136 残り5日
今朝早くエリスさんが訪ねてきて、だいたいの井戸の設置場所が確認できたということだったので、領主室で街の地図を広げ確認する。
「子供達の話では、こことここ…、全部で8ヶ所に必要ということでした」
「早いですね、流石エリスさん」
「子供達が頑張りましたから」
「それでは、8ヶ所とこっちの外れにも水場がないから、ここにも井戸を掘るとして、取り敢えず10ヵ所作ればいいかなぁ」
「翔様、井戸を掘るとしてもかなりの労力がいるのではないでしょうか」
「大丈夫です、精霊達に手伝ってもらいますから」
早速、井戸堀へと出かける。
といっても、僕は何もしないけど…。
アルケーに街中まで通した地下水を更に井戸の設置場所まで伸ばして貰う。
エルダに地下水のある位置まで掘って貰い、ウェスタに土を高温の炎で焼いてもらい、掘った穴が崩れないようにしてもらった。
エアルとアナンタには、今のところ出番がないので、その辺で遊んでもらっている。
昼には、10ヶ所すべての井戸が完成し、あとは水を汲む道具だけど手押しポンプなどなかったので、昔風に大工に頼んで井戸に矢倉
を組み、滑車を付けて紐を通し両端にバケツを付ければ完成。
そのうち手押しポンプに変えるか、風車で汲み上げるのも味わいがあっていいかなぁ。
時間もないから、今はこれでいいか。
お昼時になっていたので、支部に帰りお昼ご飯を食べていた時、ギルドから連絡が来て輝光石が全部売れたと言うことだった。
大きさ、光度、魔力の通り安さなどで金額が変わるそうだが、平均して一つ金120枚、全部で金貨12000枚で売れたらしい。
そして明日にもギルド支部の立ち上げの件で話がしたいと言うことで来るらしい。
かなり高額で売れたので、暫くは資金は大丈夫だろう。
僕はひとりでニヤケていた。
そんな時、ドアをノックする音がした。
「どうぞ」
ドアから入ってきたのは、年配の男女と若い女性が一人。
「え~っと、御用は何でしょうか」
「自分達はラウージャ殿下の指示を受け、翔殿を補佐せよと言われましたので来ました」
見た感じ、かなり年上という印象を受けた。
男性は白髪頭に白い髭を生やして、鍛えあげられた筋肉が服の上からでも見えそうなイメージだった。
女性の方は、白髪頭にメガネをかけて厳しそうな顔をしている
怒らせると怖そうだと思った。
最後は若い女性、金髪でメガネをかけ、可愛い系の顔をしている。
三人家族かなぁと思ったけど、顔はあまり似てないような気がする。
「初めまして、翔といいます。
ラウージャの指示ということは、お金の管理をしてもらえるのですか」
「はい、私はラーカス、こちらがアメリア私達二人は夫婦で50歳で国の役所を退職し、隠居暮らしをしておりましたが、ラウージャ
殿下がどうしても補佐してくれと頼まれましたので、こちらにお伺いしました。
私が事務を担当、妻のアメリアが財務を担当します」
「私は、茜といいます。
翔様の秘書として働かせて頂きますのでよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
あと僕のことは、様をつけなくていいから気軽に話してください。
僕が何も分からないので、ほとんどお任せしてしまうと思いますがよろしくお願いします」
「部屋は空いてる部屋を適当に使ってください。
仕事はいつから初めますか」
「ありがとうございます。
仕事は明日からでも始めたいと思います」
「事務室、財務室も必要ですよね」
「そうですね」
「あと必要な物とかあれば言ってくださいね」
「ありがとうございます。
それでは、今日は荷物の片付けをさせていただきますので失礼します」
三人は部屋を出ていった。
王都から来た元役人と言うことだったが、国の息のかかった密偵と考えていいだろう。
深く考えすぎかも知れないが、この街の資金、経済が丸分かりとなってしまうが、疑われることはやっていないから大丈夫だろう。
あまり信用し過ぎないように注意すべきか、僕は午後から見回りに出かける。
騎士団達が、きちんと見回っているお陰か、犯罪はほとんど起きていない。
『ありがとう騎士団、資金に余裕ができたら賃金上げるからな』と思った。
作ったばかりの井戸を早速使っている人を見かけた。
街の外まで、水を汲みに行くよりはかなり便利になっただろう。
日が暮れるまで街を見て回り、あとは何をすればいいのか考えながら支部へと帰宅した。





