天竜族の里
「さあ、準備は整ったわよ。
とっとと行くわよ」
あれ、親子の別れってこんなものでいいのか?
もう会えないかも知れないのに…。
「どうして、そんなにあっさりしているんだ?」
「ん?何のこと?」
「もう会えないかも知れないのに、そんな別れで良いのか?」
「えっ、そんな事ないわよ。
いつでも会えるし」
「この空間に来ようと思ってもなかなか来ることは難しいだろう」
「あら、そんな事ないわよ。
いつでも来れるし」
「まさか、この空間にも抜け道が有るのか」
「まぁ、抜け道もあるけど、わざわざそんな所を通ったら時間かかるし無駄じゃない。
だから、いつでも帰ってこれるように異空間魔法で繋げられるから、何処にいても直ぐに帰れるから大丈夫」
「それなら僕じゃなくても、一人で世界を回れば良かったじゃないのか?」
「それは親が許してくれなかったの。
誰か強い人の付き添いがあれば、許可してくれるって…、だからお母様とカケをしたの」
「カケ?」
「そう、もし翔さんがこの天竜族の里まで来ることが出来たら、翔さんと一緒に世界を回って良いと」
「もし、僕がここまで来れなかったら?」
「そこまでの男と言う事で諦めましたわ」
これは一体、何処までが策略なのだろうか?
帝国艦隊に囲まれ逃げ道を失った。
逃げ道は巨大な積乱雲しかなかった。
でもそれを決めたのはサフラン王子。
別に操られている風には見えなかった。
ここに帝国艦隊が集まったは、たまたま?
そして積乱雲に突っ込んだのも、たまたま?
強風、雷雨の中を耐えて風の壁を通れたのは、たまたま?
まさか全部策略なのかと考えてしまう。
僕達は上手く呼び寄せられたのか?
分からない事ばかりで頭が混乱してしまう。
この事は取り敢えず忘れよう。
考えれば考えるほどドツボに嵌りそうだから。





