凱斗の偽彼女Ⅱ
今回は少し短めです、申し訳ない・・・。
「凱斗のバカッ!・・・」
校門近くでいい放たれる葵の容赦無い攻撃が、炸裂する。
香澄が来てから不機嫌の一途を辿る一方の楓花、葵、紅葉は凱斗の話す事をことごとく無視し、その凱斗の話を香澄が拾い、二人は盛りがありそれに三人はまたもや怒りだし、というのを繰り返していた。
と、そこへ・・・。
「君が朝桐凱斗君?」
今からくぐる校門から出てきたのは身長が低めの小柄な女子生徒。
名札の所に付いている学年を表すバッチに3の数字がある為、凱斗の二個上にあたる三年の生徒だろう。
本当に高校生?という程小柄なその体格からは三年生とは思えない。
「えっと、そうですけど」
凱斗が足を止め、その女子生徒の質問に答えると、前にいた三人と横にいる香澄も足を止めた。
身長の低さに思わずタメ口で話す所だったが、名札をチラッと横目で見て、あわてて敬語に変換する。
「君、今僕の名札を見て、敬語に変えたよね?」
ムッと頬を膨らませ、凱斗の顔を覗き込む女子生徒。
凱斗は首を横に振るがその女子生徒のジト目は最後の最後まで凱斗を捉えている。
「はぁ、まぁいいや、僕の名前は日香里千鶴この学校の新聞部の部長だ」
部長という言葉を強調したいのか、未だに成長しきっていない胸を張り、自己紹介をした。
「それで、新聞部の部長さんが俺になんの用です?」
「実はね、今回の新聞の記事を君にしたいんだよ」
「えっ、俺!?」
実の所、凱斗の通っているここ、島桜高校の新聞は町でもかなり人気で毎回楽しみにしている人達が島桜の生徒の他、学校の外の人も楽しみするほどクオリティが高い事で有名なのだ。
そしてその高いクオリティは部長である千鶴の影響が強い。
そんな大勢の人が見る島桜の新聞に自分が記事なるのはかなり凄い事なのだ。
「今回の記事の内容はね、君の彼女さんとのラブラブな数日間に密着した記事を書こうと思うんだ」
「・・・・彼女?」
自分の事を記事にしてもらえるのは、非常に名誉な事だと嬉しかったのだが、凱斗は記事の内容を知り、テンションがずんずんと下がっていく。
「ねぇ、凱斗君は彼女いるの?ねぇ、どうゆうこと?」
凱斗の腕をつねるながら目だけが笑っていない笑顔で問う香澄。
前で話だけ聞いていた三人も急に冷たいオーラが放たれる。
「いやいや、俺彼女なんていないですよ?」
「じゃあ、この写真はどうゆうことなのかな?」
千鶴がニヤニヤとした表情で提示した写真に写っていたのは、昨日香澄と二人で電車に乗り、笑いあいながら夜の道をあるく凱斗と香澄の写真が三枚ほど千鶴の手にあった。
「いや・・・それは・・・・」
おそらくここで凱斗が弁解した所で千鶴はまだまだ証拠は持ってくるだろう。
新聞部のエースである千鶴の包囲網はそんなに甘くは無い。
「君が朝桐凱斗君の彼女である佐倉香澄ちゃんでいいんだよね?」
「・・・はいっ!」
「「「なっ!」」」
香澄が凱斗の彼女だと言われた瞬間に香澄は凱斗の腕に思いきり抱きつき、楓花、葵、紅葉は物凄い形相で凱斗を睥睨しながら凱斗達のいる方向へ歩いてきた。
「日香里先輩、凱斗の彼女は私です」
「私の将来の夫は、この旦那様で・・・」
「凱斗が他の女の子と付き合うぐらいなら私が・・・」
楓花、紅葉、葵の順番で千鶴に反駁する。
「そう言うと思ったよ、でもね僕から見れば朝桐凱君と佐倉香澄ちゃんがお似合いだと思うんだよ」
「そ、そんなことはっ!」
楓花は反射的に千鶴の言った事を否定し、空いている凱斗の腕を奪い、抱きつく。
「真実を言うとね、今回の記事は高校生の青春を見たいっていう町の人からの提案なんだよ、そして島桜でトップレベルに美人な女の子達に囲まれている君なら良い青春を送っているんじゃないかってね」
「それで、昨日見た俺達の会話が青春らしくて来たと」
凱斗は全てを察し、千鶴に言うと千鶴はそうゆうこと、と言い全てを認めた。
「だから二人の仲の良いシーンなどを記事にしたいんだよ」
記事にしたいという二人が凱斗と香澄という所に納得の言っていない楓花達は凱斗の方を冷たく視線を送っているが、凱斗の腕に抱きついている香澄の表情だけは晴れやかになっていた。
「私は構いませんよ?むしろこっちからお願いしたいぐらい・・・」
「記事にしても良いんだね?ありがとう!早速昼休みにそっちに行くよ!」
「あれ?俺の意見は・・・」
凱斗の意見は言うまでも無く全てが進んでいき、凱斗の意見が尊重される事は無かった。
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「なんで凱斗の彼女が香澄なのよ、なんでなんでなんでなんでなんで」
千鶴が取材の事を話し終わり別れた後、葵は炯眼な目つきで靴を履き替え、教室へ向かった。
もちろん不機嫌なのは葵だけでは無く、楓花はぶつぶつと小さな声で何かを呟いていて、紅葉はさっきからツンツンとした態度で凱斗の方を向こうとしない。
一方で上機嫌の香澄はにニコニコとした周りを笑顔にさせる笑顔を振り撒き、鼻歌を歌いながら凱斗と同じ足取りで階段を上がっていく。
「私と凱斗は同じ家でたまに一緒に寝たりするのに、凱斗の彼女は私じゃ無いなんて・・・凱斗は私の物凱斗は私の物凱斗は私の物凱斗は私の物・・・・」
まるで呪文のように連呼されるその言葉にはゾッとする。
凱斗が背中に冷たい汗をかいていると、あっという間に教室に到着し、紅葉と香澄と別れる。
「またお昼に行くね」
香澄は凱斗の腕から離れていき、とびきりの笑顔で手を振りながら、去っていった。
そんな香澄の横にいる紅葉はというと・・・
「旦那様の浮気者!」
凱斗を罵倒して、去っていった。
その間に楓花はさりげなく凱斗の側に寄り添い、二の腕をつねる。
「ちょっ、痛いっ・・・」
凱斗は楓花につねられた腕を振りはなそうとするが楓花は全く離そうとしない。
「浮気、しないで」
下をうつむき、か細い声で呟いた楓花の手は少しばかり震えていて、凱斗の目から見えるうつむいた楓花の表情は心配そうな表情をしていた。




