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146 サンピース

僕達を乗せた馬車は、サンピースを目指して進んでいた。

周りは長閑のどかな草原地帯で、木々がチラホラと立っているだけの平野で山の麓まで続いていた。

時々、吹く突風が木々や草花を大きく揺らしていた。

突風というか、精霊達四人が駆け抜けているだけだが、普通の人には見えないので突風としか思えないだろう。


長閑な風景を見ながら、のんびりと馬車に揺られていた。


「ご主人様、お腹すいた」


「え」


アナンタの言葉に耳を疑った。

出発する少し前に、朝食を済ませてから出発して、まだ一時間もっていないと思うのだが。


「アナンタ、さっき食べたばかりじゃないか」


「だってお腹がすくんだもの、仕様がないでしょ」


「食べ過ぎると太るぞ」


「大丈夫、大丈夫、今成長期だから」


「はぁ~」


ため息が出てしまう。

お腹すいたと五月蝿いので、リングボックスに入れていた肉を取り出し、アナンタに与えた。


ここ最近、本当に食べ過ぎなので太らないか心配だったが体型は今までと、さほど変わらないようだったが食べた物はどこに消えているのか不思議だった。


このペースで行くとサンピースには昼過ぎには到着するだろうか。

馬車の中は、何もすることがない。

座っているしかないので、兎に角、暇だ。

空は初級合成の本を読んでいる。

ミディアも本を読んでいる。

覗いて見ると、難しい字が並んでいるのが見えた。

何でも作法の勉強をしているらしいが、まあ…、何も言うことはないな。

エマは、馬車の隅で一人目を閉じている。

寝ているのだろうか。

ルークは、その隣で外の風景を見ている。

ルークの尻尾がピョコピョコと動いていたので、余程よほど機嫌がいいんだろうなと後ろから見ていた。


茜さんは、木の荷箱を机変わりにして、何やらノートにペンを走らせていた。

秘書としての仕事だろうか、こんな時までやらなくても、と言いたいけど他にやることもないからね。


ルナさんは、裁縫をやっているようだ。

この乗り心地の悪い揺れる馬車で、よく出来るなと感心して見ていた。


暇だ、僕は何をしようかと悩んでいた。

座ってるだけで、この狭い馬車の中、出来ることは限られて来るけど…。


何も浮かばない時は、寝るのが一番。

着いたら起こしてと言って眠りにつく。


「ご主人様、着きましたよ」


「ん、あ」


まだ眠いが、起こされてしまったからには起きないと。


「もうすぐでサンピースに着きますよ」


「ありがとう」


僕は馬車から覗いて見て驚いた。

城壁も立派になっていたが、広さも倍以上になっていた。

この短期間に、ここまでやれるなんて凄いなと感心していた。

城門から中に入ると、人の多さにびっくりする。

領主が変わるだけでこれだけ変わるのか、領主の政策次第ということか。


街の区分もきちんと別れており、商業区、工業区、住宅区、そして中央に行政区と別れていた。

城門から直ぐに商業区があり、直線で中央の行政区まで行ける大きな道が通っている。

道幅は広く10メートルくらいだろうか、その脇に所々、大きな木が植えられており、綺麗な並木道になっていた。

そして道の両側には、ずらりと並んだ商店街、馬車と人の通る道は別れていたが、人も馬車も多過ぎてなかなか進まなかったので、馬車と別れて僕達は歩いて商店街を見て回った。


というか、女性達が見てみたいと言い出したので、降りて見て回ることになった。

最初、僕だけ馬車と一緒に領主邸に行くつもりだったが、やはり女性達に捕まって一緒に行くことになってしまった。


これからショッピングに付き合わされると思うと地獄だった。

周りから見ると美少女ばかりなので、羨ましく思えるだろうけど。


今日は、この街で一泊だなと覚悟を決め、お店を一件一件見て回った。

まるでお祭りでもあっているのでと思えるほど人の多さ、そんな中を見て回ると意外と珍しい物が売られていたりした。


洋服などもデザイン製のあるものから、職業用の服まで数多くある。

魔法の本やスキルの本、見たことのない食べ物などもある。


「これから長旅になるから、必要な物は買っていいよ」


「本当に翔くん」


「ああ、空、好きな物買って。

皆も好きな物買っていいよ。

お金はあるから」


「翔様、私達は雇用人なので別ですよね」


「そんな事はないよ、ルナさんも、茜さんも好きな物買っていいよ」


「やった~、ありがとう翔様」


そう言うとルナさんは、僕の頬にキスをした。


「あぁ~」


皆からのブーイングが起きたが、このくらい役得がないと、そのあと精霊達からキスされそうになるが、取り敢えず逃げた。


そしてアナンタがまた


「お腹すいた」


といい始めた。

お昼ご飯がまだだったので、近くの食堂に入った。

メニューも見たことのない物ばかりだったが、どうせ精霊達、アナンタはかなり食べるから適当に沢山注文した。

肉料理、野菜料理がほとんどだが、なかには魚料理まであった。

見たこともない魚で、川魚ではないようだ。

海魚だろうか、この辺りに海はないはずなので、遠くから運んで来ているのだろうか。

料理を堪能した僕達は、ショッピングへと戻る。

それぞれ洋服、日用品、食材、調味料、本、武器に回復薬等を買いリングボックスへと詰め込んでいく。

いくら何でも入るといっても、許容量は決まっているので、考えて入れないといけない。

因みに僕が別に持っている賢者の指輪は、何処まで入るかわからない。

かなり入れているが、まだまだ入りそうだ。

無制限に入れられるのではと思えるくらい詰め込んでいる。


買い物がやっと終わり、領主邸と向かうことにした。

城門から行政区まで一キロ程の距離か、遠くに見えてしまう。

まだ続くお店を見ながら歩いていく。


「やっと着いた」


「馬車で来れば良かったね」


「買い物すると言ったからでは」


「そうだっけ」


何か納得がいかない僕だったが、このくらい気にしないと自分に言い聞かせていた。


領主邸のドアを叩くとメイドが現れ、応接室に通される。

暫く待っていると扉が開き、中へと入ってきた人物はエレナさんだった。


「こんにちは、翔くん、翔士爵と呼んだ方がいいかしら」


「いえ、翔でいいですよ、エレナ女准男爵様」


「堅苦しいことは止めて、エレナでいいわ」


「わかりました」


「生憎、今私しかいないけど…、セレナ、ミレナ、ムラサメ、ボンゴの部隊がそれぞれクエストを受けて回って、資金を稼いでいるわ。

私は、戦闘に向いてないから留守番、資金を効率よく使って街の発展に使用しているだけ。

夕方には、帰って来るからゆっくりしていきなさい」


「それじゃ、遠慮なく」


街を発展させているのは、エレナさんか。

どうすればいいか、聞きたいけど二番煎じにしても発展しないよな、場所も違うし何より資金だな、白銀騎士団のメンバーは皆レベル100以上だから、高クエスト受けて、かなりの金額手に入れているんだろうなと思う。


まだ夕方まで時間があったので、日が暮れるまで街を見て回ることにした。


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