ラブレターはやっぱり修羅場Ⅲ
佐倉香澄のラブレターを読んだ次の日。
凱斗と舞冬、楓花は朝ごはんを食べながら昨日の話をしていた。
「で、その女への返事はどうするの?あ、付き合うっていう返事は無しね」
じゃあ、断るしかないじゃねーか、と凱斗は胸の中でつっこむ。
「凱斗は、佐倉さんのこと何とも思ってないよね?」
凱斗の前に座っている楓花が不安そうな顔つきで聞いてくる。
「別に何とも思ってないぞ?可愛いとは思うけど」
「絶対に恋仲にはならないで、約束だよ?」
少し楓花の目が怖いがここは従っておこう。
と、家のインターホンが鳴り、凱斗は玄関に向かい、扉を開ける。
「おはよ、凱斗」
立っていたのは幼馴染みの葵だった。
「葵か、ちょっと待ってくれ」
とりあえず葵をリビングに上げ、急いで朝ごはんを食べる。
「ねぇ凱斗」
ソファに座った葵が少しトーンの暗い声。
「ん?なんだ?」
「昨日、ラブレターを貰ったって本当?」
飲んでいた甘めのコーヒーを吹きそうになる。
「な、なんでそれを・・・」
「ほんとなのね?ラブレターを貰ったのは」
「う、うん」
葵が放つ謎の威圧で、凱斗の声がか細くなる。
「楓花から聞いたのよ」
コーヒーを飲んでいる楓花を睨むが楓花はそっぽを向いた。
「まさか佐倉さんがラブレターを出すなんて」
葵と香澄はそれなりに仲が良い友達だ。
「楓花、今日一日はお互い休戦よ、今日は凱斗を守るわ、佐倉さんは何をしてくるかわからない」
葵はソファから立ち上がり楓花の前まで行った。
「今日だけは休戦、良いわね?」
「わかった」
葵と楓花は握手を交わした事で今日限定のタッグが誕生した。
まぁ、凱斗にとっては全く変わらぬ非日常なのだが。
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凱斗と楓花、葵はいつもの通学路につき、学校へと足を運んだ。
「やっぱいつも通りだな」
さっき同盟を組んだから何か変わるかと思ったが全然変わらない。
右に楓花、左に葵。そして真ん中はもちろん凱斗。
いつもと変わらぬ並び順にいつもと変わらぬ他愛のない会話をしていると、すぐに学校に到着。
教室に着くと、ラブレターを書いた本人、佐倉香澄はすでにクラスの女子達と喋っていた。
「あ、おはよう凱斗君」
女子達と喋っていた香澄が凱斗達の前まで行った。
「お、おはよう」
チラッと左にいる葵を見ると、葵は剣呑な眼差しで香澄を見ていて、楓花は敵対心丸出しの視線を、そして香澄は絶対に負けたくない、と視線でわかるほどだ。
「今日の日直、私と凱斗君だから。よろしく」
黒板の隅を見ると朝桐と佐倉、と書いていた。
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「朝桐、佐倉このプリント国語準備室まで頼むぞ」
凱斗のクラスの担任、赤崎先生が凱斗と香澄にクラス全員分のプリントを渡した。
「じゃ、行こっか、凱斗君」
二人でプリントを分け、国語準備室に向かう。
「楓花、二人が行ったわ」
「わかってる」
楓花と葵は凱斗と香澄のあとを追った。
「ねぇ、凱斗君」
「何だ?」
「凱斗君は今好きな人いるの?」
国語準備室に入り、香澄の質問の答えを言う。
「いない」
すると、香澄の顔が少し緩み、その表情は嬉しそうだった。
「私の告白、返事を聞きたいな」
「俺は佐倉の事あんまり知らないから・・・」
ほとんど喋ることもなかった為、良い返事を返すことはできなかった。
「そうだね、じゃあまた告白するからその時は良い返事頂戴ね?」
そう言い、香澄は国語準備室を出ていった。
「ふぅ・・・」
香澄は部屋から出て、息をはいた。
「私はまだ負けてないから」
部屋の外で聞いていた楓花と葵に一言残し、教室に帰っていった。




