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村の案内と風の織り布

この村で生活するようになってから数日が立った。

私は村長の家でやっかいになってます。

森でのサバイバルと熊との戦闘で、自分が思っていたよりも消耗していたらしく、保護されてから少しの間寝込んでしまったけど、今は全快している。


「どうやらシロは常識的なことまで忘れてしまっているようだからな、折角だから村の子供たちとともに学んでいくといい。」


シロというのは私の名前だ。犬猫に付ける名前じゃないんだから……と思っていたが、エルフの名前はかなり単純につけられているみたい。

村一番の剣士だからツルギさん。ほかの村との通信を担当しているツナギさん。のように

個人が分かればいいらしいからツルギさんのことをケンシさんと呼んでも一応通じるらしい。

役割を持たない子供の名付けはもっと適当らしい、役割の名前で呼ばれるようになると一人前だそうです。

もちろん私の名前の由来は白いから。もともと色白なエルフの髪の毛まで白いから私は見た目真っ白だ。

角度によっては銀色に見える髪と青い眼はハイエルフの証らしい。

鏡を見るまで自分の目の色を知らなかったけど、やっぱり違和感がある。本当に私の目はこんな色だったのかな。


今日は私が回復したので、村のみんなとの顔合わせ。

村の中をツルギさんと一緒に歩く。

村の規模は小さく、この村に住んでいるのは50人ほどらしい。

村の中とはいってもそれなりに木が生い茂っていて、開けているところがちょこちょことあるくらいであとは見上げても空がはっきりとは見えないくらいの密度で生えていた。

家は木の上にあったり普通に地面の上に建っていたりしているけど、建てたというよりは木やつる植物が勝手に家の形になるように育ったような見た目をしていた。


「あの家はどうやって建てているんですか?」

「あれは精霊魔法を使って植物にお願いしているんだ」


おおう、エルフっぽい答えが返ってきました。


「おそらくシロも使えるはずだが、やっぱり覚えてはいないか?」

「ええと、まず精霊魔法が何なのか……」

「やはりか、とりあえずその説明はあとからまとめて教えてもらうといいさ。」


私たちはのんびりと地面を歩いているけれど、村の人たちは割と木の枝をピョンピョンと飛び移っているみたいだった。

というか地上からは入れないような建物が割とあって、それができないと生活できないレベルなのかもしれない。

魔獣から逃げる時に木の枝から飛び移って移動できて驚いてたけど、エルフの標準機能てきな技能だったみたい。


白い髪の毛の私は割と目立つみたいで、上を飛んでいる人は私を見つけると手を振ってきたり、わざわざ降りてきて頭をなでながら挨拶してきてくれてとても友好的でした。

たまにすれ違いざまに辻なでなでをされたりもしました。

とにかくなぜかなでられました。


「みんな子供は大切にしている。よそからの子でも同族なら大事な家族だからな。」

「私の髪の毛が珍しいのかと思ってました。」

「まあ、それもあるな」


どこかで集まって紹介されるのかと思っていたけど、村を一周したところで紹介は終わりといわれました。


「今日会ったやつがシロのことを伝えるだろうから、今日中には村中にシロのことが広がるだろう。

あとは出会ってから適当に自己紹介をしろ。」


そんなのでいいんでしょうか。まあ、村の雰囲気的に拒絶されるようなことがなさそうでひとあんしんです。

家に帰ろうかとしていると、村の中でも高いところにある広場の上で、数人の女性が歌いながらハープのようなものをもってくるくる回っているのを見つけました。


「あれは何をしているんですか?ダンス?」

「あれは村の女性の仕事のうちの一つで、風布を織っているんだ。」

「かぜぬの?」

「今シロも着ているその服の素材だ。」


今私は村長さんからいただいた服を着ています。

エルフの人たちは露出が気にならないのか、手足は付け根までむき出しで、男性は上は裸の上にジャケットみたいなのを羽織ってるだけだったり、女性は背中のあたりが丸見えだったりしています。

最初は恥ずかしかったですけど、周りみんなが同じ感じなのでなんだか慣れてしまいました。


「これは布を織るときに、風を一緒に織り込んでいくエルフだけが作れる特別な布だ。

多少蒸し暑かったり肌寒かったりするくらいなら風布が勝手に快適に調整してくれる。」


ふあー。便利な布があったものです。


「あの手に持っているのは織り機だ。回りながら風を糸に紡いでいって、祝詞を歌いながら織ることができるようになったら一人前の織り師だな。」


くるくると舞いながら歌っている姿は、まるで美しい踊りを見ているようでした。

しかしよく見るとハープには糸巻きが付いていて、踊るように手を動かすたびに少しづつ布が織りあがっていきます。

ある程度出来上がったのか、踊っていたお姉さんがゆっくりと舞をやめ、手元の織り機をいじるとするすると織りあがった風布が出てきました。


「おおー!!」


思わず拍手をしていると、こちらに気が付いたお姉さんが近寄ってきてまたなでられました。


「やってみたい?」

「いいんですか?」


ハープのような織りきを渡されたので目線でツルギさんに大丈夫なのか問いかけると、やってみるといい。という感じでうなずかれます。


「祝詞はこっちで謡うから私の真似をして風を紡いでみて。織るのはまだ難しいだろうしね。」


風を紡ぐというのはよくわからないのですが、お姉さんの代わりに高台に登ってみるとこのあたりに風が流れてきているのをかんじました。

他の数人の女性たちも休憩するみたいで私の周りには誰もいなくなってしまいました。

どうしましょう。やり方なんて見てただけじゃよくわからないです。


「いくよ~」


こちらの心の準備が整ってないのにお姉さんは歌を歌い始めてしまいました。

どうしましょう。どうすれば……とあわあわしていると、歌に合わせて周りの風の様子が変わってきたのを感じました。

なんというか、風が見える気がするのです。

お姉さんの歌う声が響くたびに風が呼応するように輝きます。

風が吹くたびに細い風の通り道が線のようにきらきらと薄く光って見えるのです。

思わず指ですくってみると、そのまま指に引き寄せられるようについてきました。

手繰った糸は織り機の糸車に近づけると、勝手にくるくると巻き取られていきます。


「シロちゃん、まわって」


その言葉にさっきまでのお姉さんの姿を思い出しました。

その姿を思い浮かべて、くるくると、できるだけ風の線を巻き込むように大きく回ります。

私の体に巻き付くようになった風は、絡むこともなくどんどん糸車に吸い寄せられていきました。


「ほう。まさか初めてで風を紡げるとはな。」


ツルギさんが関心してくれているようですが、なんだか気持ちが高ぶって楽しくなってきました。

まだ何度かしか聞いていない祝詞だけど、なんだか今なら歌えてしまう気がします。


「~~~♪」


湧き上がる気持ちに任せてお姉さんに合わせて声を上げる。

それに答えるようにして、周りの風の糸の数も増えていく。


「あら、すごいわシロちゃん。もう祝詞覚えちゃったの?」


そのあともしばらくくるくるして風を紡いで、満足したので踊るのを止めました。


「ふー楽しかった~」

「すごいわシロちゃんもうほとんどできてたじゃない。」

「大したものだな、これはもしかしたらツナギが言ってたように……」

「でしょ~もしかしたら風絹も織れるかもしれないよ~」


!!


びっくりしました、いつの間にかツナギさんまで当たり前のようにいました。


「ね、ね、やらせてみようよ」

「そうだな。確かにシロならあれら(・・・ )に気に入られるかもしれないな。」

「あの?」


なんの話をしてるのでしょうか

と、急にツナギさんが私の肩をがっしとつかみ、


「シロちゃん!!」

「ふぁい!?」

「ちょっとついてきて~」


と言いつつ、すごいスピードで私を抱えたまま走り出しました。

割と異常な速さで覚えていますが、寿命が長いエルフは多少早く覚えたところでそこまで気にしません。

どんな難しい技術も長い寿命にあかせて最終的には覚えられちゃいますから。

だからシロは自分の異常さに気が付かない。

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