102 軍義
日が落ち始め、白銀騎士の軍義というか飲み会が始まった。
セレナさんが立ち上がり話を始めた
「皆、食事をしながらで良いから聞いて、大雑把に今回の戦について説明するわ。
今回の作戦は、攻撃を受けたハムレットを奪還する事にあるわ、その為に王都から4騎士団が、そしてこのサボの街から
4騎士団が挟撃する形で攻めることになるわ。
現在、ハムレットにいる敵の数は約10万、ほとんどが魔獣兵でゴブリンや、オークがほとんど、イサカロ国の騎士団は二つの騎士団のみ確認できているわ。
これに対して我が国全騎士団合わせて一万二千、敵の10分の1しかいない。
ゴブリンや、オークは問題ないが、問題なのはメニュー欄が使えないので、ハムレット付近での戦闘は、手持ちの武器、道具しか使えない。
そこで騎士団がハムレットを攻めている間に、別動隊に敵の妨害装置を破壊して貰おうと思ってる。
その役をムラサメと翔くんにやってもらおうと思うわ」
「僕ですか?」
「ええ、今この中で魔法が使えるのは、精霊達を率いている翔くんだけなの、だから忍びのムラサメと、さっきの腕を見込んでお願いしたいわ」
「僕にできるでしょうか」
「翔くんなら出来るというか、翔くんにしか出来ないことだから…」
「翔くん、一緒に頑張るでござる」
「ムラサメさんは、重要な役割にプレッシャーを感じないのですか」
「やれるだけやるだけでござる。
頑張っても出来ないときは出来ないでござる」
「何だが、さっぱりしていますね」
「そうでござるか」
僕は重要な任務に緊張してしまう。
もし破壊に失敗してしまったら、自力で倒すしかないセレナさん達が最悪全滅してしまう可能性もある。
誰かに替わってもらいたい気持ちが込み上げてくる。
セレナさんの大まかな作戦の指示が終わり、いつも通り宴会が始まる。
「翔、俺も一緒に行っていいか」
声をかけてきたのは、潤だった。
「俺なら、内部の構造とか回りの地理とか分かるから付いていった方が良くないか」
「潤、それはありがたいがお前、見張られているの分かっているのか」
「ああ、だからこそ味方で有ることを示したいんだが」
「それは無理だな、見張り人は一緒に連れて行って裏切ると思うだろう。
だから、潤、悪いけど連れていけない」
「私達は?もう待っているのは嫌なの、今回のように見てない所で何かあったら耐えられない」
ラウサージュが代表して声をかけてくる。
そこにいたのは、空、沙羅、ラウサージュだった。
「連れていけない…。
空、沙羅、ラウサージュが傷つくところを見たくないし、最悪死ぬかもしれない。
そんな所を、僕は見たくないんだ。
連れて行っても、何も出来ないだろう。
逆に人質に取られたら、大変な事になる。
今は、魔法学校で魔術の勉強してくれ」
「今、戦争中で魔法学校は休校よ、生徒達は皆予備軍として参加しているわ」
「それなら尚更、安全な後方で補助役をしてくれ。
頼むから、これ以上は…」
僕は言葉に詰まった。
女性達も、それ以上は黙り込み何も言わなかった。
「潤、隼人、女性達を守ってくれ」
「翔、分かった」
「当たり前だろう、帰ってくるの待っているからな。
帰って来なかったら、全員貰うからな」
「隼人には、やらないよ」
僕は、思い残しがないように、腹一杯飲み食いした。
寝る宿も、テントも無かったので、皆、火を囲んで地べたに藁をしき野宿だった。
いつもなら、夜遅くまでワイワイと話をしているのだが、今日は何も言わず皆眠りについていた。
明日はムラサメさんと朝早くに出発する予定になっていたけど、精霊達は連れて行くとして、アナンタは、まだ子供なので気付かれないように置いていこうと思った。





