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ヤーさんのお姫様  作者: 不知火 初子
一章 始まり
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「で、俺に話があるんだろ?」




気の済むまで男2人から羨望を向けられて、ご機嫌の程は絶好調らしい。



調子に乗ってる顔なのに、何でこんなに様になるんだろう。逆に腹が立つ。





「はあ。……あったけど、何かどうでも良くなった」


「俺のこと、聞きたかったんじゃないのか?」




そうですか。何でもお見通しですか。




「じゃあ聞くけれど、りゅうじさんってソッチなの?」




「「「ソッチ?」」」




3人の声が揃った。野太い声のハモりは、そこそこ凄みを感じる。





「だから、女じゃなくて、男が」


「は?」





りゅうじさんに凄い睨まれた。


その威嚇はどっちの意味だろうか?


図星からの照れなのか、何言ってんのお前みたいな方なのか。





「んな訳ねえだろうが。俺は女しか無理」


「おれも兄貴には、尊敬と憧れしか抱いてないですね」


「オレもっスよ。好きだけど、そっちじゃないっス」




3人とも否定を口にする。そりゃそうだよね! 何かごめんね!


前2人の解答は求めてなかったけれどね!




「てか、お前、そんなこと聞きたかったのか?」




いえ、違います。話を逸らしただけです。




「えーと、何ていうか、その……」





わたしがどう言ったものか戸惑っていると、耳の端で微かに吐息を感じた。



それもりゅうじさんがいる隣からで、距離の近さを感じ驚いて固まる。




「我慢すんなよ」




体を強張らせていたら囁かれました。しかも凄い良い声で、良い低さで。



ヒィ……という小さな悲鳴と共にわたし、顔、熱い……!




「な、ななな、何!? 何ごと!」




動揺して、思わずドアの側まで飛び退くように下がる。


なのに彼は全く表情も変えず、こちらを黙って見ている。


その余裕のある素振りがわたしの負けず嫌いに火を灯し、割とすんなり冷静に戻ることが出来た。




「俺に話があるんだろ?」




まだ余裕を見せる彼がまた切り出したので、自分も元の場所に座り直して顔を正面から見据える。



驚いたように瞳が動いた気がするけど、一瞬だったし気のせいだろうか。




「話っていうのは、その、えっと、……お手洗い行っても良いですか?」




互いの顔をちらと見合わせている3人ともが、何とも言えない表情をした。




「ああ、いいが」




そして、コンビニに寄って貰った。







***






トイレの中で考える。



別にトイレ自体に用があったわけじゃあない。


ただの時間稼ぎだ。




推測は出来るし確信に近いけど、そこを突つけば蛇が出て来そうな気がする。


踏み込んではいけない藪に、迷い込んだみたいに。




「はあー。どうしよう」




とりあえず祈るような気持ちで、鏡の前で手を合わせてみた。






試しに読んでくださった方も、ブクマしてくださってる方も、ツイートから飛んできてくださった方も、読了ありがとうございます。

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