156 鼠人族チュー助
「ギルドでは、あまり情報聞けませんでしたね」
「翔殿の聞き方が悪いなり」
「え、す、すいません」
「冗談なり、規制がかかっているなら聞き出すのは無理なり」
「どうしましょうか」
「取り敢えず酒場に行ってみるなりか」
酒場を探しに街を散策していると、精霊達はまたいつの間にか居なくなっていた。
食べるだけ食べたら、何処かに飛んで行く習慣がついたようだ。
酒場を見つけ中に入っていく。
まだ昼間ということもあり、人気は少なく三組ほどの冒険者らしき人がいたので、イルプレーヌについて聞いてみるが、最初に、
「人に物を聞くにはただではダメだ」
といい酒を一杯奢らされて、挙げ句に何も知らないと、何の為に奢ったのか分からない。
他の二組も何も知らないようだった。
「直接、イルプレーヌに行って調べた方が早いですかね」
「ん~、そうするしかないなり」
「ちょっとそこのご主人、酒場で小耳に挟みましたが、イルプレーヌについて知りたいと…。」
そこにいたのは、ネズミ!、ではなく鼠人族だろう。
身長は1メートル、ネズミが二本足で立って服を着ているように見えた。
「何か知っているのか」
「いえ、まだ知りませんが何ならお調べしましょうか。
私は情報屋をやっているチュー助といいます。
お見知りおきを」
「それでチュー助さん、イルプレーヌについて調べられるの?」
「はい、依頼を受ければ調べて見せましょう」
「翔くん、ちょっと」
沙羅が僕の腕を引っ張る。
「チュー助さん、ちょっと待っててね」
僕達は、人気の少ない道の脇で作戦会議を始めた。
「翔くん、ちょっと怪しくない」
「沙羅さんの言うとおり、都合良すぎるのでは」
「沙羅殿とラウサージュ様の意見に賛成なり」
「確かに上手くいき過ぎているな」
「翔様、罠にかかって死刑とか止めてくださいよ」
「大丈夫、ルナ、そんな事にはならないから」
「そん時は、俺がぶっ飛ばしてやるから」
「ルーク、止めなさい。
翔様達の話に割り込まないの」
「だって姉ちゃん、やってみないと分からないじゃないか」
「そうだな、ルークの言うとおり、やってみないと分からないよな」
「翔くん…。」
「空、いや皆、大丈夫だから。
言っていなかったけど、僕のマップ機能には相手の動きが分かるんだ。
だからチュー助が何処にいるか、誰と会っているかは一目瞭然なんだ」
「それって、私達も分かっていたと言うことですか」
「ミディア、まあ、見ないようにはしているけど気になるときはみてるかなぁ」
「翔様~!」
「いや、別に悪気はないんだ。
そこは誤解ないように」
「いえ、安心しました」
「え」
「私達を気付かって、いつでも気配りを忘れず、ああ、ますます感激しました」
「あ、そうなの」
僕は、チュー助にイルプレーヌについてできる限り情報を集めるように依頼した。
前金として銀貨1枚を要求されたが、それくらいなら騙されたと思って捨ててもいい金額なので銀貨1枚渡した。
残りは成功報酬になるそうだ。
「それでは情報が集まりしだい連絡いたします」
「僕達はこの街で待ってたほうがいい?」
「いえ、大丈夫ですよ、何処にいても分かりますので、それではありがとうございます」
チュー助は人混みに紛れ、姿を消した。
マップ機能で確認しているが、街の人気のない所に向かっているようだ。
『あ、止まった』
そこには10人くらいの人がいるようだ。
仲間だろうか、全員に印をつけるとその仲間達は一斉に城門の外に出てイルプレーヌを目指しているようだ。
チュー助は、この街にいるようだ。
「今日はこの街で1泊するか」
「は~い、賛成」
「やった」
「翔様、私達買い物行って来ていいですか」
「ラウサージュ、行っていいけど、付いていかなくても大丈夫?」
「はい、大丈夫です。
だっていつでも、翔様が見ていてくださるから安心して買い物出来ます」
いつも見てるわけではないのだけど、買い物に付き合わなくていいのは大助かりだ。
「分かった、でも宿屋を決めた後にしてね」
「は~い」
まぁ、僕が居なくても景虎さんがいるから大丈夫か。
近くにあった宿屋を見つけ、そこに宿をとることにした。
女性達は、一斉に買い物に出掛けたが僕はのんびりと宿の1部屋で過ごすのでした。
久しぶりに1人を満喫していた。





