弐拾壱
私は、短気だった。一言で言えばそれだけのことなのだけど、決して誰かれ構わずという訳ではない。自分の中でダメだと思うことはダメで、それ以外には少しだけ寛容だったりする。
けれど、今回のは確実にダメな方だ。
「ちょっとアンタね!いい加減にしなよ!」
私の怒声に反応したのは、何も目の前の2人だけでは無い。表情までは分からないけど、後ろの2人が振り返る気配はあった。
久しぶりに怒ってる状態で大声を出したから、思ったよりドスが効いた声になってるかも知れない。と、少しだけ反省しつつも、私の張り上げた声でやっと“ゆうじ”くんを放した男にズンズンと近付いていく。
手を伸ばせば届く距離まで近付いても、目は私から離さないが引く素振りは見せていない。
なので、思いっ切り私の思いをぶつける。
・・・バシィン!!
いくら人の少ない拓けた場所だけども、流石に響き渡り過ぎなくらいに男の頬は良い音が鳴った。
「あのね!今日の私は色々あって物凄く不機嫌なの!良い加減にしてよ!」
言ってやった。普通に考えてただの八つ当たりにしか聞こえないし、男にとっては何が何やらではあるだろう。けれど、本当に小さな事の抑制の積み重ねを、自分の中で少しずつ繰り返していたので容量が足りなくなってしまっていた。
私としては無事に胸の痞えが取れ、スッキリと心晴れやかな気分になれたので、もう男に何も用はないのだけど、
「っち!」
すぐ目の前から、大きめの舌打ちが聞こえた。男が少し身動ぎしたので、やり返される!と思い咄嗟に目を閉じたのだが、身構えていた痛みが一向に来ないので目を開け男を視界に入れる。
「っち!あーシラけた。また今度な、悠二?」
男はどこか気まずい沈黙をし、何を思ったのか何もせずに去ろうとする。最後にもう一度、私に向かって舌打ちするのを忘れず。
「ゔっ、姫ちゃーんっ、ありがどっ。珋二さん、柳一さんもっ、ゔぐっ、ありがどーっ」
男が去って直ぐ、顔から凡ゆる汚い物を垂れ流して私に抱き着く“ゆうじ”くんの坊主頭が、何故だか弟みたいに可愛く思えて撫で回した。
「うわっ。本当にジョリジョリするー」
「それは、今は良いじゃないっずかーっ」
少し泣き止みつつも、頭を撫でる私の手を振り払おうとはせず、されるがままになって今度は嬉しそうにしていて。って何だこのユルユルに可愛いペットは。
「行くぞ」
自分の窮地に駆け込んでくれたことで警戒が解け、心を開いてくれた様子の和やかな雰囲気に水を注す、彼の上の立場に居る人の重たい声。
「ほら、悠二。いつまでも泣いてないで。言うことがあるだろ」
「あ、珋二さん、オレっ、」
“りゅうじ”さんに頭を下げそうな“ゆうじ”くんの様子に、ちょっと待て、と私は一言物申したい。
「ていうか、放って行こうとしたアンタが、何でそんな偉そうに言えるのよ!そこのアンタも!」
あの時は確かに来てくれて安心はしたけど、その後直ぐに置いて行こうとして踵を返したことは、私の中でまだ消化出来ていない。
「いや、アレはっ」
「“ゆうじ”くんは黙ってて!」
何か言おうとした彼を黙らせて、私は2人の、特に“りゅうじ”さんの目を見つめ反応を待った。
「納得してないって顔だな。まあ、そりゃそうか」
私が納得してない理由に思い当たるのか、“りゅうじ”さんは一人納得のいった顔をしている。
「姫ちゃん、ちょっと待ってっ!一旦落ち着いて!これには事情がっ」
「ええい!うるさい!これが落ち着いてられるかっ、・・・・って、ん?」
何だろうか。あの場面で“ゆうじ”くんを置いて行こうとする事情とは。話聞いてやろうじゃないのよ。
“ゆうじ”くんが必死に止めようとしていて、私に抱き着いていた腕も知らぬ間に、私が前に出ようとするのを制するような向きに変わっている。
もう、こうなったら自棄気味で自分を落ち着かせて、ここじゃ話しにくい、と言うので仕方なく車まで移動した。
やって参りました、後書きのお時間です。
今日も今日とて変わらず話題性に乏しい私ですが、絶対に外せない話題がありますね。
みなさん、読了ありがとうございます。
試しに読んでやるぜ!と見に来て下さった方も、ブクマして頂いてる方も、ツイートから飛んできて下さった方も、本当に本当にありがとうございます。
いつもニヤつきながらpv数などを拝んでおります。
因みに感想等も、暇だから書いてやるぜ!だけでも書いて頂ければ嬉しいです。
それでは、この21話から先もどんどん続けて行きますので、宜しくお願い致します。




