婚約者 早乙女紅葉Ⅳ
「凱斗、まだ思い出せない?あの女のこと」
楓花が不安げな表情で聞いてくる。
「あぁ、昔のことはあんまり覚えてないんだよな」
「そう・・・」
「まぁ、放課後屋上に行ったら全部分かるしな」
「そうだけど、本当に凱斗があの女の旦那様だったら・・・私、耐えられないよ」
楓花は凄く心配そうな顔つきで呟く。
「凱斗、あの女の物にならないでよね」
前から葵が来て、怒気の混じった言葉を放った。
放課後、部活のない生徒は校門を出て自宅へ帰っていった。
部活のある生徒は各自、練習に励んでいた。
そして、凱斗は紅葉に言われた通り、屋上に向かっていた。
「あ、来たわね、旦那様」
凱斗が扉を開けると、先に紅葉が待っていた。
「約束通り、一人で来たね」
「楓花と葵は校門で待ってるよ」
「そう、ならいいわ」
「で、何で俺が紅葉の旦那様なんだ?」
紅葉と凱斗は葵より前の幼馴染みでよく遊んでいたことは分かっているが、なぜ旦那様なのかはわからなかった。
「理由は簡単よ、私と旦那様は結婚を約束したんだから」
「は・・・?」
「だから、私と旦那様は結婚を約束した仲なの!」
「てことは、紅葉は俺の・・・婚約者・・・?」
「そうよ、その証拠に、はいこれ」
紅葉が取り出したのは、一枚の紙だった。
「これは・・・?」
「婚姻届よ」
その紙を見た瞬間背筋に冷たい汗が流れた。
家に帰る→楓花、葵、舞冬に見せる→死
こんな物をあの3人に見せると、何が起こるか分からない。
「紅葉、これは誰にも見せないで・・・・・」
婚姻届を隠そうとした瞬間、屋上の扉が開いた。
「凱斗、遅い」
「いつまで二人でいるのよ!」
最悪だ、最悪のタイミングで楓花と葵が来た。
そして、運悪く風が吹き、婚姻届が葵の顔に直撃した。
葵の顔に直撃した婚姻届を楓花が取り、中身を見てしまった。
「あ・・・・」
「楓花、その紙何?」
葵もその紙を覗いた瞬間、肩がプルプルと震え、凱斗を思いっきり、睨んだ。
「凱斗、何これ?」
今までに聞いたことないぐらい冷たい声で唸る、楓花。
「これには、深い訳が・・・・」
「私は旦那様の許嫁ってこと!」
「そう・・・許嫁・・・」
葵が思いっきり怒ってる、怖い・・・。
「これは、舞冬にも言わないと・・・」
楓花も相当怒ってるようだ。
「舞冬姉だけは‼舞冬姉にだけは言わないでぇぇぇぇぇ」
「浮気者の言うことなんて、聞かない」
かつてない修羅場が凱斗を襲う・・・。
どーもミカエルです。
投稿遅れて本当すいません、3作目に力を注いでました。
毎日は難しいですが、頑張ります。




