15 狩り
森の中を歩いていると採集のスキルを取得した所為か、薬草や食材になる草などが意外と多く生えていたので驚いた。
そんな物や重要な物があるとゲーム画面のように点滅して知らせてくれる。
そこを集中して見ると名前や食べられる物なのかなど詳しい説明が表示してくれるので、鑑定というスキルは必要ないみたいだ。
山菜取りに出掛けた時、親から残して置かないと次また来た時、取れなくなるからと口を酸っぱくして言われたのを思いだし根こそぎ取らないように注意しながら採取し、獲物を探し進んでいく。
「森の中は、気持ちいいわね」
と言いながら、エアリエルは木と木の間を縫うように飛んでいた。
僕達は山羊を引き連れて、獲物を探しているがそう易々《やすやす》と見つかるものでもなかった。
僕達の気配を察知して逃げているのか、それとも元々、数が少ないのか分からなかったが、もっと奥の方まで行かないと居ないのではないのか、そう思いながら歩いていると何処かで聞き慣れた鳥の鳴き声がする。
「コッコッコッ、コケッコッコ、コケコッコ~」
「皆、静かに近くにいるよ!気をつけて!」
隼人が小声で話し、なるべく音を出さないように静かに声のする方に進んでいくと、そこには見た目はニワトリなのだが、大きさが高さ2メートルくらいある、かなりデカイ。
僕は杖を握る手が汗ばんでる事に気付き、服で手の汗を拭き取った。
攻撃する時に滑ったらいけないからな。
僕の武器は杖だから叩くという事しか出来ない。
弱らせる事は出来るだろうけど、殺す事は出来ないだろう。
ましてや、切りつけるとか出来ないので血を見ずに済むと思うと少しは安堵している自分がいる事に気付く。
「ニワトリだよね」
「外見はね」
「飼うには、無理な大きさよね」
「食べられるかなぁ」
「一応、鳥だから食べられるんじゃ」
「そんじゃ、狩るか」
山羊を近くの木に繋ぎ止め、ニワトリに気付かれないように全員で取り囲む為に移動し始めた。
ニワトリも気付いたらしく、威嚇なのか大きく羽根を広げ、羽ばたきしている。
「飛ばないよね?」
「ニワトリなら、少しぐらい飛ぶんじゃ」
「沙羅、弓で狙えるか?」
「やってみる」
沙羅が、弓を構えニワトリ目掛けて矢を放つ。
だが矢は弧を描きニワトリの手前に落ちる。
「沙羅、もう一度」
再度、矢を放つ。
放たれた矢は、弧を描きながらニワトリに向かって飛んでいく。
『ドス』
次は胴体に当たったが無反応、あまり効いてないみたいだ。
そして隼人がニワトリの前に飛び出し、剣を構える。
ニワトリも隼人を敵だと認識し、隼人の方を威嚇している。
「よし、今だ」
隼人が上手い事、囮の役割を果たし僕と祐太がニワトリの後ろから攻撃する。
「グェー!」
よし効いているみたいだ。
ニワトリの足が飛んでくるが、一撃入れて後方に逃げていたので当たらなかった。
後ろに気がいっているので、その隙に隼人が前方から剣を振り下ろす。
血が滴り落ちているがニワトリの体を伝って流れているという感じだった。
「浅いか?」
次は、右側から海斗と紗耶香が加わり攻撃する。
威嚇していた羽根の右側が動かなくなった。
僕も更に攻撃を加える。
と言っても杖しかもらってないので、杖で叩くしかないけど...。
前と後を交互に、そして弓の攻撃、何度目かでやっと倒れた。
幸いにも怪我一つしなかった。
「上手くいったな」
「作戦がよかった?」
「チームワークの勝利だね」
「で、この獲物どうする?」
「重過ぎて運べないよね」
「傭兵団に、連絡して馬車を用意いてもらうか?」
「そうだね、その間に鮮度が落ちないよう血抜きと、内臓を取り出さないと」
祐太は肉屋でバイトしていたらしく、血抜きをする為に巨大なニワトリを木に吊るし、テキパキとニワトリを解体していく。
僕達はその光景に慣れていないというか、見たく無かったので少し離れた所で見張りという名目で周りを警戒していた。
解体が終わり、この巨大なニワトリ、リングボックスにも入らないし自分達で運ぶのも困難だ。
傭兵団に連絡したら、直ぐに迎えが来てくれるそうだ。
馬車が来るまで暫く休む事にした。
せっかく手に入れた獲物を取られないように見張りながら、木に寄りかかり、皆で他愛もない話をしながら待っていると馬車がやって来た。
森の中までは入って来れないので、拠点を取り囲む城壁の周りまで来てもらった。
そこまでは男達4人で何とか運び、馬車に解体したニワトリを積み込んでいく。
「なかなかの大物が取れたな、もうすぐ日が暮れるから、そろそろ引き上げたらどうだ」
迎えに来た傭兵団の人が声をかけてきた。
「でもまだビックボアーが取れてないんですけど」
「そんな直ぐに見つかる物じゃないさ。
団長からは今日中とは、言われていないんだろう?」
「それはそうですが...」
「なら、今日の狩りはこの鳥で十分じゃないか。
それに暗くなると森は危なくなるから、日が暮れるまでに戻るのが鉄則だぞ」
「そうだね、ビックボアーはまだだけど夜になると、何も見えないから危ないし今日は引き上げるか」
今日の獲物は2匹、レベルは皆1つずつ上がっていた。
ゲームみたいにレベルがすぐ上がればいいのに、現実はそう簡単にいかなかった。
僕達は迎えに来た団員の言うとおり、日が暮れる前に迎えの馬車と一緒に拠点へと戻った。





