天竜族の里
「戻ったのか、翔」
奥からやって来たのはサフラン王子だった。
「はい、無事に戻ってきました」
「それでここから脱出する方法は見つかったのか?」
「いやいや、それよりはお宝だろう。
なあ、翔。
勿論、お宝を沢山貰って来たのだろう」
僕とサフラン王子との話に割って入ってくる隼人。
何様のつもりだ。
相手は王子なんだぞ。普通なら口も聞けない国のトップのご子息様だぞ。
少しは敬意をはらってほしい。
「宝なんてある訳ないだろう」
「そんな事を言って…、本当は貰ったんだろう?」
確かに脛当てを貰ったから、貰っていないといえば嘘になるが、そんな話をしているとミランダが、
「引きこもりの天竜族にお宝が有る訳ないだろう。
自分達が毎日食べるだけで精一杯の生活。
私はそんな生活が嫌になって、外に出てみたかったのです」
ミランダが言うと納得してしまう。
確かに都会から見ると田舎暮らしに憧れてしまうけど、田舎に住んでいる人は都会に憧れを持ってしまう。
きっと僕が天竜族の里の暮らしに憧れを持っているのは今だけで、実際、住んで見るとそれほどまで住みたいと思わないのかも知れない。
やはり、人は自分の生まれた故郷に住むのが1番良いのかも知れない。
今は帰りたいと思っても帰れないけど、帰れるものなら早く帰りたいと願っていた。





