131 盗賊洞窟
森の中を風のように駆け抜けていた。
間もなく人がいる場所にたどり着くはずだが…。
スピードを落とし、回りに気付かれないように注意しながら進むと、『いた』絶壁の岩石に空いた洞窟に、見張りと思われる人が二人、あとは中にいるのかなぁ。
マップで確認すると、洞窟の中に盗賊と思われる者が三人居る。
他は、捕まっているのか。
盗賊は、全部で五人、まず見張りを中に気付かれないように倒さないと、僕は小声で指示を出す。
「エアル、アルケー、入り口の盗賊を中に気付かれないように倒してくれ」
「了解済ましたら」
「は~い」
精霊の二人は、見えないように姿を消し盗賊へと近づいていく。
それぞれを同時に襲いかかる。
エアルは、突風を起こし盗賊の一人を飛ばし、離れた所でカマイタチで切り刻み倒す、アルケーは盗賊の回りに水を集め一気に水で盗賊を包み込み溺れさせる。
「よし、あとは中の三人だけ」
だが人質を取られると厄介なので、僕はどうしようかと考えていたら、中にいた盗賊の一人が外へと向かってきた。
様子を伺っていると、見張りの二人が居ないことに気にもせずに、森の中に入っていき、木の前に立つと用を足していた。
僕はその隙を付いて背後に回り、剣で一突きして、素早く片付けた。
あと二人、洞窟に近づき中の様子を伺うが、奥が深く入り口から中の様子が見えなかった。
僕は意を決して洞窟の中に踏み込んでいく。
中はとても暗かったのでスキル暗視を発動すると、回りが明るくなり昼間と変わらないくらいの明るさになった。
気配を断ち、少しずつ奥へと進んでいくと、盗賊達の笑い声が聞こえた。
見えるところまで来ると、盗賊二人は酒を酌み交わし騒いでいた。
盗賊達の後ろには、捕まっている人達が8人、女性、子供ばかりで先程の街道の襲撃のように襲い、金品と女、子供を略奪したに違いないと思った。
女、子供は手足をロープで縛られ、逃げられないように全員を一本のロープで結んでいた。
「エルダ、底なし沼」
「あい」
盗賊達の座っていた地面が突然液状化して、男達をしずめていく。
男達は、酔っぱらっていた為、自分達が沈んでいることに中々気付かないでいたが、気付いた時には既に半分まで地面に沈んでいた。
盗賊達も驚いていたが、回りにいる捕まっている人達も驚いていた。
盗賊達は、何とか抜け出そうとじたばたしているが逆に沈む速度が早くなっていた。
青ざめた顔のまま、沈んでいく盗賊達、自業自得であると割りきり、そのまま地面覗くと中に吸い込まれていった。
吸い込まれたの確認したあと、僕は顔を出し、助けに来たことを伝えた。
一人一人、縄をほどいていきながら、どうして捕まっていたのかを聞いていたら、やはり馬車が襲われ、ここに連れられてきたと言うことだった。
他の男達や傭兵は、盗賊に殺され命を落としたとのことだった。
これからどうするのか尋ねてみたら、行く宛がないそうなので、説明をしてフルールイルに連れて行くことにした。
勿論、奴隷なんかにはしないと言って、一度王都に用があるので、王都に寄ってから出発する事を伝えた。
皆を引き連れて王都まで歩いて行く。
全員、服がボロボロになっているので、買い直す必要があった。
換金するために王都市に来たのに、お金がドンドン出ていくような気がしてならない。
ふと、捕まっている人達を見ると中に獣人の子供が混じっているのを見つけた。
「あれ、君は獣人じゃないの」
「だから何」
「いや、獣人って強いと言われているから、何で捕まっているのかなぁと思って」
「俺だって、もう少し大きくなれば強くなるんだ」
「そうじゃなく、親は一緒じゃないの」
「俺は強いから、一人旅していたんだ」
強い割には、捕まっていたけど…、突っ込みたかったけど話が進まないのでスルーした。
「何故、一人旅をしているの」
「それは、強くなる為と姉を探しているんだ」
「姉?」
「村から突然居なくなったんだ。
村の回りの森で薬草を取りに行くと行ったまま帰ってこないんだ。
だから俺は、姉を探す旅に出たんだが、ここの街道でいきなり襲われて、洞窟に連れていかれたんだ」
なるほど、ここで馬車を襲い、高く売れる人物は奴隷として売るつもりだったのか、ということは分かっていて買う仲介者がいると言うことだな。
後でラウージャに報告しとくか。
今日は、元貴族と合流して王都に泊まった方が良さそうだな。
明日、服や日用品を買いながら、輝光石を売るか。
馬車も借りないと、フルールイルまでたどり着けないだろう。
そうなのかおもいながら、盗賊が集めた財宝を手に入れ、王都へと歩き始めた。





