127 神器
僕は支部の直ぐ近くにある大木の前まで来ていた。
前に来たとき、かなり蹴落とされたので、長老の所に行くのはあまり気が進まなかった。
大木の裏手に回り、ドアを開けて中に入ると、護衛だろうかそれともメイド代わりなのか四人のエルフ達が各々作業していた。
僕が入ってきたことに気が付くと、一人のエルフが長老のいる上まで案内してくれた。
長老のいる部屋に入ると、いつものように三人のエルフ達が待ち構えていた。
「お久しぶりです」
「良く来た、まあ、座りなさい」
「はい」
僕は三長老の前に用意されていた座布団の上に座った。
「それにしても、見違えるほど強くなったもんだ」
「それで呼び出した理由は…」
「翔殿、その前にいろいろ聞きたいことあるのではないか」
「それでは、まずこの指輪について」
「フム、そこまで詳しくは分からないが、その指輪を賢者の指輪と言う。
神が作ったとも、賢者が作ったとも言われているが、定かではない」
「神様って居るのですか」
「いる。
この世界のどこかに、または誰も行ったことのない空の遥か上に住んでいると言われるが、見た者はいない。
そして、賢者の指輪を含め、この世界に七つの神器があると言われる」
「七つの神器…」
「その神器を集めると、神に匹敵する力を手に入れることが出来る」
「他の神器は、何処に有るのですか」
「それは分からない。
ただ注意して欲しいのは、誰もが賢者の指輪を狙っていると言うことじゃ、だから出来れば見えないよう隠しなさい」
「そうですね、気をつけます」
「そこでじゃ、呼んだのはハイエルフのいる古代の森を訪ねるのじゃ。
そこで神器について詳しく聞くのじゃ、そして、翔殿の力をきちんと制御出来るようにしてくるのじゃ」
「僕の力…、精霊達の力では、なくですか」
「翔殿の力じゃ、自分が特別だと気付いていないようだが、普通、精霊使いは一人につき1~2属性しか覚えることが出来ない。
水と火は、相反するから、どちらかしか覚えることは出来ないはずなのに、翔殿は4属性を従えている。
常識的に、あり得ない。
その事も踏まえて聞いてくるのじゃ」
「しかし、今は街の再建が優先で資金集めをしないと…」
「でも資金が集まらないと」
「その通りです」
「翔殿なら、簡単」
「簡単?」
「魔獣は、どうやって生まれているか知ってるいるか」
「ん~、自然に…」
「ちが~う!
聖霊石に命が吹き込まれ、魔獣になるのだ。
で、魔獣が生まれやすいのは、何処かわかるか」
「えっ~と、魔獣が多くいる場所ってことですね。
あ、ダンジョンですか」
「そうじゃ、翔殿は確かダンジョンキュレーターだったはず」
「はい」
「ダンジョンは、魔獣が増えすぎないように制御されているが、魔獣を増やして狩るもよし、魔獣を作成するために聖霊石が作られた時点で魔獣を作らず、聖霊石を貯めて売れば、少しは財源になるのではないか」
『確かにその手があったが、そこまでの財源は期待出来ないが、無いよりはましか』
ダンジョンを手に入れていたが、すっかり忘れていた。
レベルアップにもちょうどいいし、狩りに行くか。
「ありがとうございます。
財源を確保してからハイエルフに会いに行きたいと思いますが、ハイエルフは何処に住んでいるのですか」
「ハイエルフは千年の森に暮らしている」
あれ、誰かが言っていたような気がしたが誰だったかな
「千年の森は、遠いですか」
「ああ、かなり遠い。
元イザカロ国の先、ネヒロ帝国を通った方が近いが、イザカロ国がなくなった今、お互いが緊張状態になり通行が困難になっている。
だから、遠回りだがナーガ国の南東にある水の街から、海を渡り火の国を通り千年の森へいくのじゃ」
「海、この世界にも海が有るのですか」
「ある。
果てしなく、どこまで繋がっているかも分からないほど広い」
この世界の海を見てみたいと思いながら、まずはダンジョンに行ってみることにした。
長老との話を終え、支部に戻ってきた僕は、早速ダンジョンに向かう為に精霊達とアナンタを連れて行くことにした。





