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ヤーさんのお姫様  作者: 不知火 初子
一章 始まり
39/643

参拾玖


“俺はお前に惚れてる”


突然だったことや、渋ってた割に案外サラッと言ってきたことで、私の頭の中はハテナ記号で埋まる。


「もう少し雰囲気とか作れないんですか?」


何も反応しない私を見た柳一さんが、そう言って注意する声が聞こえた。


「仕方ねえだろ。苦手なんだよ、回りくどいのは」


…それにしても、本当に雰囲気とか皆無だったね。

私もこんな告白初めての経験だよ、絶対忘れない。ていうか、これで付き合うとかになったら、一生根に持ってやる。


「そうですか。それはありがとうございます」


停止していた思考を、やっと稼働させた私がお礼の言葉を返すと、何故か二人してホッとしたような顔付きになる。


何を安心してんですか。まだ問題が残ってるでしょうが。


「そんなことより、今の状況を何とかしないと。このホテルを抜けますか?抜けた後、どこに逃げ隠れするんですか?」


話題を戻しただけなのに、珋二さんは目を見開いてこちらを見てくる。


今大事なのは、告白じゃないでしょ。ていうか、無かったことにしたい。


「そうですね。僕らは家に帰れば何とかなります。問題は貴方の顔を知られているかどうか。知られていたら、どうやって身元身辺をバレずに移動するか、ですね」


流石、柳一さんは大人だった。今解決すべき問題を良く分かっていらっしゃる。


「…はあ。…そうだな。真正面から行って、お前の顔を知られるのは不味い。とりあえず、ここを出る方法を考えねえとな」


同じく思考停止から漸く立ち直った珋二さんは、会話を仕切り直してきた。


何か変装とかした方がいいのかな。


「宵街の格好するとか?」


「「は?」」


私が出した答えに、思いっきり失礼な反応をする。


「宵街の格好なら、単に金銭的な仲だって思って貰えるんじゃない?」


これは、中々に良案のように思う。私もやれば出来るんだね。


「はあ…。やっぱ分かってないですね」


それに直ぐ反応した柳一さんが、少し自信のついた私を容赦なく叩き落としてきた。


「さっきも言った様に、うちの梓界は、生涯女一人って決まってるんですよ。女を買うなら、わざわざ専門店に出向かわないといけない。つまり今、この高級ホテルに女を連れ込んでるって事がバレたら、一発でアウトなんですよ」


さっきから言ってること、良く分からん。


「だから、それで、何でダメなの?私がここを出られれば、それで万事解決でしょ?」


「もし顔を知られたら、お前あいつらや、梓界の地位を狙う奴らから追っかけ回されるぞ」


…まじですか。すごい大事(おおごと)じゃん。


「やだよ。私は普通に暮らしたい」


まさか、そんな凄い面倒な事態になってるなんて、この業界に詳しくない私には分かる訳がなかった。




試しに読んで下さった方も、ブクマして下さってる方も、ツイートから飛んで来て下さった方も、読了ありがとうございます。


この辺で漸く主人公ちゃんは、物事の大変さに気付き…そうで気付けません。アホの子です。さすが我が娘←


それは置いておいて、これでもしお付き合いが始まったら…と考えると、この事をネタに使われそうな珋二さんの未来が心配です。


それでは、次話は明日の朝9時に更新ですので、宜しくお願いしますm(_ _)m


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