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ロリ属性という名の紳士だよ!

「ふーん、"魔力で形成された物を魔力に分解して吸収する能力"ね〜。具体的にどんなふうに分解してどんなふうに吸収するの?」

「それについては見てもらった方が早いかな?えっと......」

身近にいい物はないか探すと、ちょうど茂みが揺れるのが見て取れた。

恐らく魔物だろうが、根拠はないけどまあ大丈夫だろう。

俺は茂みに向かって歩を進める。

と同時に、

「グラァァァ!」

狼のような猛獣が飛び出してきた。

「ぎゃぁぁぁぁ!」

「きゃぁぁぁぁ!」

走った。

生きるために俺達は必死に走った。

確かに相手が魔物であればこちらの方が有利だ。

しかしだ、それは相手が魔物だと確定している場合の話だ。

もしも今俺の前にいるのが本物の獣だとしたら俺は即死だ。

抵抗だってできるかどうか分からない。

そんな状態で戦闘に挑むなんてギャンブルすぎる。

「ふぇーん!なんでこんな目にぃぃ!」

「泣くな!泣いてる暇があるなら走るんだ!」

「もうヤダぁ!もう疲れたよぉ!」

「なんか使えそうな魔法は無いのか!?アリスって仮にも魔女なんだろ!?」

「うぐっ.....えぐっ.........ぐすん.......まほう?」

「そ、そうだ!魔法だ!なんかないのか!?そろそろ俺の体力が限界なんだが!」

「ううぅ.....ぐすっ........ぞっか、魔法使えばいいんだ」

「真っ先に思いつけよ!お前を魔女なんだろ!?」

「ふぇぇぇん!怒らないでよぉぉ!!ぢゃんとやるがらぁぁ!!」

もう完全に子供だった。

推定七歳。

「我魔の力を操りしもの...........」

アリスは詠唱らしきものを呟き出した。

なんか魔法って感じがしてカッコイイ!

使えるかどうかは分からないけど、後で教えてもらおう。

間もなくして魔法が完成する。

「アークキャスト・ドンネール!」

アリスが右手をかざすと一瞬視界が真っ白になる。

数秒後、視界は回復した。

そして目にしたものは、黒焦げの獣の姿だった。

「今のは?」

「うぐっ......ひぐっ..........かみなりの....まほうだよ」

いい加減泣き止んだらどうなんだろう。

可愛いけどやっぱりロリっ子が泣いている姿はあまり見たくない。

どうしたら泣き止んでくれるのか考えた結果、あることを思い出した。

確かあれがあったはずだ、

右のポケットを探るとやはりあった。

小さい袋に入っている一つの丸い個体__________飴ちゃんだ。

いつどこで泣いているロリに会うかわからないので向こうでは常に携帯していた。

「はいこれ。知ってるか?」

「ぐすっ....飴なら知ってるよぉ。私がこっちに来たのいつだと思ってるの?_______あむ」

「百三十八年前?」

「そうだけど!でもそういう事じゃないの!」

飴玉を舐めているおかげなのかアリスは泣き止んだ。

百五十歳から十二歳を引いて百三十八年前だと思ったんだが違うのか。

うーん、でもそれ以外にどう答えたらいいんだろう?

「私がこっちに来たのは日本でいうと平成二十年の時なんだよ?」

平成二十年?

えっと、その時にアリスが小学六年生もしくは中学一年生だったとすると、俺がいたのが平成二十七年だからアリスがこっちに来たのは俺の感覚でいうと七年前。で、俺は十七歳だから七年前は十歳で小学四年生。

つまりは平成二十年時点ではアリスは小学六年生か中学一年生で俺は小学四年生になるのか。

ちなみに当時は必死に空手をやっていた時代でもある。

「ということは.........アリスってこっちで百三十八年暮らしたんだよな?」

「うん、大変だったよ?」

「俺の世界で七年経過しているうちにこっちでは百三十八年経過している?え?ちょっと待って、それって向こうで一年経っているうちにこっちでは約二十年経つってこと!?」

___________なにそれ!?異世界らしい!

俺の出した結論に、俺がショックを受けていると勘違いしたらしいアリスは慰めるように言う。

「だ、大丈夫だよ!絶対変える方法はあるよ!」

「ごめん、帰る気ないから」

「そうだよね。すぐには見つからないと思うけど私もできる限り協力を___________ってえ!?どういう事!?」

「だから帰る気はないって言ったんだよ。こんな天国のような世界から向こうに帰るなんてバカバカしい。俺はこの世界で家買ってハーレム作って一生遊んで暮らすんだ!」

「思ったより最低な理由だった!?」

「最低じゃない!崇高な計画だ!」

「わーん!翔くんの価値観が私には分からないよぉ〜」

「あ、ちょっと!泣くんじゃない!」

俺達は森の中、コントのような会話を楽しんだ。

なんだかんだ言っているが、やっぱり誰かと話せることは相当に嬉しいらしく、アリスは表情をコロコロと変えた。

そんな俺達のやり取りに気を引かれたのか、熊のような生き物が茂みから飛び出してきた。

「うぎゃぁぁぁ!またかよぉぉ!」

「もうヤダ〜!お家帰りたいよ〜!!」

また俺達は森の中を駆けずり回ることになった。


さて、今ようやく思い出した。

そう、完璧に忘れていた。_____________メイリーの存在を。

先に群衆の中に突撃していって以来一度も見ていないし、アリスを助けることに必死で気にかける余裕もなかった。

では考えてみよう。

俺とメイリーがパーティーを組んでいることは最早周知の事実となっているだろう。

そして俺は魔女を助けた。

じゃあその時、俺の相棒のメイリーは周りからどんな反応をされるだろうか?

.............どう考えてもやばい気しかしない。

拷問と称して剥かれているかもしれない。

罰と称してSMプレイを強要されているかもしれない。

とにかくメイリーが危ない!

「というわけで魔法を教えてください。アリス先生」

「いきなりどうしたの!?」

熊のような生き物をアリスが魔法で退治したことによって、安全な場所と美味しい食料が手に入った夜。

俺はアリスに頼みごとをした。

「いや、オタク的には異世界に来たら魔法が使ってみたいわけで」

「でも翔くんのレベルじゃあ覚えられる魔法は少ないよ?」

「俺のレベル?」

____________なんだそれは?

また初見みの単語が出てきた。

レベルというもの自体はRPGをやった事がある人にはすぐに分かる。

でもこの世界にレベルなんてものがあったことに驚きだ。

「翔くんの今のレベルは?」

「知らん!何を見ればいいか分からんからな」

「ステータスカードを見るんだよ。貸して_____________ってなにこれっ!?全ステータス測定不能!?」

あ、これ絶対勘違いしてるやつだわ。

別に俺は膨大なステータスを持っているわけじゃないし。

「れ、レベルは_____________()?」

1!?

俺って確かゴブリン掃討したよな?

なのにまだレベル1!?

レベル1の状態からのレベルアップって基本的討滅クエスト一回で出来るもんだろ!?

どんだけ経験値必要なんだよ!

クソゲーですか?

はい、クソゲーです。

ってふざけんなっ!

「う〜ん、ゴブリンの群れを掃討したなら普通はレベル上がるんだけど.........やっぱり翔くんが異常(おかし)いんだとおもうよ?」

「.........マジで?システムがダメなんじゃなくキャラがダメなの?」

「簡単の言えばそういう事だね。今は情報も少ないし、もう少し様子を見てから考えようか」

「了解」

「で、魔法なんだけど翔くんの今のMPが分からない以上なにが出来て何ができないのか分からないんだよね〜。一応初級魔法覚えてみる?」

「みる!」

やっほーい!

魔法だー!

夢にまで見た魔法だー!

「じゃあ始めるね」

こうしてアリスによる俺のための魔法教室が始まった。

そして数十分後、

俺は泣いていた。

心の底から泣いていた。

詠唱を教えて貰って、魔力を練るまでは良かったんだ。

それはもうアリスもビックリの魔力量だったらしいのだけれど、

「まさか術式を組み立てた瞬間に分解されるなんてね」

アリスの言う通り、俺は自分の能力で自分の術式をぶっ壊してしまっている。

曰く、混合俺が魔法を使える可能性はゼロと見た方がいいらしい。

それを聞いた俺はまた泣いた。

今後レベルが上がれば使えるようになるのではないかという俺の希望さえ打ち砕かれた。

こんな能力を持ったばっかりに..........。

「元気だして、魔法ばっかりが異世界じゃないんだから。ほら、剣とか」

「魔法は男のロマンじゃぁぁ!!!!!」

「きゃっ!?ど、どうしたの急に?」

「剣なんか向こうでも使おうと思えば使える!でも魔法は異世界でしか使えないんだよ!だからこそ神秘!だからこそ追い求めるんだ!今後一生魔法が使えないくらいなら、この能力を以てして世界中の魔術師をぶっ殺してやる!」

「ダメだよ!確かに翔くんなら出来ないことはないけどダメだよ!」

「止めてくれるな。必ず帰るから黄色いハンカチを目印に広げていてくれ」

「持ってないよ!黄色いハンカチなんて私一枚も持ってないよ!」

「じゃあ手始めにグランドデールの魔術師をチョメチョメしますか」

「何する気!?ダメだからね?絶対ダメだからね!」

「って振りだろう?分かってるって!」

「何を分かったの!?その爽やかな笑顔はなに!?」

「行ってきます」

「ドンネール!」

「俺に魔法は効かないことを忘れたか!ってちょ!これはまずいって!うぎゃぁぁぁ!」

魔法を受けて倒れてきた木を間一髪で躱す。

アリスは初めから気を狙っていたのだ。

確かに俺には魔法が一切効かないが、物理攻撃は有効なのだ。

その証拠に一度エルドラドにやられて二ヶ月入院した。

全く、可愛い顔してえげつねぇな、アリスさん。

これ下手したら死んでたぞ?

「また行こうとしたら今度はもっと酷いからね?」

ジトーとした目を向けながら釘を刺すアリスは、俺に「分かりました」の一言しか許してくれなかった。

「分かればいいんだよ。ささ、もう寝ちゃお」

マイペースに寝転んでしまうアリス。

そんな無防備な姿に、________________かなり興奮した。

「_________っ!なに今の寒気!?」

危険なものを感じ取ったらしいアリスが勢いよく起き上がる。

一人旅を続けるとこれほど感覚が鋭敏になるのか。

____________すげーな。

「........気のせい?ごめんね翔くん。さ、今度こそ寝よ?」

再びアリスは地面に転がる。

しばらくすると、スースーと寝息が聞こえ始めた。

俺は可愛らしい寝顔を浮かべているアリスの元に歩み寄る。

_____________このままでは寒かろう。

そう思った俺は、__________________アリスに抱きついた。

_____________これはアリスが寒さを感じないようにするための行為であって決して下心があったわけではない!

そして、その小さく華奢な身体を少し力を入れて抱きしめ、目を閉じる。

翌朝、当然俺はぶん殴られた。

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