参拾玖
“俺はお前に惚れてる”
突然だったことや、渋ってた割に案外サラッと言ってきたことで、私の頭の中はハテナ記号で埋まる。
「もう少し雰囲気とか作れないんですか?」
何も反応しない私を見た柳一さんが、そう言って注意する声が聞こえた。
「仕方ねえだろ。苦手なんだよ、回りくどいのは」
…それにしても、本当に雰囲気とか皆無だったね。
私もこんな告白初めての経験だよ、絶対忘れない。ていうか、これで付き合うとかになったら、一生根に持ってやる。
「そうですか。それはありがとうございます」
停止していた思考を、やっと稼働させた私がお礼の言葉を返すと、何故か二人してホッとしたような顔付きになる。
何を安心してんですか。まだ問題が残ってるでしょうが。
「そんなことより、今の状況を何とかしないと。このホテルを抜けますか?抜けた後、どこに逃げ隠れするんですか?」
話題を戻しただけなのに、珋二さんは目を見開いてこちらを見てくる。
今大事なのは、告白じゃないでしょ。ていうか、無かったことにしたい。
「そうですね。僕らは家に帰れば何とかなります。問題は貴方の顔を知られているかどうか。知られていたら、どうやって身元身辺をバレずに移動するか、ですね」
流石、柳一さんは大人だった。今解決すべき問題を良く分かっていらっしゃる。
「…はあ。…そうだな。真正面から行って、お前の顔を知られるのは不味い。とりあえず、ここを出る方法を考えねえとな」
同じく思考停止から漸く立ち直った珋二さんは、会話を仕切り直してきた。
何か変装とかした方がいいのかな。
「宵街の格好するとか?」
「「は?」」
私が出した答えに、思いっきり失礼な反応をする。
「宵街の格好なら、単に金銭的な仲だって思って貰えるんじゃない?」
これは、中々に良案のように思う。私もやれば出来るんだね。
「はあ…。やっぱ分かってないですね」
それに直ぐ反応した柳一さんが、少し自信のついた私を容赦なく叩き落としてきた。
「さっきも言った様に、うちの梓界は、生涯女一人って決まってるんですよ。女を買うなら、わざわざ専門店に出向かわないといけない。つまり今、この高級ホテルに女を連れ込んでるって事がバレたら、一発でアウトなんですよ」
さっきから言ってること、良く分からん。
「だから、それで、何でダメなの?私がここを出られれば、それで万事解決でしょ?」
「もし顔を知られたら、お前あいつらや、梓界の地位を狙う奴らから追っかけ回されるぞ」
…まじですか。すごい大事じゃん。
「やだよ。私は普通に暮らしたい」
まさか、そんな凄い面倒な事態になってるなんて、この業界に詳しくない私には分かる訳がなかった。
試しに読んで下さった方も、ブクマして下さってる方も、ツイートから飛んで来て下さった方も、読了ありがとうございます。
この辺で漸く主人公ちゃんは、物事の大変さに気付き…そうで気付けません。アホの子です。さすが我が娘←
それは置いておいて、これでもしお付き合いが始まったら…と考えると、この事をネタに使われそうな珋二さんの未来が心配です。
それでは、次話は明日の朝9時に更新ですので、宜しくお願いしますm(_ _)m




