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ヤーさんのお姫様  作者: 不知火 初子
一章 始まり
11/643

拾壱




「済んだか?」


「・・・はい」



結局良い案は出なかったけど、そもそも私、無関係なんだし他人だし、連れ回される覚えもないし、帰っても良いんじゃないか、と思えてきた。



トイレをお借りしたので、気持ちばかりのお礼と思い、コンビニで飲み物を買っていった。のだが、そこで問題は起きた。



「ったく。そんな怒んなよ。俺が金出したくらいで」


「嫌なの!人に出させるのが!私の買い物なのに!」


「俺だって女に財布出されるの、嫌なんだ!黙って奢られとけ!」


「関係ない他人に、そんなことさせられないよ!」



そういう関係じゃないし。一昨日会ったばっかの、相手のこと何も知らない関係で。お金なんて出させられないよ。



「俺が隣にいる以上、女に金は不要だろうが!」


「他の女の人はそうかもね!」


「・・・・」


「でも、私は違う。私は、」


「そうやって、」


「・・・?」


「今まで付き合った男に貢いでたのか?そうやって、尽くしてる自分を想像して、自己満足に浸ってたのか?お前、相当可哀想な奴だな」


パシィン!!ビンタした。凄く良い音が出た。叩いた手はジクジクと痛い。彼の方も少し痛そうで、頬が真っ赤になってる。



何こいつ。人のこと好き勝手言って。


「私はそれでも幸せだったのっ!!自己満足でも良いよ!でも、私は自分を可哀想だなんて思ってない!!」



ああ、やっぱりダメだった。私の男運の悪さって、本当に懲りるってことを知らないよね。


なによ。ちょっと良い人だなって思ってたのに。




店を出てすぐのところで、そんな状況が起きていたので、勿論部下2人の目には入る訳で。



「おい、女」

「お前、珋二さんに」



目の前で凄んでくる男2人の威圧が本物すぎて、一般的な生活を歩んできた私は腰を抜かしそうになった。


いや、でも悪いのは向こうだし!



「なにか?」


あー、違う!何で強気に出ちゃうのよ私!せめて穏便に話繋げようよ!



「柳一、悠二。やめろ」


目の前の業火の如く憤ってる2人を、急速に冷やす猛吹雪の様な気配が、背後から迫ってきている。



「ひっ・・・」


私は無意識に、小さな悲鳴を上げていた。


「おい、こっち向け」


何言ってるんですか、あんた。正気ですか?恐くて振り向ける訳ないじゃないですか。


私はただ固まって、気配が動くのを待った。


「じゃあ、そのままでいいから、行くぞ」



何か咎められる訳でも、やり返される訳でもなく、自然な感じで腰に手を回され、そのまま後ろから押し歩かされる。



「え?兄貴?」


部下2人も彼の行動に困惑して、唖然としている。



「ほら、さっさと車に乗れ。まだ行くところがある」



当の兄貴本人に促されて、ハッと気付き、慌てて前の席にそれぞれ着いていく。



私も後ろから促されたので、後部座席のドアを開けようとしたら、背中から伸びてきた逞しい腕で遮られ、距離の近くなった耳元で、


「言い過ぎた、悪い」


と小声で言われた。慌てて振り返ると、鼻が当たって擦れそうなくらい、彼の整った顔が近くにあって、不覚にもドキドキと心が鳴った。



やばい。しかも、息が頬にかかってたよ、さっき。






赤くなってる気がする顔を見られない為に、さっさと車内に入り込む。それから全身に広がった甘い熱が冷えるまで、ずっと窓の外を見ていた。













2人の仲が一向に進展する気配がありませんが、大丈夫です。ちゃんと2人の心の距離は近くなりつつあります。主に彼の方から積極的に、ですが。


どうか心優しい画面の前のあなた、辛抱強く進展を待機して貰えると有り難いです。お願いいたします。


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