134 それぞれの道
夕方にはフルールイルに着いた。
行くときは、ロケットのように飛んで行き、帰りは馬車、どちらも体に負担がかかった。
ロケットで翔ぶときは、風圧に耐えきれず体がガタガタになった。
レベルが上がれば、頑丈になり風圧にも耐えられるだろうか。
馬車は、時間がかかるし何よりお尻が痛くなってくる。
これが一番耐えられない。
今、ラウージャに馬車の改造を頼んでいるが、それが完成すれば少しは技術進歩できるはず…たぶん。
城門で見張りの騎士に挨拶を交わし街へと入っていく。
街中では、もう少し日が暮れそうになっているが、金づちで叩く音、木を切る音、至るところからまだ建築している音が響いていた。
「お帰り、翔」
「隼人、何しているんだ」
「今、見回り兼お嬢様方の買い物付き合いさ」
「大変だな、で、女性達は?」
「店の中」
隼人とは無言で指を店の方に向け、疲れた顔でため息をついていた。
かなり待たされているのだろう。
女性の買い物は長いからなぁ、隼人には悪いけど僕でなくて良かった。
その時、店から女性達が出てきた。
空、紗耶香、エマ、ルナ、ミディアがいた。
「あ、翔くん?帰ってきたんだ」
「お帰り翔くん」
「翔様、お帰りなさい」
エマは、女性だけだとよく喋っているようだが、僕の前では女性達の後ろに隠れ無口になってしまう。
嫌われているのだろうか。
「姉さん!」
後ろから突然声がした。
声のする方に振り返ると、獣人の子供が飛び出していた。
「ルーク」
声を出すと同時にエマも飛び出して、お互い抱き合っていた。
あれ、獣人の子供が探していたのエマだったのか。
それより、初めてエマの声を聞いたような気がした。
まあ、話は後で聞くとして連れてきた人達を、孤児院化している僕達の住んでいた家に住まわせ、ルークと呼ばれた獣人は支部にあるエマの部屋で一緒に住まわせることにした。
夕食を済ませ、これからの事を皆で話し合いをする事になった。
「資金は、輝光石を売ったお金で何とかなりそうだから」
「翔くん、それ本当?」
「ああ、まだどれくらいになるかはわからないけど、暫くは大丈夫だと思う」
「それなら翔くん、私やりたいことあるんだけど」
「紗耶香、何やりたいんだ」
「実は、カフェをやりたくて、それもメイドカフェ」
「メイドカフェ?この世界で儲かるのかよ」
「儲かるのかどうかはわからないけど、メイドカフェで働きたかったから」
「いいんじゃないの、この世界にないから意外といけるんじゃ」
「それなら、俺も傭兵団作ろうかと思っているんだ」
「潤、どうして元イザカロの騎士団に戻ればいいんじゃないか」
「操られていたといえ、騎士団を裏切ってしまったから、居づらくてな。
それに、この街にも冒険者が多くなってきたから、誰かが纏めないといけないと思って」
「そうだな、騎士団と隼人達だけだと人数が足りないかも知れないな。
よし、潤、任せた」
「翔くん、私もやりたいことあって」
「空も…」
「私、戦いも出来ないから、皆が帰って来るのを待つしかないの、だから皆の役にたちたくて、回復薬とか作れたらと思って合成や薬草、勉強して合成屋なんかできたら良いなあと思ってるだけど」
「空のやりたいこと有るならやってくれ、期待してるから」
「ありがとう」
「エマとルークはどうする」
ルークが答える
「姉さん、見つかったから村に帰りたい」
「村は何処にあるの」
「村は、火の国の山奥にあるんだ」
「火の国か、通り道だな」
「翔、何処かに行くのか」
「ああ、一週間後に水の街から火の国を通って千年の森に行くことになっている。
だから、その時エマとルークを送り届けようかと思うんだけど」
「そうね、別れるのは辛いけど、やっぱり生まれた場所がいいよね」
「あの~、私も連れていって欲しいのですが」
「ルナ、どうして」
「私も一度、お母さんに会いに行こうかと思うんだ。
村を追い出されたけど、お母さんに迷惑かけてばかりだったから」
「そうだな、分かった一緒につれていくよ。
それじゃ、あとは街のことはイマリさんに任せて、街の警備をアンディ騎士団長に、隼人と博は一週間ルークを鍛えてくれ、
あとは任せた」
僕は一週間、出来る限り街を発展するため見て回り、必要な物を優先的に作っていこうと思い、今日も1日が過ぎていった。





