150 一夫多妻
僕達は、魔法学園の寮にあるラウサージャ達の部屋の前まで来ていた。
僕は部屋の扉をノックする。
『コン、コン、コン』
「はーい、ちょっと待ってください」
中から返事が返ってきた。
声からして沙羅だと思った。
扉がゆっくりと開き、中から姿を見せた人物、やっぱり沙羅だ。
「こんにちは」
「あ、翔くん」
そう言うと沙羅は、突然抱きついてきた。
「ちょっ、沙羅」
沙羅は、何も言わず強く抱きしめていた。
胸の感触が…、ずっとこうしていたいけど、回りの視線が痛い。
「ちょっと、ずるいご主人様」
「ダーリン、次、私ね」
「ご主人様、私も私も」
煩く叫んでいたのは、精霊達とアナンタだけだった。
他の女性達は、無言で見つめていた。
女性の無口が恐い、何を考えているのか全く分からないから、何か仲間外れにされているような、軽蔑されているような気分になる。
「沙羅」
僕は優しく声をかけてみる。
「あ、ごめんなさい。
会いたくても会えなかったから…。
その、つい」
沙羅は顔を赤らめながら、体裁を保とうとする姿がとても愛らしく思えた。
「沙羅さん、別に恥じる事はありません。
もう私達は家族と同じですから、翔様を支えながら一緒に頑張りましょう」
とミディアが沙羅に向かって話した。
「え、家族?」
僕は家族という言葉に、いつ家族になったんだ。
メニュー画面でファミリの欄を確認しても名前は出てきていない。
ミディアは話を続ける。
「貴族は一夫多妻が認められてますので、翔様が望めば何人でも、逆に翔様を好きになった人は婚姻を申請できます、翔様が許可するかは別ですが。
だから私は、いえ私達は翔様を独占しようとしませんので、私達皆を平等に愛してください」
突然の告白めいた言葉に、どう対応すればいいか分からなかった。
元の世界では二十歳もなってないのに、結婚の話なんて早くないか、僕はそう思っていた時部屋の中からラウサージュが現れて、
「分かりました、位ではナーガ国王女の私が第1夫人ですが、第1など順番は決めずに平等にしましょう。
いいですね、精霊達」
「はーい」
「私達は、そんなの気にしてないけどね」
っていうが、精霊達も夫人リストに入っているのか、見た目は人間なんだけど微妙な感じがする。
「それで、やはり一緒に行くつもりなのか」
「勿論、もう待ってなんていられないわ」
「僕は、安全な所で待っていて欲しいんだけど」
「嫌です」
二人にキッパリと断れた。
「仕様がないな」
僕は、2つの防護石を取り出し二人に渡す。
「危なくなりそうだったら、これを使ってくれ。
僕1人では守りきれるか分からないからな、あと影虎さんは?」
「ここにいるなり」
ラウサージュの後ろから、スッーと姿を表した。
流石、忍者だ。
「影虎さんにも女性達の護衛をよろしく」
「女性達の護衛なりか」
「はい、精霊達は大丈夫だろうから、あとの皆ですね」
「もう1人対象外がいるなり」
「え、」
守らなくても大丈夫な人だよね、強い人いたなあ、ラウサージュか沙羅が物凄く強くなっているとか、あり得ないよね
「影虎さん、誰ですか」
「茜なり」
「茜さんですか?」
意外なところをつかれた。
茜さんは秘書として雇っていたので、秘書の腕は認めていたが、強いのかと言われると疑問である。
「我の妹なり」
「え~!、妹」
「翔殿の護衛の任務になっているはずなり」
「護衛ですか、全く聞いてないですが」
「茜、どういうことなり」
「だって忍者という者は影からお守りする者、だから忍者としての本性を知られてはいけないと、いつも言われていたから」
「そうは言っても自分のお守りする主には、伝えないと分からないなり」
「だって…。」
「まあまあ、茜さんもこれからも護衛よろしくお願いします。
荷物はまとめているかな、王宮で暫く泊まるから」
姉妹喧嘩になりそうだったので、割って入って違う話題に切り替えた。
それにしても、茜さんが忍者だなんて気付かなかった。
今日は、もう遅いので王宮に泊まり、長旅の準備は明日から取りかかろうと思う。
王宮の料理だから、夕食はご馳走がでるだろうと期待しながら王宮へと戻った。





