144 出発まで1日
不意に目が覚めた。
まだ夜明けまでには、かなり時間があるみたいだったが、僕は早朝の散歩へと出掛けていた。
何気に歩いていたつもりだったが、城壁の上へと足が向いていた。
この季節、まだ朝方は肌寒く、もう一枚羽織って来れば良かったと後悔しながら城壁を登り始める。
登っているうちに、体温が上昇し城壁を登りきった時には、そんなに寒さを感じなくなっていた。
城壁の上から街を見下ろすと、最初の頃と比べると大きく様変わりしている。
変わらない物もある。
僕達の住んでいた家、今は孤児院のような感じになっているけど、そして傭兵団本部、今は僕の領主邸になっている。
その隣にある大きな大木、長老の住む家だ。
そう言えば、最初、取り柄のない役立たずと言われたっけ。
城壁の上から街を眺めていると、いろいろな事を思い出す。
最初、この世界に来た時、戦争のど真ん中に居たっけ、よく死ななかったと不思議でならない。
そこでセレナさんに出会って助けてもらった。
あのエルフ三姉妹は美人だよな、特にセレナさん、一瞬見ただけで恋に落ちそうだった。
と言うか恋に落ちているかも知れない。
そこから、この街まで来たんだよな。
セレナさんに出会わなければ、ここに居ないだろうし、隼人達とも会えなかったはず。
そう言えば、宴会の時にセレナさんにボコボコにされたっけ。
何回ボコボコにされたっけ、いつか勝てる日が来るのかなぁ。
勝てたら、何か約束してたような気がしたが気のせいか。
いろいろ会ったよなぁ、明日には出発して暫くは帰れないはずだから、この景色を目に焼き付けておかないと、明日はついでにセレナさん達に挨拶しとかないとね。
そして僕は瞑想を始める。
日が登り初め、周りが明るくなってくると人々の往来が激しくなってくる。
街の外の畑に向かうものです狩りに行くもの、冒険者だろうかパーティーで出かけるもの、家の建設、道路の舗装、いろいろな音が混じりあい、街全体が賑わい出す。
僕は、街の事をそれぞれの部門に指示をして、全てを任せることにした。
というか、丸投げした。
あと、その内、学校や図書館など作るつもりでイマリさんに託した。
僕は、明日の出発のために買い出しをして、荷造りを始めていた。





