148 王都
「では、行ってきます」
領主邸の前には、見送りに来てくれいるセレナさん姉妹、ムラサメさん、騎士団の皆がいる。
「翔くん、気をつけて行ってくるのよ。
まだ白銀騎士団のメンバーなんだから、失敗してもここに生きて戻って来るのよ。
それに…」
セレナさんは、途中で言葉を詰まらせて、それ以上話すことはなかった。
何を言いたかったのか聞きたかったけど、僕は何も言えなかった。
「拙者も修業に付いて行きたいけど、クエストがたまって行けないでござる。
この次、暇になったら付いていくでござる」
「翔くん、私もゆっくりと喋りたかったけど、戻った時に旅の話聞かせてね」
「分かりました、ミレナさん。
それじゃ、暫く会えませんがまた来ます。
行ってきます」
「いってらっしゃい」
皆が手を振ったり、叫んだりと騒ぐ中、馬車を発進させる。
僕はセレナさん達が見えなくなるまで、見つめていた。
これからの旅、何が起こるか分からないので、もしかしたらもう戻って来れないかも知れない。
その姿を、景色を最後まで目に焼き付けていた。
城門をくぐり抜け、王都への街道を進んでいく。
ここから、王都まで馬車で2~3時間程だろうか。
またのんびりとした時間が過ぎて行く。
街道を見ていて気付いたのだが、サンピースからフルールリルまでの街道に比べて道幅がかなり広い、倍くらいあるのではないか。
街道はキチンと舗装されており、馬車の振動は来るが地面のでこぼこによる衝撃はほとんどかかった。
王都に近いということもあって、人や馬車が途切れることなく続いている。
4車線道路みたいに片側2車線で、人や速度の遅い物は道路の端を歩き、馬車等の比較的早い速度の物は真ん中付近を走行している。
あと荷馬車のかなり大きい物が、数多くすれ違う。
荷物を一杯詰め込んで運んでいるのだろう。
何度も運ぶよりは、一度に運んだ方がコストがかからなくて良いのだろうけど、その為には、回りの警護をキチンとしないと盗賊や魔
物に襲われたりするだろうから気を付けないと。
参考になることばかりあり、一度には無理だから少しずつ改善していけばいいか、まぁ、戻ってからのことだな
少しうたた寝をしていたようで、あっという間に王都に着いた。
早速、王宮に行こうかと思ったが、アナンタのお腹の音が聞こえたので、少し早いが昼食を取ることにした。
昼食を取り街を散策しながら王宮へと目指す。
物や食べ物等、ほとんどの物がサンピースと同じだった。
王都の物資がサンピースにまで流れているのだろうか、それならそのままフルールイルまで運べれば、もっと街全体が潤うだろうか。
王宮で受付を済ませ、待合室で待っているとラウージャが扉を開け現れた。
「翔、意外と早く来たな」
「約束の7日が過ぎたからな、そろそろ出来た頃だと思って来てみた」
「ああ、昨日完成したばかりだ。
最高傑作になったそうだぞ」
「それは楽しみだな、馬車は何処にあるんだ」
「工場地区の馬車工場にある。
今から、行ってみるか」
「みてみたいからな」
「よし、ではちょっと仕事片付けてから行くか」
30分ほど待ってラウージャが仕事を片付けてやって来た。
馬車工場まで徒歩10分ほどの所だったので、みんなで歩いて移動する。
「ここだ」
一軒の店に止まる。
建物は大きく三階建てで木造、あじわいのある雰囲気というが築100年くらい経っているような古くささが出ていた。
看板にはモデナ馬車と書かれており、外から見えるショーウインドウには、馬車のミニチュアの模型が50台ほど置かれていた。
扉を開けて中に入るとドアについてある呼び鈴がお客が来たことを合図する。
『カランカラン』
「いらっしゃいませ、あ、これはこれは王子様」
「馬車が出来たと連絡が来たから見に来た」
「そうですか、それはそれはわざわざありがとうございます。
それでは工房へ案内させて頂きます」
受付の人から、店の奥へと案内される。
奥が工房へになっているようだ。
工房に入ると広い…。
無駄に広いような気がする。
広さは学校の体育館くらいか、天井もかなり高い、その中に五台の馬車が止まっており、修理や改造を行っているらしい。
天井が高いのは、たまに超特大の馬車がいるそうで、このくらいの高さがないと入らないそうだ。
「それでラウージャ、僕達の馬車はどれだ」
「あ、すいません。一番奥でございます」
ラウージャに聞いたのに、店員さんが慌てて答えた。
一番奥の馬車を見た瞬間出た言葉が
「デカッ」
これ馬車なの、と思えるくらい大きく、大きさは観光バスと同じくらいの大きさか、これ大きすぎて乗って回れないのでと思う。
工房の人が説明してくれるそうなので、説明を聞くことにした。





