132 再会
僕達は、王都に到着し先に向かった元貴族の家族をマッブで、何処に居るのか確認していた。
城門から入って直ぐの宿屋の中に居ることが分かったので、宿屋へと向かった。
「すいません、お待たせしました」
「あ、先程は助けていただきありがとうございました」
「いえ、もう少し早く着いていたら…」
「護衛には申し訳無いですが、私達家族は助かりましたから、それはそうとお連れが増えたようですが」
「はい、盗賊に捕まっていたので、一緒に連れてきました。
今日は、王都に泊まり明日出発しようと思ってます」
「わかりました、お名前聞いて無かったのでお名前お聞きして宜しいでしょうか」
「僕は翔と言います」
「翔さん…、もしかして翔士爵様ですか」
「はい」
「ああ、お逢いできて光栄です。
元イマリ国王を預かっている方と伺っています。
噂通り素晴らしい方ですね。
私はラーデン、妻のコリン、息子のカロン、娘のリリスです。
お見知りおきを」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
先にこの人達の服や日用品を買いに行ってきますので、夜にこの宿屋で待ち合わせしましょう」
「わかりました、また夜にでも」
僕達は、早速市場に出かけ服や日用品を買い、一度宿屋に捕まった人達を休ませ、一人ラウージャに会いに王宮へと向かった。
自室にいるらしく、僕は直接尋ねて見るとラウージャの回りに秘書官らしき人が三人付きっきりで忙しそうにしていた。
机の上には、山積みにされた書類の山、それら逃げられないように目を通しサインをしていた。
「すまない、翔、尋ねて来たのに」
「いや、忙しい時にすまない」
「急にどうしたんだ」
「馬車の件、どうなったかなと思って」
「ああ、大体ほぼ完成しているんだが、動力をどうするかが問題なんだが、いろいろ付けていたら、かなりの重量になってな、
馬だと8頭で引っ張っらないといけなくなるから、魔力で動かそうかと思っているんだが、聖霊石は何とかなるんだが輝光石が無くてな、
最低でも直経30センチ位は必要で、この大きさだと滅多に出回らないし、あったとしてもとても高価で買えるかどうか」
「これでいいか」
僕は、アナンタが見つけた特大サイズの輝光石を取り出し、机の上に置く。
「これをどこで」
ラウージャ、秘書官とも特大サイズに驚いていた。
「たまたま、掘っていたら出てきた」
「これならいけるか」
ラウージャは、秘書官の一人に輝光石を渡し指示を出す。
「10日、いや一週間待ってくれ」
「わかった、それで値段は」
「それについて何だが、実は頼みがあるんだが」
「なんだ、また厄介事か」
「まあ、その、そんなところだ。
内密な話になるが、実は今回行く予定になっている水の街イルプレーヌの件何だが、今回イザカロ国が攻めてきた時、領主のプノス子爵が援軍要請をしたのにも関わらず、援軍を出さなかったんだ。
何でも、海賊が暴れて為その対応に追われ、援軍が出せなかったそうなのだが、実際はどうなのか、極秘で調べてほしいままんだ」
「そんな事、影龍に任せればいいんじゃないか」
「影には、別の仕事を頼んでいる」
「まあ、ついでだからやってみるけど、出来るかどうかわからいよ」
「ああ、頼むよ」
「わかった、また一週間後に来るよ」
僕は王宮をあとにした。
ついでだから、魔法学校の寮に寄っていこうかな、そう思い寮へと向かう。
この時間だと、授業は終わっているはずだから、部屋に戻っているはず。
僕は驚かそうと、部屋のドアをノックする。
以前、いきなり開けて気まずい雰囲気になったので、ちゃんとノックしないと…。
「は~い、ちょっと待ってください」
中から声がする。
声からして沙羅だと思った。
ドアがゆっくり開く。
「こんにちは」
「あ、翔くん」
そう言うと沙羅は、僕に抱きついてきた。
感動的な久しぶりの再開ではなく、この前送り届けたばかりだったが、何故か長く会っていなかった気持ちになる。
「沙羅、元気にしていた?」
沙羅は抱きついた体を話ながら、
「うん」
と呟いた。
僕は部屋の中に入ると、ラウサージュがソファーで寛いでいた。
「ただいま」
僕の声に驚き、強盗か泥棒が来たのかと思ったのか、凄い勢いで飛び上がった。
「ごめん、驚いた」
「あ、翔くん」
ラウサージュも沙羅と同じ反応で抱きついてきた。
それを見ていた沙羅も一緒に抱きついてきた。
「この前、別れたばかりだろう。
そんなに泣かないで」
「だって、だって」
二人して泣いていた。
暫くの間、そのままの状態で立ち尽くしていた。
短い時間なのか、長い時間なのか、まるで時間が止まったような気がした。
ずっとこのままでいたい、離れたくない、そう思ってしまう、が、もう一人の僕がそれを打ち消す。
距離をおかないと、大切な人が危険な目にあってしまう。
そう思い、二人を引き離した。
「今日は、王都に用があったからついで寄ってみたんだ。
二人の顔が見たくなって」
「翔くん、何用できたの」
「今、馬車の改造を頼んでいるのと、ラウージャに頼まれ事かな」
「また、危険な事に突っ込むの」
僕は何も言えなかった。
「あのね、ラウサージュとかんがえたのだけど、魔法学校を一時中退して、翔くんに付いていこうと思うの」
「え」
いきなり付いてくるだって、魔法学校にいれば安全だと…、安全な所にいて欲しい。
危険な目に合わせることは出来ない、だから…、
「翔くんと離れて暮らすのは耐えられないの、知らない間に死んでいたなんて考えられない」
「だから、私達は翔くんと一緒にいくことにしました」
僕は考えてみるが、もし断っても無理やり僕の跡を追いかけてくるだろう。
もしそうなったら、僕の知らない間に二人が危険な目にあってしまう。
それなら、いっそ一緒に連れていった方が目が届くから安心か…。
「もう一度…、今日は宿屋に泊まって明日フルールイルに戻る。
そして一週間後にまた王都に来るから、その時返事するよ」
別れるのは辛いが、そう言うと僕は立ち上がり部屋をあとにした。
どうした方がいいのか、全然分からなかった。
安全な所にいて欲しいのが半分、一緒にいたいと思うのが半分、自分自身、優柔不断だなと感じながら宿屋に戻った。





