歴史
「今から、300年程前に
なるか。」
「爺ィ、何歳なんだよ」
「儂か?352歳じゃ。」
「魔族より長生きじゃねぇか。」
「100歳からこの塔におるからの。この周辺は時が凍っておるのじゃ。
呪いみたいなもんじゃな。
百年氷河を抜ければ、儂は砕け散って死ぬ。」
「また特殊なこって・・・」
「どこまで話したかの・・・。」
「300年前。」
「そうじゃそうじゃ」
いまから300年前。
魔大陸を制する15代目魔王ジャーハルトは人間が制するこのセントルイズ大陸に宣戦布告をしたんじゃ。
きっかけは些細な事じゃった。
財宝を求めた冒険家が魔大陸に乗り込み、魔族と魔物の区別も付かずに斬り殺した。
その地区を治めていた魔族は、冒険家を八つ裂きにし、セントルイズに送りかえしたのじゃ。
本来なら非礼を詫び、不可侵条約を築かねばならなかったが、そうはいかんかった。
冒険家の一味に聖都フレアルファの王族血縁者が居たからじゃ。
フレアルファの王は、都中から猛者を集め、魔大陸へと乗り出した。
しかし魔族の圧倒的な戦力を前に手も足もでなかったのじゃ。
フレアルファの王は各地司祭に助力を求める。
現・翼竜街のクエース教。イグニスの迦具土神徒。水の都アクアリスのミッドガルズ信仰使徒。西の最果て、エルフレムの精霊信仰者に至るまでじゃ。
ところでお主、魔王と勇者の関係を知っとるな?
うむ、調整者じゃ。
この世は絶妙なバランスで成り立っておる。
儂も、お主も、各地に眠る神さえ、この世を廻す歯車に過ぎん。
人が驕れば、魔王は鉄槌を与え、魔族が驕れば、勇者が諌める。
このバランスを保つには、人も魔族も、魔物も、一定数いなければならん。
しかし、力を得た人間のなんと愚かな事よ。
大量の魔術士を投与し、人間は虐殺を始めた。
これがジャーハルトの逆鱗に触れた。
勇者が神に選ばれた者であるのと同様に、魔王もまた選ばれたものなのじゃ。
その力は凄まじく、海は嵐に覆われ、世界各地で拳程の雹が降り注いだ。
竜巻は絶えることなく、山は噴火を続けた。
そして調整者である勇者が重い腰をあげたのじゃ。
剣帝、巫女、賢者を連れ・・・勿論賢者は儂のことじゃよ?・・早く話せって?ええじゃないか、儂は普段人と話さないんじゃ、気長に聞いてくれたってバチは当たらんじゃろ。
ああ、お茶を一杯・・・ううむ、美味い。
で、どこまで話したかの?
そうじゃそうじゃ、勇者一行は魔大陸に向かったんじゃ。
流石の魔族も勇者にはおいそれと手出しは出来ん。
どこまでも続く魔族の戦隊は道を譲るかの様に割れた。
もう話し合いで、どうにかできるレベルでは無かった。
死傷者数こそ人間の方が多いものの、魔族側の犠牲者はほぼ全て魔王の血縁者じゃたのだから。
ジャーハルトの兄、弟、妹、叔父、甥、姪に至るまで、その戰で命をおとした。
復讐に取り憑かれた魔王は、滅ぼすか、自らが滅ぶかでしか、静止がつかなくなるほど壊れていたのじゃ。
竜の血を引く魔王は、7日7晩死闘を繰り広げ、遂に力尽きる。
そして、人間側の勝利でこの戦争は幕を閉じる。
え?ウロボロスがでてこない?
うむ。魔族が魂や負の感情を糧とする話はしたな?
普通、魔族は魔族の負のエネルギーを食らったりせん。
濃度が高すぎて、体に毒になるからと儂は聞いておる。
じゃがこの負のエネルギーを全て喰らい尽くした者が居たのじゃ。
禍根を残さぬ為、勇者は魔王の血統を根絶やしにし、新たな魔王が生まれるまで待つと言った。
だが儂は・・・・ジャーハルトの子供達をどうしても殺す事が出来なかったのじゃ。
そして、息子と娘をコッソリと逃がしてしまった。
生きてさえいれば、良い事があると。
皆が納得する結末を必ず導くと。
じゃがそれは間違いじゃった。
賢者などと呼ばれ、魔王を倒し、思い上がっていたのかも知れん。
そう、その息子が全ての負のエネルギーを喰らい尽くし、破壊神となったのじゃ。
何千と言う濃度の濃い魂と、父である魔王の狂気を喰らい、滅ぼすか、滅ぼされるかの存在にな。
身内を喰らい、永遠に破壊をくり返す。
尾を食らう蛇とは、なんとも因果な名前よ。
じゃが世界はウロボロスを魔王として選ばなかった。
正統な魔王後継者は、娘の子孫から誕生する。
そしてお主の代になる。
第17代目魔王・ドレット・レッド・ブラッド。
いい加減、運命を受け入れろ。
昔も言った筈じゃ。
どれだけ逃げても、過去は必ず追いかけてくる、と。




