香澄の隠れた趣味と二人きりの夜Ⅵ
凱斗が香澄に翻弄されながらも、二人はメビドラを大いに楽しみ、気づけば時計は9時を指していた。
ここまで来ると香澄と二人で夜までメビドラやってもいいかな、なんて思い始めている凱斗もいたが、帰る時間が遅くなればなるほど舞冬と楓花の怒りは募っていくばかり、今帰っても説教は免れないだろう。
これ以上、ここにいると帰った時監禁でもされるかもしれない、そう思った凱斗は携帯の電源を入れ、気象情報を確認した。
「風、治まってるっぽいぞ」
香澄と一緒に居たくない訳では無いが、凱斗はパァッと顔を明るくして、香澄に言うと香澄の表情はかなりどんよりとしていた。
「もうちょっと凱斗君と二人がよかったな・・・」
小さな声でボソッと呟いたその言葉を凱斗の耳は拾い、途端に顔が熱くなる。
凱斗も今回で香澄とは距離がより近くなったが背に腹は変えられない、帰るのが遅いと激おこ状態の二人が待っているのだ。
「と、とりあえず、風とかは治まったし、帰ろうぜ」
「もうちょっと二人きりが良かったな・・・」
聞こえているはずの香澄の声を聞こえないフリをして、二人は外に出た。
もちろん、香澄のさっきの言葉を聞いている凱斗は胸の鼓動が止まらなかったのは言うまでもない。
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「ねぇ、凱斗君」
わりと人が少ない車両で二人は隣り合わせで座っていた。
一緒にメビドラをやった時もそうだが、香澄から香る甘いんだけど甘すぎない香りが凱斗の鼻孔に猛威をふるっていた。
そんな女の子の香りにドキドキしながらも、香澄の言葉に反応する。
「な、何?」
「今度、また二人きりでどこか行こうね」
「ま、まぁ、時間があれば・・・な」
ここで凱斗の記憶は終わっていた。ガタンガタンと揺れる電車の中で凱斗は眠りについた。
そしていつの間にか凱斗の頭は香澄は肩にもたれ掛かっていた。
「・・・寝ちゃったのか」
香澄は手で凱斗の頭を撫でた後、凱斗の前でそっと小さく呟いた。
「大好きだよ、凱斗君」
香澄の純粋な気持ち。
いつもは小悪魔的表情で言っている香澄も今回は顔を真っ赤に赤らめて言った本気の告白。
香澄は凱斗の頭を香澄の肩から太ももに移す前にとあることを思いついた。
「ふふっ、これはホーム画にしようかな」
香澄が思いついた事、それは二人のツーショット写真だ。
香澄の頭斜め上から撮ったこの写真を香澄の携帯だけでなく、凱斗の携帯でもそれを撮って、凱斗のホーム画面を香澄とのツーショット写真に変更した。
「違うのも撮ってみよ」
それから香澄は駅に到着するまで色んな写真を撮った。
中には凱斗の顔が香澄の胸に包まれている写真や、香澄が凱斗の頬にキスしている写真など。
幸い一番降りる人が多い駅で二人の乗っている車両には誰もいなかった為、やりたい放題だった。
そして凱斗も特に起きることは無く、香澄の思うがままだった。
「これぐらいかな」
そう言って撮った写真を凱斗の携帯にも全て送り、凱斗のフォルダに二人のラブラブな写真が10枚ほど保存された。本人の許可無しに。
「凱斗君、着いたよ」
自分の家がある駅に到着し、寝ていた凱斗を起こす。
「もう着いたのか・・・」
二人は荷物をまとめ、電車を降りた。さっきまでの風や雨はすっかりと治まっていて、何事も無かったようだった。
香澄の帰り道は凱斗の家を通って帰る為、二人は一緒に夜の道を歩いていった。
「今度、二人でメビドラやろうね」
「そうだな、楽しみだ」
曲がり角を曲がって凱斗の家が見えた瞬間、凱斗の家の前で二人の少女が仁王立ちしていた。
さながらその姿は門番のようで殺気のような何か恐ろしい物が纏わりついていた。
「凱斗、遅かったじゃない」
「ねぇ、凱斗、浮気?浮気だよね?遅い時間まで他の女と逢い引きなんて」
舞冬、楓花の順で発した言葉よりもその表情は心底不機嫌で、これは説教確定だな、と皮肉げに呟いた。
「香澄、送っていこうか?」
「いや、大丈夫だよ、また明日」
香澄は去り際に凱斗の頬にキスをして、去っていった。
凱斗の頬に暖かい感触と残り香が凱斗の頬に残り、香澄は暗闇に消えていった。
そして、凱斗が後ろにいる二人の方を見ていると・・・
「凱斗ぉ~?目の前で浮気なんて良い度胸ね?」
「上書きする」
舞冬は人を殺す目で凱斗に迫り、楓花は香澄がキスした場所にもう一度キスしようと迫ってくる。
と、バッグに入っている凱斗の携帯が鳴り、凱斗は携帯を取り出すと、凱斗が電車で寝ていた時に香澄が撮った写真がどんどんと送られてきていた。
その写真を見ているのは凱斗だけでなく、両隣にいる二人も見ていて・・・
「なんなのよ!この写真!」
「凱斗の、バカ」
両隣にいる二人の腕を掴む力がより強くなっていって、そのまま凱斗は部屋へと連行された。




