香澄の隠れた趣味と二人きりの夜Ⅳ
「そ、そういえば、さっきゲーム買ってたけどやらなくて良いのか?出来ると思うが」
「へっ?あぁそうだね、やること無いしやろうかな」
香澄はさっき二人が行った店でゲームを一本買っていたのだ、ここにはテレビがあるしゲームをする環境は整っていた。
本来は一人用であるネットカフェの個室に凱斗と香澄は密着した形だった。
おそらく部屋に入り1分ほどだろうが、凱斗にとっては5分ぐらい経っているのではないか、と思うほど時間の流れが遅く感じる。
それはどうやら凱斗だけでなく、香澄もその様子でほのかに顔を赤らめていた。
この空気感に凱斗は耐えられなくなり、話題を切り出す。周りに女性が多い凱斗でもこんなに密着したのはほとんど無い。
そして問題なのは、香澄の服だ。雨に当たったせいで服が透け、真っ白の体と下着がくっきりと浮き出ていて、香澄の方を見ようにも見れない。
発達した胸を覆い隠す下着とナイスバディな体に凱斗は混乱する。
(体柔らかいわ、良い匂いするわ、どうすりゃいいんだよ!)
こんな幸せすぎる状況に頭がショートしてしまう。凱斗の心拍数が香澄に聴こえるんじゃないか、と不安になるほどだった。
「それで、どんなゲームを買ったんだ?」
凱斗が香澄のかばんの横にあったビニール袋からパッケージを覗く。
乙女ゲーとかかな?と思いつつ、中を見るとあったのは乙女ゲーとは程遠いアクション物のタイトルだった。
「メビドラ!?」
そのタイトルは凱斗は人生でトップにいくレベルに面白かったゲームだった。
「メビウスドラゴン」通称メビドラ。1年程前に発売したアクションゲーに定評のあるゲーム会社メテオンが開発した大人気のゲームタイトル。
多すぎるレベルの役職にスキル、多彩なアクション。そして巨大なモンスターに加え、自由度が高いオープンワールド。
王道なゲームだが、やはり王道が一番!というのが体現したようなゲーム。
プレイしている層は主に男性だが、こうして女性も手をつける程、人気なのだ。
「うん、あれだけ人気だったし欲しいなーって思ってて、ちょっと安くなってたから買ってみたの」
「まさか香澄がメビドラをやる日が来るとは」
「凱斗君、メビドラ好きなの?」
「大好きだ、だから一から教えてやる」
凱斗がそういうと、香澄はパァッと明るくなり、周りに迷惑を掛けぬよう、ボリュームを少し下げて二人はメビドラを楽しんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一方、凱斗が香澄と二人で楽しくゲームをしている事を知らない楓花と舞冬は携帯を取りだし、連絡していた。
「もしもし、凱斗?」
通話に至るまで少し時間があったが、やっと凱斗に繋がり舞冬は言葉を続ける。
「なんで遅いの?まさか今だれかといるの?」
電話越しに伝わってくる舞冬の冷たい言葉に背筋が凍りつく。いつもの感じとは違い棘がついたような感じの口調だった。
ここで凱斗が嘘をついても一瞬でバレるだろう、そう推測した凱斗は正直に答える。
「今は香澄といるけど・・・」
「・・・浮気なの?」
冷たい言葉はまだ続いていて、より冷たくなったようなイメージがある。舞冬の声以外に楓花の声も少し聞こえる。
「今どこにいるの?そっちに行くから」
「それはダメだって、今雨凄いし何より隣町にいるから」
確かに今は雨が物凄くて、風もかなり吹いている。そんな状況で行くのは危険だ。
だが、それでも行こうとしている舞冬と楓花はなんとしても行かせないと、止める。
「説教はあとでいくらでも受けるから外にでないでほしい、二人にもしもの事があるのは嫌だ」
すると舞冬は、しばしの沈黙の後わかった、と小さな声で呟いた。
「でも、帰ったらなんでも言うこと聞いてもらうから!」
今はもうさっきのような冷たい声では無く、いつもの舞冬の声だった。
まぁ、凱斗としてはなんでも言うことを聞くというのは恐怖でしか無いのは事実だが。
「できる範囲だからな?」
「それは約束しきれないな」
舞冬の恐怖の発言を苦笑いし、電話を切った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この後凱斗はどうなるのか不安を抱きつつも、香澄の待つ個室に帰る。
ちなみに今香澄はメビドラのキャラメイクに勤しんでいる。
キャラメイクが細かすぎるというのも、メビドラの良い所なのだ。
「終わったか?」
「あとちょっとかな」
(こういうゲーム俺は隅々まで設定しないけど、する人は長いよなー)
現在、香澄は100種類ほどある髪型を選びに選んでいる。特に女性キャラにすると髪型が男性と比べかなり多い。
「よし、終わった」
結果、メビドラで使用するキャラは香澄に似た感じになった。さすがに香澄をそのままキャラとして作るのは出来ないが、香澄っぽいキャラが完成した。
「後は役職だな」
「やっぱり凱斗君と一緒にする時凱斗君の役に立ちたいからヒーラーでいいかな」
役職を決めるのが一番悩む所なのに香澄はあっさりと選択し、仲間を癒すヒーラーに就いた。
ちなみに余談だが凱斗は役職を選択するのに15分程かかったのは、仕方の無い事だった。
「そんなにあっさりと決めて良かったのか?」
「うん、凱斗君をお世話するのは私だから」
「そ、そうか」
「もちろん現実でも、だよ?」
この香澄の蠱惑的な笑みに凱斗はやられ、そっぽを向いた。凱斗の周りの女性の中で不意打ちをしてくる女性は香澄がダントツで高いだろう。
「私、凱斗のお嫁さんになる為に、結構色んな事してるんだよ?家の家事全般練習したり、料理したり、色んな事頑張ってるんだよ?」
そんな香澄の直球ストレートの言葉に凱斗はみるみる赤面していく。そりゃそうだ、自分のお嫁さんになりたい、と向こうが言っているのだ。
香澄の直球ストレートの告白にドキドキしながらもそんな直球な言葉に魅力を感じた凱斗だった。
「ふふ、照れてる?可愛い」
お互い体が密着したこんな場所で可愛い女の子から告白され、さらには可愛いなんて言われると脳がショートし、どうすれば良いか全くわからなくなる。
「そ、そんな事はいいから、メビドラ進めようぜ」
赤面しながら、正面の画面を見ながら別の事に集中しようと頑張る。
「そういう所、大好き」
香澄はそういい、そっと凱斗の頬にキスをした。
どうも、ミカエルです。
報告が遅れましたが、「高校入ったら日常が非日常に変わった」がブックマークが100件を突破いたしました!ありがとうございます!
いやー、感無量ですね、本当に感謝!
これからも頑張っていきます!




