拾われて
平日にあまり時間が取れないので基本休日に書いていきたいです。
森の奥にあるとある村。
その村長の家に一人の青年が訪ねてきた。
「ただいま戻りました。村長」
声に反応して家の奥から年若く見える青年が顔を出した。
「戻ったかツルギよ、して、迷い込んだ魔物の方は?」
どうやらこの青年が村長のようである。若すぎるような気もするが、ツルギと呼ばれた方の青年は特にそのことを気にしている様子はなかった。
「小物の熊型のようでしたね。表に運んできています。」
そういうと村長と一緒に青年は家の前まで出てくる。
そこには大人一人の身長に少し足りないくらいの大きさの熊の魔物の死がいと、布に包まれた何かが並べて置かれていた。
村長は熊の死がいを眺め、
「ずいぶんブサイクな仕留め方をしたの、腕が落ちたか?ツルギ」
「いえ、実は仕留めたのは私ではないのです。」
「ふむ?村の若いのにでも練習させたか?」
「最初から雑魚だと分かっていたならそれもあったんでしょうが、今回は急でしたので。」
ツルギは死がいのそばに横たえていた布をぐいと引っ張った。
すると、包まれていたものがころころと転がりながらでてきた。
「私が気配のもとに着いた時には、すでにこの子供と一緒にこの死がいがあったのです。」
「お、おい!子供がいたのか。ええい全く、なんて乱暴な奴じゃおまえというやつは。」
村長は慌てて転がり出た子供を抱え上げて様子を見る。打ち身程度のけがはしているがどうやら気を失ってるだけで、大事ではなさそうだった。
「われらの同族だが、この村の子ではないの。そもそもこの白色は……」
「すでにツナギの奴に白についての確認を取らせています。」
話をしていたちょうどその時に、話に出ていたツナギという村の女性がやってきて報告する。
「確認してみたけれど、やっぱり聖域の白に、行方が分からない子供なんていないらしいわ。」
「やはりのう。白色がいなくなったとなればあちらが大騒ぎになっているはずじゃからな。
しかし、だとするとこの子は一体?」
「私がこの子供の痕跡を森でたどってみたのですが、森の中でぷっつりと痕跡が分からなくなっていまして、
さらにそこを調べたところ、……もしかしたら空から落ちてきた可能性があります。」
「ええ!?」
「はあ!?空じゃと?鳥にでもさらわれたのか。」
なんとなく三人とも空を見上げる。
今日もいい天気だった。
「だとすると、どこから来たのか見当もつかないのう
聖域の方から何か指示はあったのか?」
「いえ、聖域の白ではない以上、その子に関する権限はその子自身にしかないとのことです。」
「ふぅむ。だとすると、この子供に話を聞くしかないようじゃの。」
「でも、子供である以上面倒を見てあげないとだめじゃないですか?」
「うちの村で育てるということかの」
「そうですね。その方がいいでしょう。」
ツルギがやけにこの件に乗り気なことに、村長とツナギは首をかしげる。
別に彼が子供が嫌いなわけではなく、自分の役目以外のことにあまり積極的に口を出す方ではない男だったはずなのだ。
「なんじゃ、お前にしてはずいぶんと乗り気じゃの」
「ふふ、いえ、この年で雑魚とはいえ魔獣を一人で仕留めたこの子供に少し興味がわいたのですよ。」
「ああ、確かにまだ50にもなっていなさそうな子供じゃしの。将来有望そうじゃ」
「ツルギ、この子鍛えるつもり?だめだよ女の子なのに。
それより村長、この子が風絹を織れるか見ておいた方がいいですよ。最近あまり織れる子がいなくてこまってたじゃないですか。」
大人たち三人がわいわいと少女の将来について話し合っている傍らで、本人は静かに目を覚まそうとしていたのだった。
旅に出るまでは物語巻き気味でいきます。