ここはどこぞ?
ここはどこだ?
右を見ても左を見ても全然知らない景色。
振り返ると、通ってきたはずのトンネルが消えている。
__________なに?ドッキリ?
そう思ってみたりもするが、どこにもそれらしいプラカードは立っていない。
広い草原の中俺は独り佇んでいた。
風が心地よく、揺れる草の音が心を癒していくかのようだ。
しかし、周りには草以外何も無い。
青い空、白い雲、照りつける太陽、走る風、人間の手が一切加わっていないかのようなその場所は、どう考えても俺の知る町並みではなかった。
そして二次元脳の俺にはすぐにある仮説が生まれた。
人の手の加わっていない未開の見知らぬ土地、消えたトンネル、もしかしたら俺は別の世界に飛んだのではなかろうか?
現実的な考えではないことくらいは俺が一番よくわかっている。
だが、そう考えた方が面白い。
さて、元の世界に戻りたいとは思わないけれど、せめて何が起きたのかだけでも確認したい。
俺はさっきまでのことを一から思い出してみることにした。
天翔家は三人兄妹である。
また、父親が有名な空手家で俺達兄妹にもその才能は受け継がれていた。
特に兄と妹のそれは強く現れており、二人とも全国大会で上位入賞した。
それに比べて俺の才能は小さいもので、せいぜい都大会で準優勝程度のものでしかなかった。
そんな俺は、兄や妹と比べられるのが嫌でその道から逃げ出した。
そして行き着いた先に待っていたのは二次元世界だった。
空手を辞め、俺はアニメやゲーム、漫画を片っ端から買い漁った。
両親も俺の落ちぶれに何も言わず、毎日毎日パソコンの画面の前に何時間も座り続けた。
そうして時間が経ち、空手家から一変してオタクになった俺は、二つ上の兄とは違う高校に進学した。
そこで俺は同じ趣味を持つ仲間に恵まれて、学校生活を楽しんでいた。
そうしてまた一年が過ぎ、高校二年の始業式の日がやってきた。
その日はいつものようにネトゲで徹夜した後だったが、オタク仲間とアヌメイトへ新作アニメのグッツを買いに行く約束をしていたため仕方がなく学校へ向かうことにした。
そんな放課後の楽しみを心に通学していると、黒い猫が前を横切った。
最初は不吉だと思った程度だったのだが、その猫が咥えているものを見て俺は猫を追って走り出した。
その猫が咥えていたもの、それはいつもより多めに金の入っている俺の財布だった。
確か中には三万円くらい入っていたと思う。
追って行くと、猫はトンネルの中へ入っていった。
俺の記憶が確かなら、あんなところにトンネルなんてなかったはずだ。
真っ暗で中もろくに見えないトンネル。
正直怖くなかったといえば嘘になる。
それでも三万円という金額は決して小さい金額ではない。
俺は意を決してトンネルの中へ走っていった。
そして気づいたらこの世界に来ていたというわけだ。
____________うん、何もわからないな。
呼ばれた理由、何が起こったのか、何もわからない。
そもそも、ここが異世界だとまだ確定したわけではない。
もしかしたらどこで〇ドアのようにトンネルをくぐったらアルプスに繋がっていた。というだけかもしれない。
そう、あの地平線の向こうから「ペ〇ター」と叫びながらアルプスの少女が駆けて来ないとも限らない。
でもどうせならイギリスに行きたかった。
イギリスといえば、アニメやラノベでは魔術の名門として描かれることが多い。
例として、D.〇.III~ダ・カ〇ポIII〜でも魔法学校がイギリスに設置されている。
アニオタとしてはぜひ行っておきたい国なのだ。
まあ、ここがどこにしても行動しなければ何も分からない。
とにかく人のいる場所に行かなければ始まらない。
そう、いうなればこれはRPGだ。
そしてここはスタート地点。
___________さあ、俺の冒険を始めようではないか!
ガリ。
気合を入れて一歩踏み出すと何かを踏んだ。
足をどけてみると、そこには小さな歯型と泥の付いた、盗られたはずの俺の財布が落ちていた。
いやぁ、すっかり忘れていたよ。
なんか状況が状況で、ここまで追ってきた理由を完全に失念していた。
俺はそれを拾い上げ、もう一度気合を入れ直す。
____________さあ、俺の冒険を始めようではないか!
俺は盛大な一歩を踏み出した。
まだ見ぬ地を目指して______________。
どうも、クロです。
この度"俺と詩織のラブコメ記録"と平行してやらせてもらうことになりました新作です。
はい、題名にあるように異世界です。
しかし私はあまりガッツリしたバトル系が得意ではなく、コメディー要素を多く含んだバトコメというジャンルで作ってみました。
どうか、"俺と詩織のラブコメ記録"同様ご愛読いただけると光栄です。