123 剣舞
朝早く、日が昇る前に目が覚めた。
昨日のことが夢のように思えたが、夢ではなかった。
隣ではセレナさんが木に寄りかかり眠っていた。
セレナさんの顔を覗いていると、また変な気を起こしてしまいそうなので、その場を離れ、朝の瞑想の為に城壁の上へと登った。
『シュッ、シュッ』
城壁の上から聴こえてきたのは、剣を振る音。
誰かが、剣の練習をしているようだ。
まだ暗闇の中、剣を振る音だけが響いていた。
目を凝らして辺りを確認すると、
『いた』
一人、剣舞のように軽やかに舞い、剣で切り裂き、突いたり、あまりにも美しく思わず見とれてしまっていた。
暫くすると、向こうもこちらに気付いたのか剣舞を止め、こちらに近づいてくる。
「あ、ミレナさんか」
「あ、は無いでしょう。
誰と勘違いしてるのかなぁ」
「いえ、そんなつもりは…、あまりにも剣捌きが美しかったので見とれていました」
「ありがとう、翔くん。
ところで何をしているのかなぁ、翔くんは」
「僕は、朝の瞑想をしようと思って城壁に登って来ました」
「そうなの、なら一緒に瞑想しようか」
僕とミレナさんは、日が山から出てくるまで瞑想を行った。
その頃になると人々が動きだし、活気が溢れだしてくる。
「サンピースへの引っ越しが終わるまでは、いつでも会えるけど、引っ越しが終わったら暫く会えなくなるね、翔くん」
「いつでも会いに行きますから、ミレナさんも会いに来て下さい」
「そうね、口うるさい長老達は、ここに置いていくから会いに来ないと文句言われるからね」
「そうですね」
僕とミレナさんは、にこやかな笑顔を返して別れた。
城壁を降りると、皆、朝食の準備で右往左往していた。
僕も手伝おうとしたが、領主にはさせられないと言って断られた。
これからどうするか、考えないといけないが、軍師や参謀が居れば任せられるのに、そう思いながら朝食を取る。
一人ボーッとしながら回りの景色を見ていた。





