欲しいわね」
「料理のスキルとかあれば、もっと美味しくなるかも」
「スキルポイントが、余ったら振ってもいいね」
などと明るく振る舞っていたが、皆、内心いつ元の世界に戻れるか、この先どうなるのかとても不安に思ってるだろう。
自分は、こういう生活もありかなと思う。
食べるために狩りをして、その日をのんびりと暮らして行く。
人付き合いが苦手な僕は、誰も居ない山奥に1人で住もうかと、自給自足にちょっぴり憧れていた時もあった
でも今の生活は、電気がないとやっぱり不便だし、家族とも会えないままだし、どの道、帰り方がわからないから、この生活続けるしかないのだけど...。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「こんばんわー、まだ起きている?」
突然の訪問者はセレナさんだった。
「今日の狩りはお疲れ様、初日に大物を捕って来るなんて、将来が楽しみ~、流石、私の見込んだ人達だわ。
突然お邪魔したのは、まだ紹介してなかったから連れて来たんだよ。
さっき、街から帰ってきたばかりだけど、これがミレナよ」
「これって、物じゃないんだから...、こんばんわ、ミレナです。
皆、よろしくね」
皆とそれぞれ、挨拶をする。
すると、ミレナが僕の方をじっと見ている。
「へ~、この子がいきなり精霊魔法使った子」
「そうだよ、凄いでしょ」
セレナさんが答える。
「そうね、素質はなかなかありそうだけど実際見てみないと。
貴方、明日も狩りにいくの?」
「はい、ビックボアーを狩るまでは、毎日行くつもりです」
「よし、決めた。私も明日、暇だから一緒に狩りにいくわ」
「ミレナいいの、明日はのんびりするんじゃなかったの」
「いいのいいの、どうせやる事ないから、貴方いいでしょう?」
隼人が代表して答える。
「勿論、こちらからお願いします。
強い人がいると獲物を狩るのが楽になるので」
「まかせて、強い敵、狩りまくってレベル上げて挙げるから」
「調子に乗らないようにね」
「今日は挨拶に来ただけだから、じゃあ、また明日ね」
そう言うとセレナさんとミレナさんが帰っていった。
「俺達もそろそろ、寝ますか?」
「そうだね、おやすみ」
それぞれの部屋に戻っていく。
部屋で寝支度をしていると、突然エアリアルが話しかけてきた。
「あのね、マスター、森の奥に小さな湖があるのだけど、そこには近づかない方がいいと思うわ」
「どうして?」
「そ、それは...、危ないというか、呪われているというか、どうしてもよ!」
意味がよくわかないが、湖に近づいたら何かしらあるのだろうか。
まあ、なるべく近づかないようにするか。
「あ、そうだ。それとエアリエル」
「何?、マスター」
「名前エアリエルじゃ長すぎるから、エアルって呼んでいいかな」
「マスターがそう呼びたいのなら、私は構いませんけど」
「分かった。じゃあ、おやすみ、エアル」
「はい、お休みです。マスター」
明日こそは、ビックボアーが狩れますように、そう願いを込めて眠りについた。
 





