117 ゴブリン討伐
馬車の外を、ボーと眺めていた。
今日はとても天気良い、時々吹く風は木々を揺らし、心地のよい風が吹いている。
こんなにのんびりとした時間は、いつ以来だろうか。
流れ行く景色をただ眺めているだけだった。
そんな時、何処からかブザーの音のようなものが聞こえてくる。
『ブー、ブー、ブー』
音の発生源を探して、辺りを見回すが他の皆には聴こえてないようだった。
よく確認してみると、耳から聴こえると言うよりは頭の中で鳴り響いていた。
『あ、』
マップ画面に赤い点滅が映っていた。
僕のレベルが上がり、マップ機能の性能が上がったようだ。
ゴブリンが21匹、レベルはだいたいがレベル50位だ。
敵の名前とレベルまで見れるようになって、とても便利に進化している。
マップ画面の下の方にテロップが流れている。
『なになに』
名前とレベルが分かるのは、今までに出会った者だけと書いてあった。
『未確認の魔物は分からないのか』
と思ったがこれはこれで便利か。
マップを広範囲にして、僕達の拠点の方に移動して拡大する。
青と白が混ざりあい、どうなっているのか分からないが、分類が出来そうなので、その中から白銀騎士団を選択する。
それでも多いな、緑色で分類しとくか、白銀騎士団を緑色で表示、まだごちゃごちゃしているから、『いた』セレナさんを見つけ黄色
に分類、セレナさんだけ黄色で表示されている。
『おお、凄い便利、これなら僕が何処に居ても、誰が何処にいるか直ぐ分かる』
と遊んでいるうちに敵が近いてくる。
そう言っても、まだ1キロ位先だけどね。
僕は剣を取り出し、戦闘準備にとりかかる。
「どうした翔、いきなり」
「隼人、ゴブリンが近づいて来てる」
「何!、何処から来るんだ」
「進路の左の山から来る」
皆は緊張が走る。
馬車を止め、回りの騎士達にゴブリンが来ていることを伝え、馬車を守るように陣形を帰る。
「ここは僕達、騎士達が行こうか」
潤が声をかけてくる。
「いや、ここは僕が行くよ」
「翔、俺に行かせてくれ」
そう言ってきたのは隼人だった。
「今回、何もしてないし、俺にも出来ることを見せときたい」
僕は隼人のレベルを確認すると、78まで上がっていた。
いつの間に、こんなにレベルが上がっているんだ。
余程、頑張ったんだろうなと感じ、
「隼人、お前の力を見せてくれ、でも危なくなったら手助けするぞ」
「ありがとう翔、でもゴブリンなら俺一人で十分だ」
そう言って馬車を飛び降り、幅広い両刃の両手剣を背中に刺した鞘から抜き剣を構える。
剣は、とても長くて大きかった。
暫くすると、前方の街道からゴブリンが現れ、こちらに向かってやってくる。
それを見た隼人は、
「ウォーー」
と叫び声をあげながら、ゴブリンに向かって走り出す。
ゴブリン達とぶつかり合う手前で、隼人は剣を振りかぶり、野球のスイングみたいに、剣を横にスイングする。
「竜激波」
スキルだろうか、スイングした剣からゴブリンに向かって衝撃波が飛ぶ。
先頭の七~八匹のゴブリンが倒れたが、致命傷にはなっていない。
後ろから来たゴブリンが倒れたゴブリンを越えて襲いかかる。
「竜骨舞」
隼人は、舞を踊るというよりは独楽のようにくるくる回りながら、ゴブリンを切り裂いていく。
「竜瀑布」
剣がゴブリンに触れた瞬間、爆発が起こりゴブリンを吹き飛ばしていく。
『隼人、強くなったな』
僕は心の底からそう思う。
あとスキルは、人それぞれ違うのだろうか、それとも職業で変わってくるものか、それが気になった。
ゴブリン達を15匹ほど倒して、あと6匹、もう時間の問題だった。
剣を振りかぶり、力一杯振り下ろす。
ゴブリンは真二つになり、そのまま剣に遠心力を加えて、次の敵を回転しながら横に真二つにした。
次は下から上に振り上げるように切り裂いた。
残り三匹は、突然逃げ出した。
ヤバイ、ゴブリンは、倒してしまわないと…。
そう思っていたら、隼人が体勢を低く構え、剣を居合い抜きのような構えをとった。
「竜爪刃」
隼人は、剣を下から上に、回転しながら上から下へ、そして最後に回転しながら下から横に切った。
三本の飛んで行く刃が、それぞれゴブリンに命中し、真二つにしていく。
「ふうっ、これで終わり」
僕達は、隼人に馬車ごと近づき、
「強くなったな、隼人」
「見直したわ、隼人くん」
などと誉めまくっていた。
「いや~、それほどでも」
隼人は、顔を赤く染め照れていた。
「隼人、ドロップアイテム取らないと」
「お、そうだった」
隼人がドロップアイテム拾っている間に、別の騎士団が現れた。
「きみ達が、ゴブリンを討伐してくれたのか」
「はい、今さっきですが」
「済まない、感謝する。
実は、はぐれたゴブリン部隊を発見し、討伐しようとしたけれど、半数がこちらの方に逃げ出したんた。
街の人達を傷つけたら…、そう思いいそいで駆けつけたんだ」
「この辺りはゴブリン多いの?」
「はい、討伐部隊が編成されて巡回しているのですが、ゴブリン大部隊の生き残りがいまして、この広大な森に潜んでいるのです」
「そうなのですか」
「後で、ハムレット着いたら騎士駐在所に寄ってください。
討伐手数料が貰えますので」
そう言って騎士団は巡回に戻って行った。
僕達も、日が落ちる前にハムレット着きたかったので、そうそうに立ち去りハムレットを目指した。





